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民進・枝野幹事長「努力が報われない人を支えるのも政治」

2016-06-18 17:18:32 | 政治
 野党議員の活動シリーズとして、今回は民進党枝野氏の発言を紹介する。名古屋市での街頭演説での発言である(引用は朝日新聞電子版より)
 枝野氏といえば、東日本大震災当時のことで今あれこれいわれているが、本人は否定しているし、確定的なことはいまの段階で何もいえないので、今はそのことはとりあえずおいておく。


《愛知のスーパースター、イチロー選手が、日米通算のヒット数でピート・ローズを追い抜いた。喜びたいし、愛知のみなさんにお祝い申し上げたいと思っています。
 イチロー選手はご自身で能力を最大限生かし、さまざまな努力を積み重ねられ、偉業を達成されたのだと思います。政治はこうした方を、しっかりと評価をさせていただき、表彰させていただく。こういったことは大変大事なこと。
 気を付けなければならないのは、世の中には、イチロー選手のように持っている才能、能力を、努力して最大限、生かせる方ばかりではない、ということであります。例えばケガをして、スポーツ選手でも、能力が発揮できなかった方もいらっしゃいます。ましてや普通の国民生活においては、努力したくてもできない、あるいは努力しても運悪く報われない。そういう立場の人がたくさんいます。こういう人たちを支えていく、これが私たちの考える政治の役割。》


 わざわざイチローの名前を出してきたのは、少しでも一般受けを狙ってということだろう。政治利用、便乗といってしまえばそれまでだが、しかしここでの指摘は重要である。
 もちろん、努力した人間が報われるということは重要だが、そのことを過度に強調すると、社会は弱肉強食に陥ってしまう。そうならないために、社会保障がしっかりしていなければならない。

 しかるに、安倍政権の政策は、弱肉強食のほうをむいている。
 そして問題なのは、経済社会における弱肉強食は、実力のある人間が勝つわけでもないということだ。
 野球の記録ならば、それこそ今回のイチロー選手のように、もともとの才覚にくわえて、たゆまぬ努力をすることによって実力で成し遂げた栄冠といえるだろう。それがはっきり数字で示されているので、疑う余地はない(もっとも、記録を塗り替えられたピート・ローズ氏は「日本の野球はメジャーリーグと対等ではない。日米で合算するのはおかしい」と不満を洩らしているらしいが)。
 ところが、経済では必ずしもそうではない。
 森永卓郎氏が著書『庶民は知らないアベノリスクの真実』(角川SSC新書)で指摘しているが、社会における競争は、しばしば公正ではなく、権力者、有力者とコネのある人間が有利なものになってしまう。「自由競争」といえば聞こえはいいが、現実社会においてのそれは、権力者とコネのある人間が得をするシステムにすぎず、それに比べればかつての年功序列のほうがはるかに公正である――そういう視点で、森永氏は安倍政権の成長戦略を批判している(※)。結局、安倍政権のもとでは、政権とつながりのある一部の大企業だけが利益を得て、そうでない大多数はむしろ生活水準が低下し、格差が拡大していっているだけなのではないか。これは、枝野氏の論旨とは少しずれてしまうかもれないが、私としては強調しておきたいところだ。


※……ただし、森永氏は、少なくともこの著書の段階では、いわゆる“3本の矢”のうちの最初の2本(金融緩和と財政出動)は肯定的に評価している。彼によれば、慢性的なデフレは日銀に大きな責任があり、アベノミクスの異次元の金融緩和によって期待インフレ率が高まればそれが民間投資の呼び水となってデフレから脱却できるというのだ。その点については私は賛成できない部分も多々ある(現に、そんなふうにはなっていない。たびたび書いてきたが、森永氏のような主張が正しいのなら、マイナス金利を導入する必要はなかったはずである)のだが、このように、アベノミクスの一部を評価する論者でさえその成長戦略を批判しているということはいえるだろう。


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