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フランス同時多発テロについて

2015-11-15 22:31:14 | 政治・経済
 フランスで同時多発テロが発生した。
 ISが関与しているとみられ、犠牲者は130名近くにのぼるという。
 もちろん、いかなる理由があれ、このようなテロ行為が許されないことは言をまたない。凶行を強く批判する。


 同時に、このような惨事がなぜ起きたのかということも考えなければならない。
 
 今回の同時多発テロの背景に、フランスの中東やアフリカに対する武力介入政策があるといわれる。
 昨年からフランスは、ISへの攻撃として、イラクやシリアへの空爆を行ってきた。しかしそのことが、シャルリ・エブド事件や今回のテロにつながっていると指摘される。現在の状況は、報復が新たな報復を呼ぶという連鎖に陥っていないか。フランスの武力介入は、中東やアフリカ系の移民の一部に不快感を与えていて、そのことがフランス国内にテロへの協力者を生むことにもつながっているという。まさに、武力行使が新たな憎悪を生み出し、みずからと周辺地域をより危険にしているのではないか。

 そして今回の件は、“テロとの戦い”の不毛さもあきらかにしている。
 シャルリ・エブド事件以来、フランスはテロに対して最高レベルの警戒態勢をとってきた。にもかかわらず、これだけのテロが発生したのである。
 これは、テロリストが本気でテロを起こそうと思えば、それを防ぐのには限界があるということを意味している。人が集まる施設すべてに最高レベルの警備体制を施すことなど不可能だ。そしてテロリストは、警備の甘い対象を狙う。つまり、このようなテロを防ぐことは難しい。完全に防ごうと思えば、そうした施設の運用自体を停止するしかないということになるだろうが、そんなことをすれば社会活動は停滞する。商業施設やスタジアム、コンサートホールなどが軒並み使用できないということになれば、市民は“戦時中”のような生活を強いられ、経済も停滞し、それはそれで、テロリストの目論見が成功したことになってしまう。


 テロに屈しないというのは当然のこととしても、武力行使するということがはたして本当にテロを抑止することにつながるのだろうか。いま起きている現実が示す答は“ノー”だろう。
 武力によって、本当に事態はよくなるのか。そもそも、報復のリスクを云々する以前に、フランスが行っている空爆は本当に中東にとってよいことなのか。それは正義といえるのか。そういうことを、真剣に考えなければならない。


追記
 今回の事件は、世界のある種の分断を映し出してもいる。
 たとえば、パリでの事件が起きる2日ほど前に、レバノンの首都ベイルートで連続爆破事件が発生し、43人が死亡するというテロがあったが、その件は今回の同時多発テロほど大きく報道されていただろうか。おそらくは、新聞なら国際面の片隅に載っているぐらいで、テレビのニュースならまったく報道されないか、ニュースフラッシュの一つとして扱われるぐらいではないだろうか。フランスでテロが起きれば各国の首脳が声明を出して連帯を表明するのに、レバノンでテロが起きてもそんなことにはならない――こういうアンバランスも、今回の件で指摘されているところである。
 テレビの編成担当者にいわせれば、ニュースで取り上げないのは、おそらく「ニュースバリューがないから」ということだろう。レバノンでテロが起きるのは“日常”的なことであり、日常的なことはニュースにならない。だから、ことさらにとりあげない。そういう判断基準である。
 そのような無関心が、暴力の連鎖を放置することにつながっているともいえるだろう。本気で事態を改善しようと思うなら、空爆などしたところで意味がないことはもうはっきりしているのだから、なにか別のもっと実効性のある方法をとらなければならないのだ。各国首脳が本気で考えていないから、空爆という安直で無意味な手段に走り、かえって事態を悪化させているのである。


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