太った中年

日本男児たるもの

オバマ・ムソリーニ説

2008-12-21 | weblog

この国はどこへ行こうとしているのか 起訴休職外務事務官・佐藤優さん

 ◇「世直し暴力」防げ--佐藤優さん(48)

ぎろり。射抜くようなまなざしが、さらに鋭くなった。佐藤優さん(48)の逆鱗(げきりん)に触れてしまったらしい。東京・日比谷にあるレストランの一室。インタビューが始まって、まだ少ししかたっていなかった。

「あなたはプロフェッショナルな記者で、こっちだって命かけてやっている。根拠もないのに、印象論で来るのは極めて不まじめじゃないか。どう思います?」

激しい口調でたたみかけられ、思わずたじろいだ。

かつて「外務省のラスプーチン」の異名を取った外務官僚。最高裁へ上告中の現在は、抱えた連載が40本以上。原稿の量は月1000枚をくだらない。超売れっ子作家にして、「国策捜査」に異を唱える刑事被告人。そんな複雑な立場だが、「『右』と『左』の間を渡り歩いている」との誤解を招かないよう、細心の注意を払っている。

そんな心情を深く推し量ることもなく、「媒体によって何となく雰囲気が違うように見えるのですが……」などと、不用意な言葉を投げ掛けてしまったのだ。

佐藤さんは少し間を置き、落ち着いた口調で言った。「僕は右と左の両側から、日本がファシズムに陥る可能性を阻止しようと思って体を張っているつもりなんだ」。厳しく迫ってきたのは「お前も覚悟を持って仕事をしろよ」というメッセージなのだろう。

     ■

政治、経済から日常の生活まで、閉塞(へいそく)感や行き場のなさが日本を覆っている。そんな中、ゆがんだ歴史認識を披露した田母神俊雄・前航空幕僚長の懸賞論文問題や元厚生事務次官宅を舞台とした連続襲撃事件が続いた。

「田母神論文は誰もがクーデターを意識させられただろうし、元厚生次官を巡る事件は、初動の段階で『年金テロ』との見立てが言論空間に広がった。クーデターやテロが起こりかねない世の中だという不安が生じる一方で、それらによる世直しへの期待もわき起こる。二つの問題は、日本人の集合的無意識を大きく変えたと思います」

テロやクーデターは許してはならない。佐藤さんはその理由をこう考えている。

「国家とは合法的な暴力を独占する機関で、どんなテロもクーデターも、いずれは封じ込めてしまいます。でも、その過程で暴力性を高めるんです。国家すなわち官僚が、社会や国民に露骨な圧迫を加える状況を招く。我々は1930年代にそうした状況を経験しています」

佐藤さんが国家の持つ暴力性をはっきりと意識したのは、外務官僚として遂行した職務を巡り、逮捕、起訴されてからだった。鈴木宗男衆院議員と行動を共にしたための事件だった、との思いは消えない。だが、国家が不必要であるとは思わない。ソ連の国家崩壊による混乱をじかに見てきたからだ。

「国家は必要悪です。必要に力点を置くか、それとも悪に力点を置くかはその都度変わってくる。ただ、国家は常に統制を強化し、官僚のために動く危険性がある。そうならないよう、チェックし続けることが大切です」

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逮捕、起訴さえなければ、今なお外交の一線で活躍していたであろう佐藤さん。08年の世界情勢について尋ねると、「10年後になって、世界史の転換点と位置づけられるかもしれない」との答えが返ってきた。

まず気になったのは、アメリカの動向だ。「バラク・オバマ氏が今後、米国をファシズム国家に変ぼうさせる危険性がある」というのだ。米国のみならず、日本など世界各地で新たなリーダーとして拍手喝采(かっさい)を浴びるオバマ氏と、世界を第二次大戦に陥らせる遠因ともなったファシズム。どうにも結びつきづらい。

すると、佐藤さんは1920年代のイタリアを引き合いに出した。

「人種差別を伴うナチズムと違い、ファシズムはどの国でも出やすいんです。ベニト・ムソリーニは『イタリアを真剣に考え、能動的に行動するのがイタリア人』とけん伝し、ファシズム運動を始めた。オバマ氏の演説も、国民と指導部が一緒に変容していこう、と国民の能動性を強調する点で似通っている」

こうも言う。「リーマン・ブラザーズが破綻(はたん)し、もはや自由主義的な資本主義が発展する潜在的な可能性が失われたことは明らかです。かといって、社会主義革命を経て共産主義にとの処方せんもない。そこで、資本主義を前提に、国家機能を強化しながら社会問題を解決するため、ファシズムが台頭することはあり得ます。ちなみに僕の見立てでは、8月にグルジアと戦争状態になったロシアも危険です」

日米関係の今後が気になる。どう米国と向き合えばいいだろう。

「弱っているとはいえ、米国の力を過小評価してはいけません。オバマ氏は米国大統領であると同時に世界大統領。日本大統領とも言える。EU(欧州連合)にロシア、中国が加わっても、国力は米国の方が圧倒的に強い。まずはこうした冷徹な認識が必要でしょう。ブッシュ・小泉時代のような、なあなあの関係はもう終わり。米国の政権与党が代わるので、日米関係は仕切り直しです」

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ファシズムやテロ、クーデター……。戦前をほうふつとさせるキーワードを連発する佐藤さん。戦後63年がたち、新たな「戦前」が忍び寄っているのではないか。「国家機能を強化しなければとの意見では、与野党から国民まで一致するでしょう。でも、そのための方法が分からなくなっている。まず真剣に考えるべきは、テロやクーデターでの世直しを防ぐことです」

そのためには、過去を学ぶことが大切だと言う。

「急がば回れということで、まずは思想的な耐性をつけるべきでしょう。本をしっかり読む。戦前の歴史をきちんと勉強し、テロやクーデターについて『手段はよくないが動機はいい』という物語が作られた過程を見ておかなければならない」

佐藤さんは、言論の力こそがファシズムに対抗できると信じている。「活字はファシズムと相いれない要素が高いんですよね。映像や音は、受けた瞬間に嫌悪感であるとか好感が生じ、人を動員する。それに対し、活字は本や雑誌を開かなければ始まらない。そして一度頭に入った時に咀嚼(そしゃく)しなければいけない。このワンクッション、ワンテンポ遅れが大事なんですよ」

「ファシズムの入り口となるのは排外主義。例えば『沖縄は基地でカネをもらってごね得じゃないか』『ニートやフリーターは怠け者』といった、論理的でない言説はすぐに退けていかなければならない。日本がおかしくなったと後で振り返らないですむように、言論活動を続けたい」

「2週間前の風邪が抜けない」とせき込みつつ、2時間しゃべりっぱなしの佐藤さん。握手を交わすと、次の仕事に飛んでいった。

(以上、gooニュース 特集ワイドより無断転載)

上記のインタビュー記事もリチャード・クーの麻生救世主論と同類だろうか。イタリアのムソリーニを引き合いに出し、新しい米大統領オバマ(日本の大統領でもある、は言い得て妙)によって米国がファシズム化する危険があるというところは強引なコジツケのように思える。米国が北朝鮮のような国家になるとは俄かに信じがたい。ラスプーチン佐藤はキリスト教徒で尊王家、護憲派だという。なんか独特の世界観を持っていそうだ。