原崎沼(ばらさきぬま)は,山形県の内陸部,天童市にある小さな沼だ。
沼の周囲に整備された遊歩道をゆっくり歩いても,30分もあれば,一周できてしまうくらい。
そんな小さな沼だが,藩政時代から昭和40年代まで,鴨猟のための「原崎カモ組合」(⇒ 天童市HP)が組織されるなど,昔から,カモが多数飛来する沼として,知られていた。
この小さな沼に,多いときで,14,15万羽のカモがいたという。(数字は天童市HPより)
今季,11/7の伊豆沼のガンカモ生息調査で,うちカモ類が3万羽なので,14万羽以上って,眉唾レベルのすごい数字だ。
そういう沼なので,私も,若い頃から,何度もここに来て,カモ観察を楽しませてもらっていた。
結婚前の妻と探鳥デートもした場所だ。
そんな沼に,2020年10月から,沼の水を抜いて,山形県の防災工事が入り,工事が終わったのが2023年11月。(工期は正確でないかもしれない。)
天童市が「原崎の鴨棲息沼」として,天然記念物に指定している沼だが,地域住民を水害から守るための,やむを得ない工事だったようだ。
工事前もしばらく来ていなかったが,今回は,工事が終わった後にどうなったのか気になり,久しぶりにここに来てみた。
沼のほとりに立って,沼を一望すると,以前に比べると,青ざめるほど,カモの数は激減していた。
2〜300羽程度しかいなかったかもしれない。
工事の詳細は不明だが,3年間も水を抜いていたのであれば,こうなるのも当然。
種類も少なく,以前は12種類を数えたというカモの種類も,今回確認できたのは,マガモ,コガモ,ホシハジロ,カルガモの4種類のみ。
あとは,カイツブリ。
種類は,今季も,これから増える可能性があるが,数が復活するまでには,何年も,かかるかもしれない。
ところが,この日,思いがけない鳥と出会った。
岸辺に,ウが1羽佇んでいたので,内陸だからカワウだろうな,と,何気なく見たら,
...,ん!?
...,ん!?
これは,どう見ても,ウミウ。
ここは,地図を見ると,太平洋と日本海のほぼ中間点の内陸部。
中間点,というと,言い換えれば,海から最も遠いところだ。
直線距離だと,仙台港まで約55km,酒田港まで約80kmある。
直線距離だと,仙台港まで約55km,酒田港まで約80kmある。
そうか,ここまでくるのか,ウミウは。
そして,こちらも,見つけてから,一瞬,目を疑った。
アカエリカイツブリだ。
繁殖・子育ては,淡水の湖沼で行うが,それは,北海道以北の繁殖地の話。
冬に,南下して,越冬するのは,沿岸部,海であるのが普通。... と,思っていた。
なぜここに?
ここで繁殖して,そのまま居残った個体であれば,すごいことだが,ニュースにもなっていないので,それはないだろう。
南に移動中,たまたま,ここに寄ったものだろうか。
いや,もしかすると,ここで越冬する可能性もある。
ここは,たぶん凍結しないので,海にこだわる必要はない。
水を抜いた,とはいえ,ヘラブナ釣りの釣り人が何人も入っていたし,カイツブリやカワセミもいたので,餌となる魚も,いなくなったわけではない。
いずれ,ウミウも,アカエリカイツブリも,海がお似合いと思っていた鳥が,海から最も遠い内陸部にいた,ってこと。
なかなかないこの出会い,どうか,この沼にとって,吉兆であってほしい。
なお,私が通っていたず〜っと前に比べると,周回の遊歩道の幅が広がり,草刈りもされ,きちんと整備され,歩きやすくなっていた。
アジサイが遊歩道脇に植えられるなど,普通の人も散策に訪れやすくなったと思う。
依然として,良い探鳥地であることに変わりない思うが,現在の,唯一,最大の弱点が,鳥影に乏しいこと。
復活を祈る。
(2024/11/24 ウミウ,アカエリカイツブリ)