再読のための覚え書き
望みなきに非ず
石川達三(1905-1985)
矢吹さんは、元海軍大佐で、巡洋艦の艦長だったが、戦後公職追放となり、今は失業中である。
一方、矢吹さんの妻は、向こう隣の戦争未亡人とともに、矢吹家に居候する学生の手ほどきを受けながら、ダンスパーティーの準備に励んでいる。
また、居候の住む離れには、学生たちが小賢しい理屈をこねて籠城する。
矢吹さんは、かつての名誉と権威を捨て、戦後の社会になんとか折り合いをつけようと奮闘していた。
「今や生きることは戦いである。艦隊を牽いて戦闘海面に乗り出すとき、心のなかには格別の戦いもなかった。智慧と判断と機械とで戦って、それで済んだ。大戦争が終って自分一個を生かす段になってみると、戦いは矢吹さんの心の中にあった」
2022.3.13読了
望みなきに非ず
新潮文庫
昭和24年7月10日初版発行
昭和39年10月10日28刷
旧仮名遣い
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