月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

2020年夏旅(5) 朝食後には山荘無量塔のロールケーキを食べに

2020-12-20 09:54:00 | どこかへ行きたい(日本)


 亀の井別荘のもうひとつの楽しみは、朝食である。

ひと風呂あびてから、1階レストラン「螢火園」へ。
















 昨日と同じ席を用意してくれていた。ガラス越しにみた朝の庭も清々しい。

 Nは洋食。わたしは和食をオーダー。おいしかったのは、たっぷり盛られた野菜サラダ。みずみずしい葉の厚み、苦み。ブロッコリーもおくらも、つるむささきのおひたしも、蒸し加減絶妙で、もりもり食べられる。まぐろのお刺身、お漬物なとなど昨日に続いてお腹いっぱい頂いた。Nのオムレツもふわふわで丁寧に焼き上げられており、よかった。

 

 昨日の談話室へ立ち寄って、本のチェック(昨日読んだ本をメモにとる)をし、おみやげものを探しに「鍵屋」に立ち寄る。宿特製の肉のしぐれ煮、柚子胡椒などを買う。

 

 昼1時のバスの時間まで、3時間ある。ということで、山側の由布院温泉山荘「無量塔(むらた)のTan,s Bar へ。タクシーを飛ばす。

 

 林道の途中にある、古民家を再生移築した山荘だ。ここは、建築のもつチカラに圧倒された。












静寧で、強い誇りを秘めた山荘。「再創造」というテーマで、人にエネルギーをあたえる山荘の空間を色濃く醸し出す。

 

 Tan,s Barは、梁の太いロビーの2階をあがってすぐ。

 暖炉と、蓄音機!窓外の緑の庭。重厚感のある調度品と家具。しつらいに気品があり、往年の歌い手でもくつろいでいそうな雰囲気。圧倒的な迫力とくつろぎ感。野生味。けれど都会的でもあり、東北か関東にある別荘というイメージをもった。

 

 ここ自慢のロールケーキ(しっとりとして食べ応えのある秀逸の生クリーム)とお茶でゆっくりと最後の由布院の空気を楽しんだ。無量塔のセレクトショップで、記念にコーヒー茶碗を1客買う。

 

 帰りのタクシーで運転手が私たちに向かって話す。

「7月の豪雨では大被害でした。いまも大分空港からのバスは道が閉鎖されているので不通です。おまけに福岡からの観光鉄道も不通なの。観光客だけじゃないよ。中学や高校の子どもらは、タクシーで学校を行き帰りするしかないの。うちらの商売は忙しくていいんだけど。大分としちゃあ、大変なのね」

  地方に旅するって、良いなぁ。海外では感じられない人情みを覚える会話の中に。

 夏旅は、一年中でいちばんダイナミック。太陽が強く明るく、清澄に満ちている。陰も濃い。

 夏の思い出が、何年も忘れられないという理由が少しわかった気がした。