Frany's Yard

Frany's Yardはトリュフのスタッフたちが、アンティークの話、日常の中の嬉しい、可愛い、心地いいことを綴ったミニコラムです。

旅行記 飛騨 その3

2006-09-08 02:19:22 | 旅行記
気がつけば、過ごしやすい気候になり、秋を感じる今日この頃。
昨日は店主マルツ宅にて、初物のサンマを頂きました。
マルツお気に入りの「一ノ蔵」を飲みながら、突付くサンマ。
他にも冷奴、揚げと水菜のおひたし等、飲めと言わんばかりのお料理、おいしゅうございました。
さらには食後に梨と葡萄まで頂き、秋を満喫。
もう九月なんだなぁ。

そんな初秋の一日を過ごしたは良いが、何か大事なことを忘れているような気が・・・
あれだ。夏の思い出だ。
たった3話の旅行記が完成する前に9月に突入してしまいました。
夏休みの宿題を、新学期になってもまだ完成しないバカ小学生のような気分です。
実際そんな小学生だったsabaeですが。今日は。


3日目の朝も前日と同じように、ラジオ体操と共に。障子越しの朝日が爽やかで、好天を予想させる。
普段まず目が覚めない時間の目覚めにも拘らず、頭はすっきりしている。何しろ朝ご飯は7時半。散歩でもして腹を減らさねば。
実は初日にステーキを食べて以来、空腹感を感じていない。空腹感を感じる前に次の食事、と食事に追われる日々で、美味しい食事に申し訳ない。
私がもっと大食なら、美味しさをきっちり理解できたかもしれないのに。
とか思ってたら、あっとゆーまにメシ。
献立は前日の朝食と(ほぼ)同じってことは前日の夕食ともよく似ている。やっぱり観光組合かなんかで決められているのでしょうか。おいしいから良いんだけどね。

チェックアウト時にはやはりおばあちゃんが。
ちょっと長話に付き合ってもらいつつ、白川郷に二泊したことを告げると、
「退屈しませんでしたか?」
と尋ねられた。とんでもございません。色々楽しめましたし、もっと居たいぐらいです。そしてやはりおばあちゃんはかわいい。
何しろJRのポスターモデルも勤めた、デルモおばあちゃんである。かわいくない筈が無い。前日の宿のおばあちゃんもかわいかった。
これってやっぱり観光組合か何かで決められているのでしょうか?
お礼を言って宿を後に。

白川郷とは、
おばあちゃんがかわいい(断言)。
トイレがきれい(ウォシュレット完備)。
あとご飯うまい(書き忘れましたが、初日の宿で熊汁も食べました)。
それから景色とか(建物の中も外も)?
そんな感じでした。トイレ(水回り)に関しては、比較的新しい観光地なのと、町中で協力して美化しているからではないかと推察します。
ほんわかした気分で、バスに乗り高山へ。


昼頃高山駅に着き、夕方まで観光。
陣屋前で開かれている朝市へ行ったは良いが、殆どの店が畳まれていたのは当たり前だ。
かろうじて開いていた店で、桃を買って食べた。ひんやりしておいしい。
朝市に間に合わなかったのは残念でしたが、雰囲気だけでも味わうべく、ぶらぶら。
この後「日下部民藝館」に行くつもりだったのですが、無駄に遠回りしつつ町並みを楽しんだ。
骨董屋や煎餅屋を覗いたり、鍛冶橋の袂のラーメン屋のテイクアウトで牛串食ったり。

「日下部民藝館」は流石に良かった。来館者が(この時点では)他に居なかったのも、その広さを感じるのには良かった。頭上に広がる、吹き抜けの空間に、縦横に走る梁と束柱に圧倒される。
俺が猿だったら登ったまま降りて来なくなるぐらい居心地がよさそうだ。
今も昔も金貸しってのは儲かるんだなぁ、などと思いつつ順路通り進む。展示品や内装も何があったか忘れるぐらい凄かったのだが、何しろ広い。迷路かこの家は。
俺がハツカネズミであっても迷うこと請け合い。
そして中庭を、廊下に座ってぼんやり眺めた。
俺が猫だったら絶対居つく。いや、猫になりたい。なって日がな一日ごろごろしたい。で、たまにネズミ捕まえたい。
そんな昔の暮らしに憧れを抱かせてくれた(動物だけど)素晴らしい建築だった。
最後にお茶と煎餅もくれた。また食べてる。

その後予定していた酒蔵見学には、まだ時間が早かったので蕎麦屋へ。どうせ酒蔵でお酒を頂く気満々なので、何か腹に入れとかねば。
結構老舗らしくなかなか繁盛していた。地元の人と観光客の比率が半々ぐらいと、良い感じの客入り。
で、ここでも盛りとビール。
うーん。いやおいしいよ。普通においしい。多分これがこの辺の地の蕎麦なんだろう。
前日の蕎麦のようなものを求めてはいけなかったのだ。
冷たい蕎麦よりも暖かい蕎麦で出汁を試すべきだったかもしれません。
京都でも老舗系の蕎麦屋では、蕎麦自体には目をつむる物ですし。

ともあれ、準備万端整ったので海老坂下の「平瀬酒造店」さんへ。
高山で最も飲まれているお酒「久寿玉」の醸造元。
お忙しい中親切に案内して頂きました。大正初期の建築や巨大な設備に目を見張りつつ、熟成中の原酒や、カップに詰めた直後(火入れ直後)等、普段では飲めないタイミングのお酒を味見させていただきました。
一合以上は飲んでたような・・・。味見じゃないよそれ。
キリッとした辛口の、私好みの味で、お土産は「久寿玉」に決定。純米本醸造と吟醸の2本。自分用でないのが無念です。
実は見学の予約を、もっと早く入れるべきところ、当日の朝にお願いしてしまったにも拘らず、親切に案内してくださって本当に有難うございました。
「平瀬酒造店」の「久寿玉」。お勧めです。

と、酒瓶2本も荷物を増やした訳ですが、もう一軒気になる店が。「平瀬酒造店」さんから海老坂を登った所にある、古い町屋の醤油屋さん。
看板を見る限り、醤油と味噌を売っているようだが、なんともそそる店構え。表が店舗で奥が住居になっているような店。
暖簾を潜った所が店舗スペースで、だだっ広い土間みたいな空間。尤も土間としては広くても、店舗としては広いとは言えない空間に置いてある商品は、隅っこに醤油が30~40本ほど。やはりだだっ広いと言っていいでしょう。
他には長椅子と煙草盆(灰皿とマッチが乗った盆)、植木の乗った棚。ぐらい? 
長椅子で将棋指しながら、開いた空間で子供が相撲を取れそうです。今時なんと贅沢な土地の使い方でしょう。
店の人が出てくる気配が無いので、お店(建物)を物色したり、長椅子で一服したり時間を潰す。
風が吹き込んで心地いいので、このまま誰か来るまで待っててもいい様に思ったが、奥の方で物音がしたのを機に声をかける。

と、出てきたのはまたもやおばあちゃん。

前述を訂正します。「白川郷とは、おばあちゃんがかわいい」ではなく「飛騨とは、おばあちゃんがかわいい」です。
早速醤油の味見をさせてもらい、徳利に入ったたまり醤油を、土産用に2本買った。
徳利には手描きで「○に五」のマークと、「エビサカ」、「飛騨の味 みそ たまり」と書かれている、オリジナル徳利。
他に味噌が奥に有ると言うので、見せてもらい、つぶ味噌を買った。これは自宅用。
味噌は住居スペースの横手に走る、店舗スペースと裏口を繋ぐ通路にあり、生活空間丸見え。
おばあちゃんは散らかってて恥ずかしいと言っていたが、話をしつつ、色々見せて貰った。
きれいに片付き、実際生活されているわけだから、おばあちゃんの美意識がきちんと現れているようで、資料館などより余程楽しい。
通路から見えたのは、さほど広くない二間続きの部屋なのに、お茶花が数箇所に活けられていた。お花は欠かさないようにされているそう。
花や掛け軸は当然としても、飾ってあるものや小物類からも季節を感じる素敵なお住まいでした。
亡くなったご主人は趣味人だったらしく、もう一つ奥には殆ど使わないらしいお茶室があり、ここにも花が。
ご主人の話も伺ったが、思い出を大切にしつつ楽しんで生活されている、と感じました。
昔からの家や、ご主人との思い出は出来るだけ守り、季節や日々の変化は敏感に取り入れているような。違う季節にまた訪れたい。

長居を詫びつつ店を出て、高山駅へ。
酒瓶2本に醤油徳利2本。肩にズシリと来るが、これが思い出の重みってやつか? いや駄洒落でなく。


既に京都まで直通の電車は無くなっていたので(1日1本しかない)、在来線を乗り継いで京都駅まで辿り着いた頃には、この旅で初めての空腹感を感じることが出来た。
コンビニ寄って帰ろう。

sabae


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