たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

規制のあり方をめぐり その一例、CLTの将来性と林業の方向性

2017-01-15 | 農林業のあり方

170115 規制のあり方をめぐり その一例、CLTの将来性と林業の方向性

 

今朝は初冠雪といいたいところですが、当地はほんのわずかな薄雪。折角、年末にスノータイヤを(交換するつもりがタイヤ屋さんに勧められ)買い換えて準備万端なのですが、まったく雪道を走る機会なし。安心感を買っているようなものかもしれませんが。

 

さて、今朝の毎日、豊洲市場予定地での最終?モニタリング結果で、地下水から環境基準値を超える多量の有害物質が検出され、汚染箇所が72箇所という驚くべき報道がありました。私は、汚染発見の可能性が半分くらいあると考えていましたが、市場関係者にとっては残念な結果となりました。過去8回とまったく異なり多量の有害物質が検出された原因については、新たに作動始めた地下水位や水質を管理する地下水管理システムが影響した可能性と、今回担当したのはこれまでは別の分析会社であったことが影響した可能性とがしてきされています。

 

しかし、前者はそのメカニズムが明らかでないですし、後者は分析会社によって異なるとなると水質調査の客観性に疑問が生じ、変な憶測まで考えてしまいます。

 

翻って、この問題は、過去に東京都と30年近くさまざまな訴訟を経験してきた狭量な意識からいえば、規制側である東京都が自分の事業について適切に調査・分析し規制を実効あらしめるのは容易でないということの一例ではないかと考えています。水質、大気などの各種調査において、対象はその総体を捕捉することが容易ではありません。その検体採取の時期・方法・分析機器などによる差は無視できないと思います。

 

昔、東京都大気局局長を務められたHさんに話を伺ったことがありますが、たとえば東京都が事業主体の清掃工場の排煙は環境基準を上回ってばかりいて、当時の環境局が調査するときも事前連絡し、汚染度の低い状態になるよう燃焼管理すると、環境基準をクリアできるということがあったそうです。それで彼は抜き打ちで調査し、違反を摘発指導して、大きく改善させたと話していました。

 

豊洲問題は、まだ即断できませんが、規制のあり方を見直すいい機会ではないかと思います。むろん市場関係者の立場を考えれば、そんな悠長なことを言っておられないこともありますので、この問題は別途検討するとしても、基本的なあり方を検討する必要があると思います。

 

もう一つ、本題に入る前に、毎日の記事を取り上げます。<長野・軽井沢のスキーバス転落>について、県警が捜査を行っていましたが、ようやく「死亡した運転手の技術の未熟さが原因との見方を強め、バス会社側の教育・管理体制の甘さが事故を招いたと判断。社長ら2人の刑事責任を追及する方針を固め」たとのことです。

 

そもそも貸し切りバスをめぐる規制緩和が問題の発端かもしれません。2000年に緩和以降、運営会社が倍増。「価格競争が激化して安全面への出資を怠る業者も多く、運転手の労働条件にもしわ寄せが及んだとされています。」私も地方で仕事をしていると、バス運転者はもちろん、あらゆる形態の運転者の収入が激減する悪影響もあったと思います。さらに雇用条件が長時間労働など厳しくなったり、低賃金のため本来は禁止されているのに2つの会社の運送に従事するということがあると聞いています。

 

記事でも指摘されているように、貸し切りバスの事故で、これまで規制強化を図ってきていますが、基本的には緩和の際に安全対策について十分、国会等で議論されないまま、見切り発車したとしかいえません。

 

今回のバス事故で、会社の管理責任が問われるのは当然でしょうし、社長等が刑事責任を追及されるのも常識にかなうと思います。しかし、それでは後の祭りではないかということを政府・議会は真剣に考えて欲しいと思います。

 

たしかに昨年12月、改正道路運送法が施行され、貸し切りバスの事業許可に更新制を採用とか、仲介業者を登録制とし、指導・監督ができるようにするとか、直近1年間に乗務しなかった車種を運転する運転手には最低20時間の実技訓練を受けさせるようバス会社に義務づけるとか、一定の対策を講じたとはいいうるでしょう。しかし、この内容で、安全に貸し切りバスに乗ってよいか、不安がよぎります。

 

規制緩和は、自由競争を促進して、適正な低廉価格でのサービス提供を図ることが本来だと思います。しかし、運転手への適正賃金とかを前提に最低限度の適正な価格を保証しない中で、今後も低廉な価格提供のバス会社が横行する危険は残っているように思うのは私だけでしょうか。

 

ちょっと前置きを引きずりすぎました。本題に入ります。CLTCross Laminated Timber)の画期的な導入について、話したいと思います。これは規制緩和です。

 

国交省は、林野庁との連携で、昨年41日、CLTを用いた建築物の一般的な設計法などに関して、建築基準法に基づく告示を公表・施行しました。

 

今朝のNHKの番組「さきドリ」で、このCLTを活用している企業の取り組みを紹介していましたので、林業生産の将来への期待を含めて、取り上げようかと思ったわけです。実は今月末に、集成材(LWLaminated wood)のうち杉中断構造用集成材を一部使った大型建築物の見学を予定して、その違いを少し意識しておこうかと思い書いてみることにしました。

 

CLTといっても、何か分からない方もいるでしょう。最近は、意味不明なアルファベットを並べた言葉が氾濫していますが、今のところ集成材といったわかりやすいネーミングはないようで、国交省は直交集成材と呼称しています。その定義によると、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。 )をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材のことをいいます。」

 

言葉にするとあまりよく分からない気がしますが、通常の集成材だと、短い薄板をただ重ねるだけですが、CLTだと縦向きに並べた上に横向きに並べるという方法で順次積み重ねて、接着されたものです。

 

CLTの強度がコンクリート並みで、改良により耐火性・耐震性も高い評価を得て、これまでは個別に大臣認定を受けていたのを、今回の改正で、告示に基づく構造計算等をすれば、構造材として建築確認OKということで、非常に手続きが簡易化しコストダウンにも繋がるわけです。

 

これを政府に推進した中心人物の一人、岡山県真庭市で構造材、木質構造事業やバイオマスなどの事業を営む銘建工業株式会社の代表者、中島浩一郎氏が、NHKで取り上げられたわけです。

 

中島氏は、CLTを普及するため、いろいろな企画をするほか、CLTの大規模生産を可能にする工場を新築するなど、放置されている日本の森林を有効活用しつつ、地域の活性化を図ろうと努力されています。しかし、告示により大量の引き合いを期待したところ、残念ながら、工場は閑古鳥が鳴く状態です。コストがまだ引き合わないようです。通常の集成材と比べ、CLTは入れ違いに方向を変えて重ねるので、それだけで加工コストがかかるでしょう。それに加えて、耐震性や耐熱性などを強化するためにさらにコストがかかるでしょう。まだ大量生産による規模の利益を生み出す状態でない中では、コスト的には競争力が劣ることは否めないところです。

 

といって、中島氏は簡単にあきらめません。こんどは台湾に飛んで、プレゼンをしたところ、200人以上の参加者を得て、CLTの魅力に引き寄せられた台湾人が多数いました。彼らも日本文化と類似した面があり、木造建築というものに親近感があるのかもしれません。CLTの輸出といった方向を期待したいところです。

 

なお、以前にも紹介した森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、そのコストの問題をずばりついています。わが国の林業では丸太の搬出コスト自体が極めて高いことも踏まえて、到底他国のCLTや集成材のコスト競争に勝てないと悲観的です。

 

欧米ではCLTの歴史は古く、これを構造材として使用した高層建築物はかなり普及しているようです。わが国では集成材自体が構造材としてなかなか認知されず、高層建築物の例はまだわずかしかないように思います。

 

ただ、私自身は、もう20数年前、カナダでいくつか中高層の建築物が集成材かと思いますが、木造構造材で全部作られていたことに驚きました。さすが森の国と思いつつ、わが国ではなぜできないのかと不思議に思ったのです。カナダでも地震帯があるので、地震の危険性はあります(日本で感じるほどではありませんが)。

 

一方で、単にCLTや新種の集成材により、高層の木造建築物を普及することが主たる目的となると、それは住居のあり方として、どうかと感じたりもします。むしろ一定の大型建築物として、自由な形、たとえば曲線をつけたり、柔軟なデザインを実現しつつ、木質のよさを十分に感じさせ、それでいて、耐震性・耐火性・騒音遮断性など、多様な機能を発揮できるものとして活用する道をさらに研究していってもらいたいと思う次第です。と同時に、これこそ安全性ともかかわりますが、十分な実験検証を経て、告示など簡易な建築確認手続きが可能なように、林野庁と国交省が連携して勧めてもらいたいものです。さらに新たなドローンやGPSなどをより高次元に活用した森林管理とも融合するシステムが必要でしょう。

 

CLTや多くの集成材は、軽量で、組立が簡単、乾燥しているのでゆがみもなく、施工が短期間で熟練工がいなくてもいいので、扱いやすいわけで、これが日本のスギで代用というか、活用されれば、林業の活性化の一助になることでしょう。

 

集成材の大型建築物の見学をするので、その後関連として報告したいと思います。


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