161105 交通事故を考える リスクアセスとその回避・事故対応
交通手段は飛躍的に便利になりましたが、他方で交通問題は地球温暖化から騒音振動、渋滞、そして交通事故など多種多様です。歩くことこそ一番の体の健康にいい地球環境にやさしい方法でしょう。いや行基、家持、空海、西行、一遍、一休、芭蕉、そして龍馬と適当に名前を挙げても、優れた人たちはいかに日本中を駆け巡ったか。歩くこと、風景とともに生きることは、頭脳明晰になるのではと愚考する次第です。私も以前は歩くのが好きでしたが、最近は車に頼りがちです。持病をかかえ乗るのが好きに慣れないのですが田舎ではやむを得ないと勝手に思い込んでいます。不健康この上ないと思いつつ。
前置きはそのくらいにして、交通事故を少し取り上げてみたいと思います。さまざまな交通対策もあって、死亡事故数は相当減っています。いま統計資料をみていませんが、事故件数自体も減っているのではないかと思っています。
他方で、悲惨な事故は結構大きくニュースで取り上げられています。要因はいろいろですが、多くは運転手側に一方的な問題があるケースです。飲酒、覚せい剤や大麻その他違法ないし類似品の使用、精神疾患、過労による居眠り、極端なスピード違反、多種多様です。しかも被害に遭う人は、横断歩道上とか、歩道を通行している人、信号待ちしている人、青信号を進む人です。最も安全と思われる場所で、しかも高齢者、幼児問わず、誰もが日常の平安を奪われています。
このような例の多くは、交通政策や交通計画、まちづくりなどのソフト・ハードの多様な手法でも解決策を提示することは困難ではないかと思います。車の持つ危険性について、運転する人、それを直接・間接に許容する人、組織、システムの中で、抑制する制度設計が必要ではないかと思うのです。個人の自由という大命題と衝突しますが、自動運転装置が将来普及して安全性が確保されれば別ですが、現段階では、現行法法制の見直しを改めて求めていく必要を感じています。
これらの規制措置は個別に慎重な審議が必要ですが、従前の対策の前提を見直す必要があるように思うのです。今回は詳細は避けます。また、アルコール感知装置のような、自動運転装置の前に、問題行動があれば運転を停止するような装置も開発が必要かもしれません。
これまで述べたことは前置きで、ここからが多少私が考えている思いです。私たちは、さまざまな危険を内包した社会に生きていると思うのです。アメリカでは、いつ銃の発砲に曝されるか(正当防衛基準が信じられないほど甘いのです)、西欧社会ではいつテロに巻き込まれるか不安な状況です。と同時に、平和な日本においても、死の危機は日常的にあると考えることも大事ではないかと思っています。
私は仕事柄、横断歩道中に車にはねられ、亡くなられたケース、青信号で車を発進したのに、猛スピードで赤信号を突き抜けようとした車に自車の横を衝突され、何回転もしてもうすこしで命を落とすところだったケース、などなど少なくない事例に対処したことがあります。そのようなこともあって、信号や交通施設、交通ルールは、絶対の安全確保ではないことを常に意識しています。
周囲の状況、走行に不自然な車がないかなど、注意しています。死傷の危険性を自らはもちろん、家族などにも理解してもらうようにしています。それはいつ死んでも覚悟できている状態を日常の中で意識して備えをするということにもつながります。そのための備えは、新渡戸稲造の「武士道」精神とは異なるものの、基底にはなにか通じるものがあるかもしれません。
こういった死傷の危険とは別に、交通事故で多いのが物損です。事故対応でいえば、死傷の場合119番や110番によりそれぞれがしっかりした対応をしてくれます(一般的には)。しかしながら、物損については、当事者任せとなります。そこで事故対応として一言触れておきたいと思います。
事故が起こった場合、どちらに責任があるか、過失相殺の割合はどうかといったことが問題となりますが、多くは人と人の信頼や保険会社の対応である程度の線で落ち着くと思います。ところが、過失相殺率の認定基準といったものは、相当詳細ですが、必ずしも個別の事故類型に当てはまるとは限りません。それ以上に、事故の具体的な状況がどのように生じたかの再現が容易でないことが多いのです。警察による現場検証も作成される図面では再現は不可能に近いのです。それは人損事故でもあり得ます。というのは警察官がやってくるのは事故直後でも事故車両が移動した後だと被害者が動転していると誤った現場を図面化することもあります。
何を言いたいかというと、事故が起これば、すぐに携帯を持ち出し、あれこれ言わずに、その場でそれぞれの車両の位置、衝突地点、周囲の状況をさっさと写真撮影しておくことだと思います。むろん、加害者であれば、まずは謝罪ですね。その上で、いずれの当事者も事故直後の写真は重要と思って欲しいです。きちんと撮影できていなくても、車の位置(道路や相手車両との関係)くらいはおおよそわかる程度あれば役立ちます。最近の写真ソフトと描画技術があれば、おおよその事故状況の再現は可能ではないかと思います。
このようなことを言うのも、最近の物損事故で、一方的追突事故などで、信じられない過失割合を主張され、立証するの手間取った経験が少なくないことから、言わずもがなの話しをしてしまいました。そういえば、私も停車中、追突され、すぐに写真撮影しましたが、なんと横の列にパトカーがいて、100%過失を追突車両の運転手が素直に認め、事なきを得ましたが。