長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

メリメ「カルメン」

2022-01-23 10:59:00 | 

再読のための覚え書き


カルメン

プロスペル・メリメ(1803-1870

杉捷夫訳


考古学者の「私」は、スペインのコルドヴァに滞在中、犯罪人として追われているドン・ホセと知り合った。


その後、「私」が三度目にホセに会ったとき、彼は死刑判決を受け、囚われの身となっていた。


ホセは「私」に、彼の人生を狂わせたジプシーの女カルメンとの出会いを語り始める。


・・・・・・・・・・・・


ビゼー作曲のオペラにもなっている「カルメン」。オペラでは、ドン・ホセとカルメンの愛憎の物語だけが展開するが、原作では、スペインを舞台に、フランス人の「私」、ボヘミア人/ジプシーのカルメン、バスク少数民族のドン・ホセという、民族の違いも絡み合っておもしろい。



2022.1.22読了


カルメン

岩波文庫

昭和4425日初版発行

昭和4943046


# #読書 #文学 #文庫 #メリメ #カルメン






三島由紀夫「純白の夜」

2022-01-22 09:40:00 | 

再読のための覚え書き


純白の夜

三島由紀夫(1925-1970


銀行家村松恒彦の年若い妻の郁子は、村松の友人の楠と出会い、次第に二人は惹かれ合ってゆく。


しかし、郁子はそのセレブとしてのプライドが、楠木はそのドンファンとしてのプライドが、それぞれに邪魔をして、二人の関係は先に進まない。


そのまま立ち消えになるかと思われた二人の関係は、第三者の介在で、思わぬ方向に流れてゆく。


「楠への愛、彼の郁子への愛、この模糊たるもの、この霧のようなものの只中へ、今行われようとしている一つの行為が、機関車のように霧の中から姿をあらわし、おかまいなしに何もかも蹂躙して、どこへともしらず驀進してゆく。あとに残された人間は、あとに残された愛はどうすればよいのか。」



2022.1.21読了


純白の夜

新潮文庫

昭和31730日初版発行

昭和44220日改版初版発行


# #読書 #文学 #文庫 #三島由紀夫 #純白の夜






正宗白鳥「入江のほとり」

2022-01-19 09:25:00 | 

再読のための覚え書き


入江のほとり

正宗白鳥(1879-1962


瀬戸内の入江のほとりで暮らす兄弟たち。中でも寡黙な辰男は、変わり者と見做され、6人兄弟の中で浮いた存在。


小学校の教員をしながら、独学で英語を勉強しているが、その発音も意味合いの解釈も、世間には通用しない彼独自のものだった。


また辰男は、雑草でも木の葉でも採取しては、勝手な名前を付けて呼んでいた。


その役に立たない行動を、東京で暮らす長兄は責め立てる。


人から理解されることを拒む、辰男の孤独。



2022.1.18読了


入江のほとり

岩波文庫

1929625日初版発行

198511724

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #正宗白鳥 #入江のほとり






川端康成「たまゆら」

2022-01-18 09:54:00 | 

再読のための覚え書き


たまゆら

川端康成(1899-1972


表題の《たまゆら》の他9編の短編集。


《離合》

副島は、妻との離婚後、娘の久子を男手ひとつで育ててきた。


その後、娘と遠く離れて暮らしている山の中に、久子との結婚の許可を求めて、津田という青年が訪れた。


副島は青年に好感を持って心情を告げる。


「久子と二人で暮らしていたころは、この子が結婚すれば私はずいぶんさびしいだろうと思ったものです。ところが妙なものですね。あなたがこうして来てくれると、実際は反対なんだな。遠ざかってゆくように思っていた久子が、ここで急に近づいて来たような気がする。どういう心理でしょうな。」



2022.1.17読了


たまゆら

角川文庫

195495日初版発行

19841173

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #川端康成 #たまゆら






宇野浩二「枯木のある風景・枯野の夢」

2022-01-17 09:35:00 | 

再読のための覚え書き


枯木のある風景・枯野の夢

宇野浩二(1891-1961


43歳で亡くなった洋画家の小出楢重をモデルとした創作話。


画家の島木新吉は写生旅行に出かけ、かつて親交を結んだ画家の古泉桂造(小出楢重がモデル)のことを回想する。


島木は、古泉の優れない健康を心配して古泉の家を訪れると、吃りのために不自由な言葉遣いで、自分の新たな作品の構想を話し出した。


「今度の風景は、裸婦に横たわっている辺に、枯木の丸太を四五本横倒しにおいたろ思てんね。これからは、芭蕉風に、写実と空想の混合酒(カクテル)を試みてみようと思うんや。題して『枯木のある風景』というのはどうや。」


・・・・・・・・・・・・


小出楢重の絶筆である『枯木のある風景』には、近景には大きな枯れ木が横倒しに転がっており、遠景には送電線があるのだが、その送電線の上に、一見、鴉が止まっているのかと思いきや、よく見るとシルクハットを被ったかのような人物が腰掛けている。


それは小出楢重自身ではないかと言われているが、一体どのような意図で描いたのだろうか。



2022.1.16読了


枯木のある風景・枯野の夢

岩波文庫

195495日初版発行

19841173

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #宇野浩二 #枯木のある風景・枯野の夢