あすかの会秀句 春の季語「鳥帰る」兼題「揺」 2024年3月22日
◎ 野木桃花主宰の句
漕ぐやうに風が揺らして半仙戯
囀や花回廊の奥の奥
健気さを力となして嶺桜
山越えて来る風を待ち帰る鳥
◎ 野木主宰特選
透析に射しこむ日差しヒヤシンス かづひろ
◎ 武良竜彦特選
金管にタワー映して春を行く 悦 子
◎ 秀句 選の多かった順
木々の揺れうつろに見てる春の風邪 さき子
青き踏む歩ける今を歩きけり 尚
再会を誓ふ約束鳥帰る 典 子
戦なき空を選んで鳥帰る さき子
料峭の一人シーソー沈むまま ひとみ
抜き足に軋む階段冴え返る 尚
忘れ雪落して揺らぐ笹の音 市 子
思い出も居場所のひとつ冴返る さき子
揺りかごの小さきまどろみ花菜風 玲 子
春水や歯朶の葉先の揺れ止まず 玲 子
離るるも向かふも故郷鳥雲に 玲 子
揺り椅子の誘ふ夢やあたたかし ひとみ
白椿生まれて生きてただ去りぬ 都 子
青空を背に無心なる土筆摘 礼 子
鳥帰る引越先の家の鍵 礼 子
初蝶やこの世に迷いたるように さき子
鳥帰るその先何かきな臭し 尚
ハモニカの男は揺れて春の土手 典 子
鳥雲に都邑の空に溶けるまで みどり
北帰行ぼんやり想ふ父のこと みどり
巻寿司に入れる庖丁鳥帰る かづひろ
三月の鯉のゆるんで尾を揺りぬ かづひろ
鳥雲に安堵と淋しさ綯い交ぜに 市 子
池の面の雲を揺らして亀鳴けり 玲 子
釣釜の揺れに心を杓加減 悦 子
青き踏む生きるではなく生かされて ひとみ
春疾風二日続きの戸の軋み 礼 子
京言葉の叔母の手を取る花の苑 かづひろ
混沌を揺り醒ましをり春の雷 みどり
揺りかごの捨てられてをり春陽中 みどり
心根の微妙に揺るる春の宵 尚
猫柳川面光りて立ち揺らぐ 市 子
鳥帰る天空ふさぐ峰四方に 市 子
「チェルシー」も別れのころか鳥帰る 典 子
三月や初めて使ふ万年筆 典 子
薄明に残るともしび鐘おぼろ 悦 子
参勤を終へて封地へ鳥帰る 悦 子
新緑の揺れてさしくる 英 子
若々しよりも品良く春ショール 英 子
せせらぎに揺るる葉先や竹の秋 英 子
挨拶をするかに肩に紋白蝶 英 子
横たはる背に土手の草鳥帰る ひとみ
紺暖簾揺らし角打ち春の宵 礼 子
冬木の芽固く閉ざして雑木山 都 子
ふらここを漕げば心も踊り出す 都 子
家並の途絶えし空や鳥帰る 都 子
〇 参考 武良竜彦の句
黒田杏子一周忌
杖欲(ほっ)し泉下の杏子(ももこ)に借りる春
川の音は弔辞か能登の春の雪
雪解川揺るる命を岩の陰
難破船のごとき列島鳥帰る