再読のための覚え書き
帰郷
大佛次郎(1897-1973)
元海軍将校の守屋恭吾は、仲間との公金横領の罪を一人で被り、外国で逃走。妻子に行方も告げず、欧州各地を独りで放浪する。
十数年を経て、敗戦後の日本に帰国した恭吾が見たものは、変わり果てた日本の姿だった。
「軍の圧迫があったから戦争に協力したと今になってから言うのは、そう言えばなるほどそれに違いないが、人間として卑怯者だ。ただ、動いたのだ。気狂い染みた強い風に吹かれて動いたのだ。悲しい哉、動くように出来ていたともっと自分で気がついたら。ところで相も変わらず群動だけとはね。いつまでも根が地面に降りない。」
・・・・・・・・・・・・
恭吾以外の登場人物の一人一人を、敗戦後の日本の様々な姿の象徴として置き、恭吾の目を通して、著者の憤りを静かに表出している。
2021.12.12読了
帰郷
新潮文庫
昭和27年10月30日初版発行
昭和40年11月5日26刷
旧仮名遣い
#本 #読書 #文学 #文庫 #大佛次郎 #帰郷
