少し前のことだが、10年来の友人であるイラストレーターのHさんと京都でごはんを食べに行った。
その彼女こと、Hさんとは随分前のことだが、あまから手帖でも一緒に仕事をしたことがあって、編集の学校時代にも、ごく自然と言葉を綴るだけで独特のユーモラスに満ちた原稿をかけるすごい人だ。また、彼女の描くイラストは空気をすくいとって描いたようにはかなくて、きれいで、それでいながら芯のようなもの(強い魂)をちゃんと込められているところが好きだ。
あまり意図して完成度を求めないところ、もうここらで止めときましょうか、と力をぬいたペンの運び方の中に、不思議なアンバランスさもあって、そんなところもまた彼女らしいニュアンスの絵となるのだった。
わたしのブログの表紙にも彼女のイラスト画をお借りしている。
待ち合わせは、京都のホテルオークラのロビーで。
そこから「パスタコレクション道月」でランチ。
ここは築100年の町家を改修した佇まいで雰囲気はぼちぼちいいし、
寺町の骨董めぐりをする途中に立ち寄るには、いい位置にある。
この日はシャンパンで乾杯して、一番簡単なランチを食べた。
水菜ほか季節の野菜たっぷりの前菜。
歯ざわりがしこしこしていて面白い、肉とトマトのショートパスタ(生パスタ)。
アッサリ塩味の魚介パスタ。そしてドルチェとハーブティー。
あわせて1500円とリーズナブルである。
まだ発展途上という感がしないでもないが、
気軽に立ち寄れる店である。
彼女とは久しぶりにお会いしたので、いろいろな話をした。
Hさんは私のことを
「自分らしく肯定的なことや明るいものに向かっている人なのだとずっと思っていた」そうだ。
それは衝撃だった。出来ればそうありたいとは思っているが、
ひとには誰だって光と影の部分があるだろう。自己嫌悪があったり、自問自答するがゆえに前進できないところ、はがゆい思いも多いのである。
取り巻く環境の悩みもある。
でも、Hさんからみて私がそんな風に映っていてよかったとなんだかうれしかった。
それからせっかくの京都・寺町なので、 セレクトショップ&クラフトギャラリー「sophora」、
その目前にあるアンティークの器やランプがすばらしい「WRIGHT商會(二条店)」、
古伊万里や豆皿を多く扱う「大吉」や、
「京都アンティークセンター」などなど、寺町を訪れると必ずといって立ち寄る、
古美術・骨董店、ギャラリーのコースを歩く。
一人で散策するのと違って、一緒に眺めたり感想を話しあったりしながらの散策は愉しかった。
Hさんは絵を描く人なので、そんな人にはどのように見えるのだろう、というのも興味深かった。
この日は、「sophora」で、
長年のファンであるレギーナアルテールさんの茶器を購入し(改めて書きます)、
「グランビエ」 でも小さな器を少しだけ買った。
「グランビエ」は昔、岡崎にあった。そして、5年ほど前には足繁く通った「丁字屋」を開店されていた系列の店である。
丁字屋は、築140年の町家のなかに古今東西の工芸・雑貨のアンティーク、ランプ、器、照明など選び抜かれたものだけがさりげなく置かれ、
小さな虫籠窓、赤と白の大きな椿の木がある坪庭があって、
広縁や、庭に面した1階・2階の座敷に並べられた、ため息をつくほどの
、確かな器や雑貨などがレイアウトされたとても素敵な店だった。
確か、平松洋子さんがエッセイのなかでよく登場してらした。
(丁字屋は今は閉店し、その場所は何も利用されていない。残念)
「グランビエ デ アリィーバ」(寺町通り)も、丁字屋と同じように1階・2階に分かれていて、中国やベトナム、ラオス、トルコなどのアンティーク雑貨、
布モノ、洋服、生活道具などをとても買い易い値段で揃えている。
そして丁字屋よりもだいぶカジュアルで、若い人でも入りやすい店づくりになっている。
この日もレジ付近の天井からつりさげられた彩どりのランプが印象的だった。
ほしいなあ、寝室にもあいそう。仕事部屋でもよいかなあ。
疲れたので近くの一保堂茶舗のなかにある嘉木で「嘉木」という煎茶と和菓子をいただく。
正しい煎れ方をレクチャーしてくださり、
ゆっくりと低温にさましてから器に注いで四煎ほど飲む。
一保堂の煎茶は少し値段のはるものはおいしい。
この日の「嘉木」は、まず塩味がさきにたって次に甘味、苦み、フレッシュ感などが複雑に味わえるいいお茶だった。
友達が話してくれたエピソードや私になげかけてくれた言葉などを思い起こしながら話していると、
「あなたの周りはいい言葉をつたえてくれる人がいてますね」。そして近況の相談事、これからどうして生き抜いたらいいのかしらなどと話をしていると、
「まず環境から。自分の環境を大切に整えてていかれたら、乗り切れるものかもしれませんよ」といってくれた。
大学時代にインド哲学を学んだという彼女の思考は深くて、あとで思い直すほどになるほどなあ、と推敲できるいいメッセージを沢山もらった。
いつも会えないけれどちょっとだけ懐かしい、そんな春の再会となった。
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