たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

美徳と競争 <アクセス もぐもぐタイムのイチゴは「盗用」!? >などを読みながら

2019-04-09 | 農林業のあり方

190409 美徳と競争 <アクセス もぐもぐタイムのイチゴは「盗用」!? >などを読みながら

 

消費者というものは安くて美味しいものを求めるものですね。農産物の場合品種改良の競争が国内はもとより世界中で行われているのでしょう。

 

私のようにほどほどでよいと思って、適当な果物や野菜を食べる人ばかりではないのですね。知りませんでしたが、<昨年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪では、カーリング女子チームが栄養補給する「もぐもぐタイム」で食べた日本由来の韓国産イチゴ>が、「そうだね」のように人気沸騰したのでしょうか?いずれも私の関知しないところでした。前者は流行語になったのでしたか、後者は盗用問題で日韓軋轢に新たな火種になっているのでしょうか。

 

今朝の毎日記事<アクセスもぐもぐタイムのイチゴは「盗用」!? 「日本産」守れ 政府、海外無断栽培対策に本腰>は、後者の問題状況を取り扱っています。

 

ただ、イチゴの盗用問題と、ミカン登録出願受理による影響問題が並列的に書かれていましたので、イチゴ問題に対して、ミカン登録により問題が解決できるのかと一瞬思ってしまいましたが、ユポフ条約の解説部分を読むとそうではなさそうですね。

 

品種もいろいろな名前があってややこしやといった感じです。ともかく新品種のミカンについては、開発者の農研機構が国内では農水省の登録を受け、国外では韓国で登録出願するなど、韓国をはじめ諸外国の勝手な盗用を防ぐ手立てを取ってきたようです。

 

その結果、韓国農家は大打撃を受けることになったようです。

<韓国紙・中央日報電子版(日本語版)は昨年末、済州島の農家が日本で開発されたミカンの新品種「あすみ」と「みはや」を出荷できなくなったと報じた。みはやは2~3年前から人気の品種で、2品種は農家208軒が栽培し、出荷予定量は920トンに上った。>

 

この点、国内対応について次のような記事となっています。

<糖度が極めて高いあすみと、果汁が多いみはやは2014年、農林水産省から種苗法に基づく登録を受け、知的財産権の一種「育成者権」を取得した。開発期間10~20年の努力の結晶だ。国内では登録後30年間、種や苗を独占的に販売したり、他人に栽培を認める対価に利用料を徴収したりすることができる。>

 

他方で、海外については<開発した国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構)>が次のように対応したようです。

<韓国で品種保護を行う国立種子院に登録出願し、昨年1月に審査開始が公表されたためだ。審査が始まると正式登録の前でも権利が保護され、無断で栽培や販売ができなくなる。>その結果、<韓国の農家が育てた日本産新品種のミカンが出荷できなくなっている。>わけです。また、<農研機構は韓国のほか中国やカナダでも登録を出願した。>

 

これに対して、イチゴは盗用対策が条約の限界もあって、適切な対応策が採れなかったようです。

<日韓など75カ国・地域は「ユポフ条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)」で新品種保護のルールを定めているものの、当時の韓国ではイチゴは対象外。>となっています。

 

この点、農水省の<UPOV条約について>では、わが国は全植物を対象として、育成権者の及ぶ範囲も種苗、収穫物、特定の加工品とすべてにわたっていますが、締約国の多くは限定しているようです。韓国がイチゴを現在対象にしているかどうかははっきりしませんが、もし条約対象に含めているのであれば、イチゴの品種を登録出願しないのはどうしてかをも記事としてはフォローしてもらいたいですね。

 

ともかく韓国では(に限るとは思いませんが)、開発者が汗水たらして開発した農産物の品種を勝手に流用して大量に輸出して儲けているようです。

<韓国は農産品の輸出に力を入れており、特にアジア諸国へのイチゴの輸出が盛んだ。年間輸出量は4000トン程度と日本の889トン(17年)を大幅に上回るが、「章姫(あきひめ)」など日本産イチゴを勝手に交配した品種などが全栽培面積の9割以上を占めるという。>

 

<章姫は開発者の個人農家が1990年代、依頼されて韓国の生産者らに当人限りの利用を許可したが、現地で第三者に流出した。>上記の条約の対象外ということで、<開発者は泣き寝入りせざるを得なかった。農水省はイチゴの品種流出で年間44億円の輸出機会が奪われたと推計している。>というのです。

 

政府も手をこまねいてきたわけではないようです。

<政府は16年度から新品種の海外での登録出願の支援に乗り出した。代理人を通じた出願の費用は100万~200万円に上ることもあり、半額から全額を補助している。>

 

結局は、生産者の意識の問題もこういった盗用を許す要因かもしれません。

この点、<京理科大専門職大学院の生越(おごせ)由美教授(知的財産政策)>は、稲の大陸からの伝来から地域共同体での共有という美徳意識までとりあげています。そうかもしれません、農産物の品種開発者には知的財産権的な権利意識が強くなかった、みんなのためにという意識が強い方が少なくなかったのでしょうかね。

 

とはいえ、生越氏が指摘するように、<「改良品種を共有すれば地域が活性化して開発者の利益にもなった。一方、グローバル化した現代では海外での増殖を許し、競合相手を増やしてしまった」>わけですので、島国世界での論理はなかなかうまくいかないようです。

 

農産物の付加価値を輸出しようというのですから、その権利保護措置をしっかり講じていかないと、イチゴの二の舞になりますね。

 

なんてことはおそらく輸出を試みようとしている農家はすでに分かっていると思いますが、その方策を海外の個別事情に合わせて実効的に行ってきたかを改めて検証するいい契機かもしれません。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。


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