長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

石川達三「望みなきに非ず」

2022-03-14 09:35:00 | 

再読のための覚え書き


望みなきに非ず

石川達三(1905-1985


矢吹さんは、元海軍大佐で、巡洋艦の艦長だったが、戦後公職追放となり、今は失業中である。


一方、矢吹さんの妻は、向こう隣の戦争未亡人とともに、矢吹家に居候する学生の手ほどきを受けながら、ダンスパーティーの準備に励んでいる。


また、居候の住む離れには、学生たちが小賢しい理屈をこねて籠城する。


矢吹さんは、かつての名誉と権威を捨て、戦後の社会になんとか折り合いをつけようと奮闘していた。


「今や生きることは戦いである。艦隊を牽いて戦闘海面に乗り出すとき、心のなかには格別の戦いもなかった。智慧と判断と機械とで戦って、それで済んだ。大戦争が終って自分一個を生かす段になってみると、戦いは矢吹さんの心の中にあった」



2022.3.13読了


望みなきに非ず

新潮文庫

昭和24710日初版発行

昭和39101028

旧仮名遣い


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