長島 潤 Sing a mindscape

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吉行淳之介「娼婦の部屋・不意の出来事」

2022-01-16 10:23:00 | 

再読のための覚え書き


娼婦の部屋・不意の出来事

吉行淳之介(1924-1994


「私」はいつも、娼婦の部屋の秋子を訪れる。秋子の部屋は「私」にとって安息の場所だった。


秋子は、娼婦の街の外に職を求め、街を出て行く。「私」は、秋子のいなくなった街を歩き回る。


そして秋子は、出て行く度に、再び娼婦の街に戻ってくるのだが、やがて、娼婦の街は「私」を必要としなくなり、「私」もまた、その街を必要としなくなる。


「私が秋子に感じた痛ましさは、その痛ましさに私が軀を寄添わせてゆく種類のものではなかった。私は一段高い、安全な場所に立って、その痛ましさを眺めているのであった。それに伴って、私とその町には落差ができてしまい、また、その町は私の眼の前で色褪せかかっていた。」



2022.1.15読了


娼婦の部屋・不意の出来事

新潮文庫

昭和41110日初版発行


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