Frany's Yard

Frany's Yardはトリュフのスタッフたちが、アンティークの話、日常の中の嬉しい、可愛い、心地いいことを綴ったミニコラムです。

旅行記 伏見 その2

2007-09-19 00:22:15 | 旅行記
9月になったというのに、暑い日の続く日々、まだまだ夏は終わってはいないようです。
とは言え、魚屋には秋刀魚が並び、菓子屋には栗菓子が並び、紅茶屋にはオータムナル・・・はまだですね。セカンドフラッシュが並び、ホームセンターにはハロウィングッズが並ぶ様を見ていると、秋が来たんだなぁと、色々な食べ物が頭を過ります。
しかしいくらなんでもハロウィンは早すぎるだろう>近所のホームセンター
近所の焼肉屋は「敬老の日はおじいちゃん、おばあちゃんと天○へ」なんて垂れ幕下げてますが、お年寄りの血圧上げる気か。
そんな秋の気配を感じる今日この頃、如何お過ごしでしょうか。
sabaeです。写真は稲荷山の「仁志むら亭」からの眺めで、今回の話には関係ありません。
前後編の後編が遅くなって申し訳ありません。書き出したのは9月の初めごろだったのでこのような書き出しになっております。そんなわけで相変わらずタイミングを逸したまま後編行ってみましょう。

京阪電車の伏見桃山駅に降り立つ。
人が多い。多すぎ。さすが京都最大人口の区。
同じ伏見区内とは言え、稲荷とはかなり違った感じです。
伏見城の城下町として発展し、伏見城の戦い、寺田屋事件、鳥羽伏見の戦い等歴史上重要な事件のあった土地ですが、あまり重みは感じない。伏見城が無くなってるんだから当然かもですが。
町的には坂本竜馬ゆかりの地、という売りのようです。そりゃそうでしょう。竜馬通りなる商店街があったり。
良くも悪くも現在進行形の町というか、一部を除いてさほど計画的に保存も開発もしてなさそうな、町名からかろうじて城下町の歴史が垣間見れる感じです(職業名のついた町名が多い、「○○屋町」のような)。

しかし元々歴史遺産や史跡が目的ではありません。
伏見といえば酒所。
酒造メーカーも多く、「黄桜」、「松竹梅」といった有閑倶楽部のキャラクター名に使われるような全国銘柄もあります。「月桂冠」とかもね。
それ以外にも「英勲」、「玉乃光」、「月の桂」等名の通った銘柄を含む大小20以上の酒蔵があり、それらがすべて飲み放題。なんてことはありませんが。
一応「月桂冠 大蔵記念館」では見学に利き酒が含まれてたり、「キザクラ カッパカントリー」では地ビールや樽出しの酒が飲めます。
もちろんそれらを目当てに行ったのですが、先ずは「御香宮神社」で湧いている名水「御香水」を味わいに。おいしい水が無けりゃ始まりませんから。

重要文化財の門をくぐって参拝。水もらってく気だからお賽銭も入れましたよ。
「御香水」は「え、これ?」と言いたくなる位目立たない所で湧いていた。一度真横を素通りしたし。それでも容器持参で汲みに来る人も多いようで、順番を待って飲んでみた。
やわらかい。そして甘い。
みなが汲みに来るのも納得のいく味で、私も持参したアラジンの魔法の瓶(1L)でしっかり持ち帰りました。この後の道中結構な荷物になるのも構わず。

なんかでかい商店街(大手筋商店街)を外れて、古い酒蔵や新しい店を見つつ、月桂冠へ。さすがにこの辺りは古い酒蔵を利用した、見応えのある店舗が多く、一本裏道に入れば、いい風情の古い民家などもあり、散策を楽しめます。
道中の焼き鳥屋の駐車場に湧き水(組に来てる人々も)を見たが、月桂冠の施設の中にも水が湧いていた。後でスーパーマーケットの前でも湧いているのを見たのですが、あれか、伏見では所かまわず水が沸いてるのか。
酒造りの資料など、貴重な資料を素通りして、出口でようやく利き酒。
味の違いは分かったが、味自体は普通な感じだった。
いまいち飲み足りない思いで「キザクラカッパカントリー」へ。
ここのレストランがなかなか良いと聞いてきたのですが、噂に違わずなかなかでした。
蛸の山葵漬けが旨かった。
地ビールも樽出しの酒も美味しかったのですが、酒好きとしてはイマイチ物足りないというのも正直なところです。
美味しいけどコツンとと来る物は無かったというか、求めているのは完成度では無いというか、満足のあり方は多様でそうそう応えてくれる相手なんかいやしないのは当たり前なのですが。
しかし、そんな最近甘口の酒が多いとお嘆きの貴兄に、お勧めの酒屋がありました。
酒場ではありません。酒屋です。
また大手筋商店街に戻り目指した酒屋、「油長」。伏見の全ての酒蔵の酒を扱っていて、さらに店の中で利き酒ができる。アテも結構あるという、居酒屋いかなくていいのでは、という店。
そこでまさに駆けつけ三杯、てな感じで利き酒です。何を飲んだかは忘れましたが。さらにもう一度利き酒セットを頼んで計6種試した中では「蒼空」という銘柄が気に入った。一番美味しい、ではなく気に入ったということですが、嗜好品は気に入るかどうかが大切ですから。
既に夕方、辺りも暗くなってきた頃店を出て、一日中歩き回って酒飲んで、さすがに汗がべたついて気持ち悪い。
最後に銭湯によってから帰ることに。

勿論事前に調べていったんですが、「鶴の湯」という銭湯は伏見の地下水で沸かしているらしく、水のお持ち帰りもできるという。
店の前にはガーデンテーブルが置かれ、湯上りに夕涼みも気持ちよさそうです。でもここ公道では?
お風呂は2階になっていて、1階にジェットバスや電気風呂など定番な仕掛け風呂があります。体洗って座り風呂で半身浴。日頃こき使っている腰を労わりましょう。ゆっくりと湯船に座っていると、これまでにお客様の下へと嫁いで行った家具たちがまぶたに浮かびます。極端に重かった物は特に。
普段風呂の短い私は既にのぼせ気味ですが、「鶴の湯」に来たらぜひ2階へ行くべきです。アロマな露天風呂(天窓が開いてるだけですが)にはラベンダー(日替わりらしい)の香りが漂い、サウナは竹炭を熾しています。そして水風呂が最高。半身浴とサウナで滝のような汗をかいて飛び込んだ。すごく冷たく芯まで冷やしてくれますが、肌に刺さるような冷たさではありません。すごくまろやかで、体温が引いても浸かっていたくなります。滝状に水が浴槽に落ちてくるのですが、滝に打たれて修行気分も味わえます。こんな気持ち良い水風呂は初めてでした。伏見の地下水ならでは、ここでしか味わえない水風呂です。癖になりそう。

湯上りにはフルーツ牛乳よりビールが私の定番なのですが、「鶴の湯」は妙に飲食物が多いのも楽しいです。ビールは生ビール、自家製おでんやソフトクリームなどもあり、屋台のような気分も楽しめる愉快なお風呂屋さんでした。また来よう。

そんなこんなでとっぷり日が暮れてから家路に。伏見を満喫した半日でした。

sabae



旅行記 伏見 その1

2007-08-30 19:01:20 | 旅行記
残暑お見舞い申し上げます。
気が付けば既に八月も終盤、またしても祇園祭やら大文字やらの話題をスルーしてしまった。
盆と正月ぐらいにしかブログを更新しないsabaeです。
ご無沙汰しております。申し訳ありません。
お盆も逃してしまいましたが。

去年の盆休みには、白川郷に旅行をしたわけですが(読んで頂きましたか?)、今年の盆休みはあまりの暑さに家でグダグダしているだけで、あっという間に時間が経ってしまったような感じです。
とは言えせっかくの夏に、何処にも行かないというのも勿体無い。ちょっと思いつきで半日旅行に行って来ました。

伏見稲荷まで。

家から20~30分、四条界隈から10~15分ですよ。職場よりよっぽど近い(交通機関的に)所へ行くことを旅行と呼んでいいものかどうか。
一応観光地として有名だけど、「お稲荷さん(稲荷大社)」位しか行くとこないんですよ。半日旅行にはうってつけ。
母方の祖父母が昔この辺りに住んでいたので、伏見稲荷にはちょっと思い入れがあります。子供の頃はよく遊びに来たものです。
祖父母はもうとっくに亡くなっていますし、お盆だし、ちょっとした供養気分で行って来ました。お墓には行きませんでしたが。

京阪伏見稲荷駅の妙に派手な駅舎を出ると、そこは参道(みたいなもの)。坂を上ると「お稲荷さん」です。
微かに記憶に残る景色を確認しながら、坂を上る。目印はダルマをいっぱい並べてる(売り物)店。屋号は知らないが、子供の頃から「ダルマ屋」と呼んでいた。
そこの角を曲がって、ちょっと歩いたところに祖父母の住んでいた家があったはず。
坂の上の方に「ダルマ屋」はあったけど、ダルマの数がすごく少なくなっていた。昔は確か、ひな壇に大小様々なダルマが大量に並んでいたのに。
ついでだから祖父母の家の跡を見に行った。当然家はとっくに無く、新しげな家が立ち並んでいたのですが、向かいの大きなお宅がそのままだったのは嬉しかった。
ちょっと寄り道を楽しみつつ、「お稲荷さん」へ。
正月にテレビでよく見る本殿で、数十年分のお賽銭をまとめて(5円×20年=100円)お参り。
初詣ならここで帰る(ていうか動けない)所ですが、せっかくなので千本鳥居を上ってみる。
子供の頃から何度も見てるが、鳥居がずらずら並んでいるのは、改めて見ても奇妙な光景だ。京都の寺社仏閣の中でも有数の奇妙ゾーンだと思う。
多分ここでしか観られない光景だとは思いますが、鳥居の朱色が周りの山の緑に溶け込むと言うか、滲み出るというか、木漏れ日と相まって幻想的な色彩を見せてくれます。
とか思ってたら千本鳥居終了です。
奥の院をお参りしたが、まだ時間も早い。勢いが付いたので稲荷山を登る事に。登った事のある方ならご存知の通り、こっからが本番です。
何しろ稲荷山には一万本からの鳥居が建ってますから。

もうね、山頂へと向かう山道に鳥居がずっと並んでいるんですよ。ここまでやることは無いんじゃないかと。
途中に幾つも謎の社があったりするし、祭神が多すぎて何の神様を奉っているかも分からなくなります。
途中道を逸れたら、山道で迷うこともできた。
ちゃんと道はあるので迷ったとは言えませんが、こんな所があったのかという感じ。
明らかに稲荷大社とは関係なさそうな参拝所を(幾つか)発見。
弘法大師と書いてあるし不動明王いるし、なんでしょうか? 密教?
こんなところで遭難しても仕方が無いので、本来のコースに戻り、三つ辻、四つ辻と山道を登りました。
時間は昼過ぎという所。さすがに朝から山道を徘徊しておなかも空いたし、何より暑い。
そんな参拝客を待ち受ける罠のように、四つ辻辺りには蕎麦やうどんの軽食と、喫茶なんかができる茶店が幾つかあります。
店構えも稲荷山の雰囲気に似つかわしい、古色蒼然とでも言った感じ。
どうせなら一番高いところにある店の方が景色がいいだろうと、「仁志むら亭」へ。
ざるソバとビールを頼んだが、一番のご馳走は景色でしょう。
京都を一望にできる。
多分できていたと思われます。広すぎて何処が何処やら。
たっぷり汗をかいた後、これだけ高い場所で飲むビールはやはりおいしい。エビスだったし。
あ、お蕎麦?これ以上注文つけてはいけませんよ。景色をスパイスにおいしく頂きました。

さて、もう帰りたいところですが、山頂まではもう少し。せっかくなので、いっときましょう。
一の峰~二の峰~三の峰と、ぐるりと回って四つ辻に戻ってくるのですが、間違えて三の峰方面へ逆走。何やってんだ。
どうりで鳥居の裏ばっかり見えると思ったら、そういうことか。鳥居の裏には奉納した人の名前や日付が書かれているので、なんか変だなとは思っていたのですが。
しかしそのおかげで、かわぐちかいじプロダクション奉納の鳥居に気付いたり。こんなところで有名人の名前を見つけるとちょっと嬉しい。
山道を歩き回りはするけれど、どこもかしこも鳥居だらけでどこを歩いているか分からなくなるような、どうにも奇妙な感覚を満喫できた。
キツネにつままれたような、っていうか。
ようやく一通りの参拝を済ませ、山を降りたら昼過ぎというところだった。
どうせなら伏見桃山まで脚を伸ばそう。

ほんの半日の旅行にもかかわらず、つづく。

sabae


THE LITTLE WILLIES "THE LITTLE WILLIES"




旅行記 飛騨 その3

2006-09-08 02:19:22 | 旅行記
気がつけば、過ごしやすい気候になり、秋を感じる今日この頃。
昨日は店主マルツ宅にて、初物のサンマを頂きました。
マルツお気に入りの「一ノ蔵」を飲みながら、突付くサンマ。
他にも冷奴、揚げと水菜のおひたし等、飲めと言わんばかりのお料理、おいしゅうございました。
さらには食後に梨と葡萄まで頂き、秋を満喫。
もう九月なんだなぁ。

そんな初秋の一日を過ごしたは良いが、何か大事なことを忘れているような気が・・・
あれだ。夏の思い出だ。
たった3話の旅行記が完成する前に9月に突入してしまいました。
夏休みの宿題を、新学期になってもまだ完成しないバカ小学生のような気分です。
実際そんな小学生だったsabaeですが。今日は。


3日目の朝も前日と同じように、ラジオ体操と共に。障子越しの朝日が爽やかで、好天を予想させる。
普段まず目が覚めない時間の目覚めにも拘らず、頭はすっきりしている。何しろ朝ご飯は7時半。散歩でもして腹を減らさねば。
実は初日にステーキを食べて以来、空腹感を感じていない。空腹感を感じる前に次の食事、と食事に追われる日々で、美味しい食事に申し訳ない。
私がもっと大食なら、美味しさをきっちり理解できたかもしれないのに。
とか思ってたら、あっとゆーまにメシ。
献立は前日の朝食と(ほぼ)同じってことは前日の夕食ともよく似ている。やっぱり観光組合かなんかで決められているのでしょうか。おいしいから良いんだけどね。

チェックアウト時にはやはりおばあちゃんが。
ちょっと長話に付き合ってもらいつつ、白川郷に二泊したことを告げると、
「退屈しませんでしたか?」
と尋ねられた。とんでもございません。色々楽しめましたし、もっと居たいぐらいです。そしてやはりおばあちゃんはかわいい。
何しろJRのポスターモデルも勤めた、デルモおばあちゃんである。かわいくない筈が無い。前日の宿のおばあちゃんもかわいかった。
これってやっぱり観光組合か何かで決められているのでしょうか?
お礼を言って宿を後に。

白川郷とは、
おばあちゃんがかわいい(断言)。
トイレがきれい(ウォシュレット完備)。
あとご飯うまい(書き忘れましたが、初日の宿で熊汁も食べました)。
それから景色とか(建物の中も外も)?
そんな感じでした。トイレ(水回り)に関しては、比較的新しい観光地なのと、町中で協力して美化しているからではないかと推察します。
ほんわかした気分で、バスに乗り高山へ。


昼頃高山駅に着き、夕方まで観光。
陣屋前で開かれている朝市へ行ったは良いが、殆どの店が畳まれていたのは当たり前だ。
かろうじて開いていた店で、桃を買って食べた。ひんやりしておいしい。
朝市に間に合わなかったのは残念でしたが、雰囲気だけでも味わうべく、ぶらぶら。
この後「日下部民藝館」に行くつもりだったのですが、無駄に遠回りしつつ町並みを楽しんだ。
骨董屋や煎餅屋を覗いたり、鍛冶橋の袂のラーメン屋のテイクアウトで牛串食ったり。

「日下部民藝館」は流石に良かった。来館者が(この時点では)他に居なかったのも、その広さを感じるのには良かった。頭上に広がる、吹き抜けの空間に、縦横に走る梁と束柱に圧倒される。
俺が猿だったら登ったまま降りて来なくなるぐらい居心地がよさそうだ。
今も昔も金貸しってのは儲かるんだなぁ、などと思いつつ順路通り進む。展示品や内装も何があったか忘れるぐらい凄かったのだが、何しろ広い。迷路かこの家は。
俺がハツカネズミであっても迷うこと請け合い。
そして中庭を、廊下に座ってぼんやり眺めた。
俺が猫だったら絶対居つく。いや、猫になりたい。なって日がな一日ごろごろしたい。で、たまにネズミ捕まえたい。
そんな昔の暮らしに憧れを抱かせてくれた(動物だけど)素晴らしい建築だった。
最後にお茶と煎餅もくれた。また食べてる。

その後予定していた酒蔵見学には、まだ時間が早かったので蕎麦屋へ。どうせ酒蔵でお酒を頂く気満々なので、何か腹に入れとかねば。
結構老舗らしくなかなか繁盛していた。地元の人と観光客の比率が半々ぐらいと、良い感じの客入り。
で、ここでも盛りとビール。
うーん。いやおいしいよ。普通においしい。多分これがこの辺の地の蕎麦なんだろう。
前日の蕎麦のようなものを求めてはいけなかったのだ。
冷たい蕎麦よりも暖かい蕎麦で出汁を試すべきだったかもしれません。
京都でも老舗系の蕎麦屋では、蕎麦自体には目をつむる物ですし。

ともあれ、準備万端整ったので海老坂下の「平瀬酒造店」さんへ。
高山で最も飲まれているお酒「久寿玉」の醸造元。
お忙しい中親切に案内して頂きました。大正初期の建築や巨大な設備に目を見張りつつ、熟成中の原酒や、カップに詰めた直後(火入れ直後)等、普段では飲めないタイミングのお酒を味見させていただきました。
一合以上は飲んでたような・・・。味見じゃないよそれ。
キリッとした辛口の、私好みの味で、お土産は「久寿玉」に決定。純米本醸造と吟醸の2本。自分用でないのが無念です。
実は見学の予約を、もっと早く入れるべきところ、当日の朝にお願いしてしまったにも拘らず、親切に案内してくださって本当に有難うございました。
「平瀬酒造店」の「久寿玉」。お勧めです。

と、酒瓶2本も荷物を増やした訳ですが、もう一軒気になる店が。「平瀬酒造店」さんから海老坂を登った所にある、古い町屋の醤油屋さん。
看板を見る限り、醤油と味噌を売っているようだが、なんともそそる店構え。表が店舗で奥が住居になっているような店。
暖簾を潜った所が店舗スペースで、だだっ広い土間みたいな空間。尤も土間としては広くても、店舗としては広いとは言えない空間に置いてある商品は、隅っこに醤油が30~40本ほど。やはりだだっ広いと言っていいでしょう。
他には長椅子と煙草盆(灰皿とマッチが乗った盆)、植木の乗った棚。ぐらい? 
長椅子で将棋指しながら、開いた空間で子供が相撲を取れそうです。今時なんと贅沢な土地の使い方でしょう。
店の人が出てくる気配が無いので、お店(建物)を物色したり、長椅子で一服したり時間を潰す。
風が吹き込んで心地いいので、このまま誰か来るまで待っててもいい様に思ったが、奥の方で物音がしたのを機に声をかける。

と、出てきたのはまたもやおばあちゃん。

前述を訂正します。「白川郷とは、おばあちゃんがかわいい」ではなく「飛騨とは、おばあちゃんがかわいい」です。
早速醤油の味見をさせてもらい、徳利に入ったたまり醤油を、土産用に2本買った。
徳利には手描きで「○に五」のマークと、「エビサカ」、「飛騨の味 みそ たまり」と書かれている、オリジナル徳利。
他に味噌が奥に有ると言うので、見せてもらい、つぶ味噌を買った。これは自宅用。
味噌は住居スペースの横手に走る、店舗スペースと裏口を繋ぐ通路にあり、生活空間丸見え。
おばあちゃんは散らかってて恥ずかしいと言っていたが、話をしつつ、色々見せて貰った。
きれいに片付き、実際生活されているわけだから、おばあちゃんの美意識がきちんと現れているようで、資料館などより余程楽しい。
通路から見えたのは、さほど広くない二間続きの部屋なのに、お茶花が数箇所に活けられていた。お花は欠かさないようにされているそう。
花や掛け軸は当然としても、飾ってあるものや小物類からも季節を感じる素敵なお住まいでした。
亡くなったご主人は趣味人だったらしく、もう一つ奥には殆ど使わないらしいお茶室があり、ここにも花が。
ご主人の話も伺ったが、思い出を大切にしつつ楽しんで生活されている、と感じました。
昔からの家や、ご主人との思い出は出来るだけ守り、季節や日々の変化は敏感に取り入れているような。違う季節にまた訪れたい。

長居を詫びつつ店を出て、高山駅へ。
酒瓶2本に醤油徳利2本。肩にズシリと来るが、これが思い出の重みってやつか? いや駄洒落でなく。


既に京都まで直通の電車は無くなっていたので(1日1本しかない)、在来線を乗り継いで京都駅まで辿り着いた頃には、この旅で初めての空腹感を感じることが出来た。
コンビニ寄って帰ろう。

sabae


Cano Caoli "EXTRA BRIGHT"










旅行記 飛騨 その2

2006-08-27 00:01:37 | 旅行記
今年の甲子園は熱かった。そして暑かったらしい。何よりも各チームの選手たちの信頼の厚さが心に沁みた。
皆さんあついですか?
sabaeです。今晩は。
冷房の効いた部屋でテレビ観てて、何言ってるんでしょうか。


しかし飛騨もまた暑かった。
京都となにが違うというのか。
そもそも高山市などは、小京都と渾名される町である。
京都に生まれ、京都に育った私が、時間やお金をかけて見に行く必要などあったのか?
と、前日いきなり後悔するぐらいの灼熱ぶりを見せてくれた飛騨。
2日目は白川郷で1日ぶらぶらする予定で御座います。そしてここでも灼熱。

早朝ラジオ体操の音声に叩き起こされたのは、何十年ぶりの事でしょうか。こんなおっさんにまで、夏休み気分を分けてくれてありがとう。
早めに目が覚めたので、朝食の時間までぼんやり過ごした。朝日の柔らかい光に浮かぶ部屋の柱や梁を見たり、用水路の水音や蝉の声を聴いたり。
朝食のメニューは前日の晩御飯とあんまりかわらないような・・・。動物性たんぱく質が植物性になったぐらいか?豆うまかった。そして遂に出た朴葉味噌焼き(野菜焼き)。

白川郷で2泊したが、旅館2軒に1泊ずつなので、チェックアウト。大女将、ていうかおばあちゃんが対応してくれたのだが、・・・かわいい(赤面)。
部屋に置いてあった「思い出帳」に、おばあちゃんについて書かれた書き込みが多かったのはこういうことか。おばあちゃん、ありがとうございました。
チェックアウトしてすぐ、別の、でも似たような旅館に移動して荷物を預かってもらった。ら、ここにもおばあちゃんが!
なにか?この辺の旅館ではおばあちゃん標準装備か?
おねーちゃんには弱いがおばあちゃんには更に弱い俺をどーしよーってんだ?
普段の3倍ぐらい愛想のいい人になりつつ荷物を預け、快晴の白川郷散策に出発。暑い。


先ずは展望台から白川郷全体を見渡そうと山を目指す。山の麓までは大した距離ではなかったが、流石にこの陽気ではキツイ。途中、蓮の咲き乱れる池を見て疲れを癒すも、暑さは誤魔化せず。
ダラダラ汗を掻きながら山を登っていると、山肌を滔々と流れ落ちる水が。山のどこかから湧き水が小さな滝のように流れ落ちているようだった。手を触れてみると冷たくて、心地いい。マイナスイオンとかいっぱい出てそうな心地よさ。
そういえば、舗装された山道の脇を水が流れているなーと思っていたが、恐らくこの湧き水を町の用水路に引いているんだろう。
なんだか上の方からどんどこ水流れてきてるんですが。かなり長い距離で「小さな滝」が無数に発生していた。ちょっと歩いては水触って、を繰り返し、一口掬って飲んでみたがうまかった。

展望台から見下ろす白川郷は、山間の少しばかりの平地に、家々が身を寄せ合って冬に備えているようにも見えた。藁葺き屋根は決して多くなく、6割方瓦屋根のように思った。
冬は一面雪一色で見事な景色だろうが、夏の緑も悪くない。大体冬にこんな山登る気になんかなれない。<遭難するかも

山を下りて、一般に公開されている合掌造り建築が何件かあるので見に行った。昼前ぐらいの白川郷は、多からず少なからずいい感じの観光客の入り。
のどかな田舎道をぶらぶら歩き、国の重文指定を受けている、最大の合掌造り建築を目指した。ら、住居兼土産物屋の前の水路にいきなり50cm級のニジマスが何匹も。なぜニジマス。このへんニジマス獲れるの?琵琶湖のブラックバスみたいに繁殖してる?
これまでも水路に鯉を泳がせてる所はあったのだが、ニジマスって。しかもでかっ。数も多いし、ひょっとしてこの店で養殖してんのか?ちょうど家の幅で水路を仕切り、逃げられないようになってるし。
さらに別の仕切りにはウナギまで。いやだからあの、これ商品ですか?私物?商品なら加工してから売るのか、それとも生で?と、店の人と思しき女性が。

「すいませーん、この魚何ですか?」
「ニジマスです!」
「・・・すいません。」

女性のキッパリした口調に、本命の質問を断念してしまった。てか訊いてはいけない質問だったような気がして。
いや、この世には謎のまま残したほうが良い事だってあるさ。これもそんな謎の一つなんだろう。と強引に自分を納得させ重文見学へ。
流石に重文だけあって、全て伝統的な建築素材と技法で保存してある。間違ってもウォシュレットなんか有りそうも無い。電気もギリギリ引いている感じ。
町一番のでかい家だけあって、展示してある道具類も良い物が多かった。塗りの道具も慶事と弔事で使い分けるから、色違いで揃えないといけないんですね。
3階(だだっ広い屋根裏みたいな感じ)の養蚕スペースは、藁葺き屋根を内側から見られたのが嬉しかった。葺き替え作業の映像を見た方なら分かるでしょうが、これだけの物を維持するのには凄まじいエネルギーが必要な筈。
実際写真では、人が屋根に鈴生りの状態で作業している。しかも近所(町全体が近所みたいなもんだろう)の人々のボランティアだそうだ。そうやって、近所同士で持ち回りで手伝い合って、この町の伝統を守っているらしい。
この助け合いの繋がりを「結い」と呼ぶそうだ。
藁の屋根を結うことで、人と人の繋がりも、より太く結い上げることになるのだろう。


書き出しにうまくリンク出来て、きれいにまとまった気になったものの、まだ昼です。
前日の飛騨牛食べてから、一度も空腹感を感じていなかったのですが、とりあえず蕎麦位なら食べられそうな気がして蕎麦屋へ。
いかにも観光地の食事処って感じの、テイクアウトでソフトクリームもやってるような店。三つ巴を染めた暖簾をくぐると、カウンターのみの店内を観光客が入れ代わり立ち代わり、と繁盛している様子だが、店自体があんまり無い場所なので当然だろう。
何も期待せず、盛りとビールを注文。
一口食べてちょっと驚いた。うまいっス。もっと田舎っぽい物を想像していたが、バランスの良い洗練された蕎麦。
適度なコシに微妙なツブ感がナイス。のど越し良く、ご飯のような(他に喩えを思いつかない)良い香がしてました。出汁も文句なし。
カウンター内では黙々と蕎麦を打つご主人と、くるくる良く動く奥さん、それに中学生位の女の子(夏休みにご苦労様です)が忙しそうにしていて、なんともアットホームな雰囲気に和みました。さらっとした蕎麦湯もお店の雰囲気に合ってたしね。
旅先でおいしい物に出会う喜びを噛み締めつつ、店を後に。

さてまたしても満腹になってしまった訳ですが、晩御飯までにはお腹を空かせておかなければ。特に目的も無く、全ての通り、畦道を制覇する勢いで、小さな町をぐるぐる回る。


青々とした稲が風に揺られる様子は、何故か喜びを感じる風景で、これは農耕民族の遺伝子に組み込まれたものなのでしょうか。そんな事を口走ってしまうほど、田んぼがやたら嬉しい。
稲の株元に張り付くカエルや、畦道を横切るヘビを見つけて危うくはしゃぎかけた。ヤバイ。小学生に退行しそうな勢いだ。
気持ちを落ち着かせるべく、ちょっと離れた(白川郷の中心から離れた)神社に向かった。名水が涌いてるらしいので。
国内のしかも田舎に旅行したら最低、水、米、酒、醤油、味噌位はチェックしたいもの。そのチェック項目第1位の水だ。
なんでも「麝香松の水」とかなんとか呼ばれる水らしく、湧き水が松の根の間を通る為に、香が着いてそのように呼ばれているらしかった。
「ゴタクはいいから飲ませろや!」とばかりに、ちょろちょろ流れている水を掬って飲んだら、冷え冷えで美味しいし。ゴタクじゃなくて、事細かな解説有難うと石碑に感謝。道中に買ったお茶のペットボトル(捨てられずに持っていた。)に汲むだけでは飽き足らず、顔洗ったり、足を浸したり。
散策に疲れた私の体をすっかりリフレッシュしてくれた、こんな名水の涌いている場所なのに誰も来ないよ。白川郷に(夏に)行ったら是非味わって貰いたい物の一つです。
「麝香松の水」。売りださねーかな。<そんなに涌かないと思う


疲れては癒され、疲れては癒され、まるで私の人生の様な散策を切り上げて、前述の宿にチェックイン。
つかれたー。結局全然お腹は減ってないんですけど、食事は6時。
前日の宿では家のすみっこの部屋に通されたので、気楽な感じだったのですが、今回はほぼ家の中心、囲炉裏のある部屋(食事する部屋、ってか広間)の真隣。
ごろごろしてたら配膳の音が聞こえてきて、なんか正座しなきゃいけないような気がしましたよ。
それでも、家の中心に近いだけあって、梁や柱の太さ、すすけ具合(囲炉裏近いしね)を見て、言葉にならないような感動を覚えた。
いよいよ6時。食事の時間ですが、全然お腹減ってません。
献立は、前日の宿と同じ。白川郷全体、季節によって献立が決まってるんでしょうか?
ただ、飽きたとは思わないし、同じ献立だけに、それぞれの微妙な違いが分かって楽しかった。
個人的な感想ですが、料理は昨日の宿、建物は今日の宿が良かったです。

そして、例によって用水路で冷やした酒を飲んで寝ました。

続く。


sabae


corinne bailey rae "corinne bailey rae"






旅行記 飛騨 その1

2006-08-21 00:59:02 | 旅行記
太陽の恵みにすら悪態をつく程の、暑さが続く今日この頃、如何お過ごしでしょうか。
暑い。暑すぎ。sabaeです。今日は。

大抵の方は、夏休みなり盆休みを、楽しんだり楽しまれたと思います。
去年までの私なら、それこそ骨休みが関の山の夏休み。一昨年までの私ならいや言うまい。
が、今年は去年よりパワーアップ!6日もあるよ!飛び飛びに!
飛び飛びってのが気になりますが、なにこれなんのサプライズ?俺に旅行でもさせて旅行記でも書けってことか?なぁ?

んで、行ってきたのですが。
言っておきますが、連休は最大3日なので、2泊3日の旅行です。

行き先は岐阜ってか、飛騨高山と白川郷だから飛騨旅行と言った方がいいですね。人生初の岐阜行です。

初日:京都>高山(昼食)>白川郷(宿泊)
2日目:白川郷(散策、昼食、宿泊)
3日目:白川郷>高山(散策)>京都
大体こんなざっくりした予定でGO!



初日、京都駅に朝っぱら来たわけですが、無論頭の中は飛騨牛100%です。
利用する「ワイドビュー飛騨」はグッドデザイン賞を受賞した、キハ85系車両を使用しているらしいですが興味ありません。
早起きして眠いし、とっとと高山まで連れてってくれ、てな感じだったのですが、トイレが自動ドアだったのにはビビッた。
目が覚めました。しかもドアなんか円いし。宇宙船のトイレかと思いましたよ。
また宮川、神通川沿いで、飛水峡など車窓からの景観も美しく、4時間近い電車の旅を楽しむことができました。
ありがとう「ワイドビュー飛騨」。この辺の事は今調べたのですが。行く前に調べとけよな>俺

そして高山に着いた時には良い感じに昼食時。牛です。しかもただの牛ではありません。

飛騨牛です。

こればっかりはしっかり調べて予約しておいた、ステーキ屋さんへ。
ついてみたら行列ですよ。前日あわてて(<精一杯のしっかり)予約しておいて良かった!
飛騨牛待ちの15~20人を横目に、優越感すら味わいながらテーブルに通されると、待合室めっちゃ近い。
なんかドアのガラス越しの視線を感じつつ、なんかゴージャスな名前のついたランチセットをオーダー。
「うまっ!!」
ってそれはサラダです。サラダからしてかなりのゴージャスさを醸し出している。いやが上にも期待は高まるというもの。
そして遂にステーキ(ヒレ)がテーブルに。「THEステーキ」と呼びたくなるほどの威容でした。厚い。
脂の多い濃厚な味で、調味料は塩胡椒だけで十分な旨み。あっさりめのワインの味が良くなった気すらした。
ソースボートに入ってたソースはまったく使わず。いらないな。
付け合せも色々あって、どれもおいしかったけど何食べたか忘れた。それぐらい飛騨牛は旨かった。
飛騨に着いたばかりなのに「また来よう。」と心に誓いました。


その日は偶然にも、さんまち通りで「我楽多市」が行われていたので、バスの時間まで露天を覗くことに。
快晴で暑いと言うか痛い程の日差しの中、和菓子の型とか、大工道具が安く売られていたので、危うく買いそうになるが、初日から荷物を増やす気にならなかったので見て回るだけにしました。
あのあたりは骨董屋の多い地域らしいので、3日目にゆっくり散策することにしてバス停に。


途中雨、いや豪雨に降られずぶぬれの状態でバスに乗り込み白川郷へと向かう。山の天気は変わりやすいってのは本当ですね。バス乗ったらすぐ晴れやがった。
のんびりバスに揺られつつ、世界文化遺産、白川郷に着くと案外観光地化しててちょっと萎えた。お土産屋さん多いなぁ。
今日はとっとと宿に行って飯食って風呂入って寝よう。ってことで、予約した宿を探していると、村を縦横に流れる農業用水路や、田んぼの畦道に癒される。
昔はウチの近所にもこんな風景だったなぁ、いやさすがに藁葺き屋根はなかったですが。これか、これが文化遺産合掌造りか。

宿も合掌造りや囲炉裏を保存したまま旅館にリフォームした建物で、新しい部分を古い部分にうまく合わせてありました。
木材や畳の匂いに包まれているだけでも気持ちが落ち着くものですね。ちょうど部屋の障子を開けると用水路が流れてて、せせらぎを聞きながら寝転んでいたら案の定寝た。落ち着きすぎ和みすぎ。
気がつけば食事の時間で。いや晩飯6時って早過ぎない?まだ胃の中の飛騨牛消化しきれてなかったのですが・・・。
尤も昼とは打って変わって、低カロリーなお食事で胃の負担は軽そう。
塩味で頂く山菜の天麩羅、御浸し、小ジャガイモを甘辛いタレにからめたもの、固豆腐、牛肉と野菜の陶板焼き、岩魚の塩焼き、他なんかあったような・・・。
もうくえねえ。どれもこれもおいしくて、本当に毎日こういうものを食べたいと思っているのですが、量多いです。
なんとか完食したころには、おいしくて嬉しいんだか、悲しいんだか分からなかった。ご飯もおいしくておかわりしたかったのですが、そいつは無理な相談でした。

食後散歩がてら温泉施設行って、用水路で冷やしておいた「鬼殺し 怒髪衝天(高山で買った)」を飲みながらのんびりと1日目終了。


飛騨の感動を濃縮したらだらだらと長くなって、しかも飲み食いの事ばっかりになりましたが、この日はほんと飲み食いしかしてなかったから・・・。


続く。


sabae



Kirsty MAcColl "TITANIC DAYS"