たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

東芝迷走か? <東芝 WDを提訴 半導体売却、妨害差し止め請求>を読んで

2017-06-29 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

170629 東芝迷走か? <東芝 WDを提訴 半導体売却、妨害差し止め請求>を読んで

 

今朝は小糠雨でしょうか。それでも花たちはたっぷり水分で潤い輝いているように見えます。花に水をやっていると、ちょっとした気づきがあるんですね(無知丸出しですが)。たとえばサルビアの花。去年はたいていのサルビアは上に上にと赤い花びらを伸ばしてくれたのですね。ところが今年はわが家の庭で、その赤い花びらが見えないのです。他方で葉っぱがとっても大きくなっています。以前の3倍くらいはあるでしょうか。それでつい最近どうしたのかなと思いながら、葉っぱの中を覗いてみたら、花の蕾がちっちゃくなって葉っぱの中に埋もれているのです。それも横向きに傾いていていつでも落ちそうな印象。葉っぱに負けているんですね。

 

それで相当数の葉っぱを抜き取ったんです。すると数日もたたないうちに、赤い花が大きくなり、次は房をどんどん増やして、見事なほど大きくなったんです。一つの花でも葉っぱと花は生長を競い合っているんですね。うまく折り合いをつけるかというと、天の配分もあるでしょうし、人間の介入もあって、その競争力は影響を受けるんですね。決して仲良く手をつなぎ合って、ともに成長しようというのは「理想的な?」と思うのは人間の勝手であって、競い合う姿こそ自然の摂理ですか。

 

という人間も、渋沢栄一が「論語と算盤」で指摘しているように、私的欲望追求が資本主義経済で生きる自然な姿とみて、それでは西欧社会に見られるような弊害が生じ、論語の教えを学ぶ必要があるというのですね。日本資本主義の父とも、産業の父とも、いやそれ以上に社会事業家のリーダーでもある、渋沢の発言は重いですね。その解釈にはいろいろな見方があるとしても。

 

毎日朝刊は、第一面で<東芝WDを提訴 半導体売却、妨害差し止め請求>との見出しで、東芝のWD提訴を掲載しています。私は東芝の株式会社としての最低限の義務である株主総会に決算報告できないということも大変な事態です<総会では、株主から「危機感があるとは思えない」と厳しい声が飛んだ。>とのことですが、当然でしょう。

 

WDとの訴訟合戦をする対応を選んだことについてもはなはだ疑問を感じています。とても渋沢栄一が求めた企業家精神を真に育て身につけているといえるとはいえないと思うのです。

 

毎日記事から、今回の訴訟の経緯・内容の概要を見てみたいと思います。

 

<経営再建中の東芝は28日、半導体メモリー事業の売却を巡り、協業先の米半導体大手ウエスタン・デジタル(WD)が妨害行為をしているとして、妨害行為差し止めの仮処分と1200億円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴したと発表した。>これは<WDもこれまでに売却停止を米裁判所に申し立てており、それに事実上反訴した形。>

 

この訴訟合戦は弁護士の発想かどうか知りませんが、企業経営者として妥当な選択でしょうかね。

 

記事を見る限りは法的にも疑問を感じます。東芝の仮処分の申立理由は<東芝は、子会社「東芝メモリ」の売却手続きに関して「WDは看過できない妨害行為を継続的にしている」と主張。WDが「自社の同意なしに売却を進めるのは合弁契約違反だ」との立場を表明していることについて「虚偽の事実を第三者に告知または流布し、当社や東芝メモリの信用を毀損(きそん)した」と非難している。>

 

たしかにWDの売却停止申立理由が「自社の同意なしに売却を進めるのは合弁契約違反だ」ということで、それが虚偽であれば、東芝の主張はもっともと思います。

 

しかし、それなら合弁契約書の当該箇所を開示すればすむはずですね。一般公開が守秘義務違反というなら、株主総会で問題の条項くらい指摘して説明すべきではないでしょうか。

 

<さらに「WDが東芝や東芝メモリの機密情報を不正に取得、利用している」として、WD技術者による社内の情報網への通信アクセスを28日に遮断した。>となっていますが、これも仮処分申立の理由になっているのでしょうか。以前も四日市工場への出入りを同様の理由で禁止していませんでしたかね。それを再び工場立入を再開させていたとしたら、根拠を疑いますし、今回の仮処分理由になりうるか疑問です。

 

ところで、合弁企業については四半世紀以上前にM&Aとかを勉強しているとき、購入した本がまだ本棚に残っていたので少し読み返しました。東芝とWDとの間の合弁契約書がどうなっているのかわかりませんので、いろいろ議論しても机上の空論になりえます。ただ、東芝の半導体事業売却にはどうも釈然としないので、なにかその釈然としない理由が書いてあるかを見ましたが、やはり契約条項の内容や準拠法がどこか(どの国の法律に依拠するか)などわからないので、抽象論になりますね。

 

とはいえ、その本、『国際買収・合弁事業契約書マニュアル』は一般論としてですが、意味があると思っています。

 

ざっと目を通したんですが、「契約の譲渡」という項目があり、「合弁会社契約は、当事者の信頼関係に基づいて締結されるものであるから、合弁会社契約書も、合弁会社の株式と同様に、簡単に譲渡できないように取り決めておくのが原則である。」(157p)と書かれています。

 

当然でしょう。共同して事業を行うわけですから、一方が突然、相手と相談もなく別の第三者に株式を譲渡したり、契約上の地位を譲渡したりすることは、それこそ契約社会の信義に反しますし、渋沢の訴えた精神に悖ります。

 

むろん株式譲渡は自由であるのが株式会社制度の大原則ですから、合弁契約書にその点をどのように配慮しつつ記載されているか気になるところです。

 

なお、WDの裁判前の抗議文に関する記事<東芝の半導体事業売却手続きは「合弁契約に違反」、WDが抗議書簡>がありましたので、参考まで引用します。具体的な条項を指摘しての抗議ではないので、これだけだとなんともいえませんが、上記の一般論からはWDに同意権があるとの指摘は一般的に考えられる条項であり最もな見解と思っています。それに対し、東芝の反論というか、今回の仮処分申立で公表された理由は事実から目をそらしている印象です。

 

WD社のホームページを一応覗いてみたのですが、さほど詳細な情報がありませんでした。ただ、620日付けのプレスリリースでしょうか<WESTERN DIGITAL COMMENTS ON TOSHIBA’S ANNOUNCEMENT REGARDING FLASH JV INTERESTS>では、来る714日の米国裁判所での仮処分審尋手続きでの東芝の対応を期待していると自信満々にも見えます。

 

東芝の立場に立てば、会社の浮沈に関わる緊急事態なんだから、一緒に仲良くしてきたパートナーなんだから、大目に見てよというか、支援してよというのか、そんな気持ちかも知れませんが、監査法人との関係も含め、なんだかやり方が甘いというか、反省にたっていないというか、困ったものだと思うのです。渋沢先生ならなんと言うでしょう。やはり喝でしょうか。

 

東芝はあっち水は辛いよで、わが国での妨害禁止の仮処分という戦略をとったのでしょうか。ちゃんとした根拠があるのなら、米国裁判所で闘った方が世界的企業としては望まれると思うのですが。

 

いずれにしても2兆円に達するような半導体事業の売却をめぐる裁判ですから、訴訟費用も莫大なものでしょうね。こんなことやってていいのでしょうか。今日の株主総会の株主の気持ち、わかりますね。


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