180119 「好景気」と貧困 <ヤングケアラ- 高校生5%、家族をケア>を読みながら
トランプ政権誕生以来(たしかそれ以前から)ダウ工業株30種平均は一方的な右肩上がりで、至上最高値を更新続けています。経済成長率も上昇していて、貿易赤字の増大の問題が残るものの、アメリカ経済は絶好調のようにも見えます。今朝の毎日記事は<トランプ米政権1年「経済で成果」も貿易赤字拡大続く>とデータをあげて指摘しています。
同様に、日経平均株価も、一時的な反落があるものの、アメリカの株高などを受けて絶好調ですね。
とはいえ、トランプ政権を支持した白人ブルーカラーの雇用改善はさほど影響がないようですし、中産階級以下、とりわけ移民層などは経済的困窮がより厳しくなっているようです。
むろんわが国の現状も厳しさが伝わってきます。たしか昨日のNHKニュースで報じられていましたが、買い物をする場合、まず値段を気にする。当然ですが、それは高価なものでなく日用品についてでした。それが各地の普通の住民感覚ではないでしょうか。
ようやく賃上げ3%を経団連が明記しましたが、逆にわが国の労働者が大半を占める中小企業では無理という声もあがっているようです。
で、私自身のちょっとした体験でも、そのような感覚を感じます。地方の、とくに中心都市を除き、スーパーの店舗では、だいたい閑散としています。それに7時頃を過ぎると、さまざまな食べ物が2割引とか5割引になりますが、それを狙って買い物をする人が少なくないのです。
また私は自動車を運転するのがとても億劫です。それは地方でも多くが急いで運転している様子がうかがえ、のんびり運転できる雰囲気ではないのです。あちこちの仕事を掛け持っている人、家事と仕事を両立している人、訪問介護でしょうか、訪問先が離れていて時間の制約がある人、みなさん急いでいる様子が肌でわかります。私のように車間距離をあけようとしても、後ろにぴったりついて来る車が少なくないのです。それは男性、女性問わず、若い人、年配の人問わずです。余裕がないように感じられます。
トマス・ピケティが唱えた超格差社会の内実はどうか、まだよくわかりませんが、富は見えない手のどこかに集中し、貧困の拡大が構造的になっているように感じるのです。
他方で、リーマンショックで問題にされた金融工学手法や格付け評価の偽装は、アメリカの金融制度改革で改善されたのでしょうか。オバマ政権で次第に実効化されつつあったのが、トランプ政権による規制緩和(トランプが批判したウォール街の重鎮が政権に大勢入りましたね)で、雲散霧消になったように感じるのは私だけではないように思うのですが。
ともかく、現在のアメリカの驚異的な株高を支えているのは何でしょう。虚構のフィンティックが格付け偽装で支えられ、バブルがはじけたリーマンショックは改善されたと言えるのか、どうも検証されてないように思うのです。
現在のアメリカ株高の要因をきちんと論じている経済学者がいるのでしょうかね。アナリストでさえ、あまり論じていないように思うのですが、私の視野の狭さでわからないだけでしょうか。
トランプ政権の経済政策もあるのかわからない状態(たしかに法人税減税は成し遂げていますがどの程度の効果があるのか?)ですので、私にはアメリカも日本も上昇が止まらない株高で興奮冷めやらない印象ですが、砂上の楼閣のように見えるのです。
あるいはそれが21世紀の資本主義の実態で、ピケティさんが訴えた格差構造を具現化しているだけなのか、私にはわかりません。
前置きが長くなりましたが、昨夕の毎日記事<ヤングケアラ-高校生5%、家族をケア 介護や家事 大阪・歯科大調査>は、見えにくかった現実の隘路の一端を可視化してくれました。
反橋希美記者の取材で、<大阪の高校生の約20人に1人が、家族の介護や家事などの「ケア」を担っていることが、濱島淑恵・大阪歯科大准教授(社会福祉政策)らの研究グループによる調査で分かった。>とのこと。
結果は<別居中も含めた家族に介護や手伝い、精神的サポートを必要としている人がいる生徒は13%の664人で、約半数の325人が「自分がケアをしている」と回答。うちヤングケアラーとみなせるか議論のある、幼いきょうだいがいるという理由のみで「ケアをしている」と答えた生徒を除くと、全体の5%にあたる272人だった。>
で、ここで登場する<ヤングケアラー>という言葉初めて耳にしました。
解説では<一般社団法人日本ケアラー連盟(東京都)は「家族にケアを要する人がいる場合、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護などを行っている18歳未満の子」と定義。総務省の2012年の調査で30歳未満の介護者は約18万人だったが、10~20代が混在しており正確な数は分かっていない。>とのこと。
私は健全な家庭では、18歳未満の子どもも、<大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護など>の一部を分担することは望ましいと考えています。学業優先とか、クラブ活動優先といった一本調子の教育のあり方に疑問を抱いています。それは子どもの頃から、家事も仕事も家族構成員全体で担う体験が必要だと感じているからです。その意味で、祖父母の介護の手伝いをすることは、それだけで望ましくないとの立場には立ちません。
しかし、それが唯一経済的余裕がないために、学業などを犠牲にして、場合によっては登校を制限されたり、修学旅行など団体活動に参加できないといったことであれば、本末転倒と思っています。
家事は基本で、それを共同に担う意識を養うことは大切です。それは研究社になろうと、企業戦士になろうと、前者を犠牲にして顧みない生き方は望ましいとはいえないと考えているからです。まして女性という立場、妻、母、娘という立場の人に押しつけるようなことこそ問題です。
しかしながら、今回の調査で現れた結果は、より実態調査が必要ですが、健全な家庭環境作りとは言えないおそれが十分あります。その意味では
<ヤングケアラーへの先進的支援で知られる英国では各自治体に実態把握の義務を課し、学校にケアラーが相談できる教員を設置するなどしている。濱島准教授は「ケアは『お手伝い』として見過ごされがちだが、大人が担うレベルの役割を負わされて勉強や課外活動がままならない子もいる。まずは国による大規模な実態調査が必要だ」と話す。>という指摘は行政としては真剣に対応してもらいたいです。