命のカウントダウン(健康余命3605日)

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今日と同じ明日は来ない

2023-06-05 23:25:57 | 在宅医療
私達は何時か死を迎えます。
でも、それを実感することなく、今日と同じ明日が来ると思って毎日生き続けています。
今日と同じ明日が来ないかもしれませんよ
と、言われたらどうなるのか?

貴方は末期がんです。
この夏を超えるのは難しいです
そう、宣告された40代後半の患者さんに対する初回訪問診療に今夜行ってきました。
○○癌、両側肺多発転移、癌生胸水、癌性リンパ管症 という病名です。
彼女は現在元気です。
癌性リンパ管症で、息苦しくなって5月末に入院、そして、酸素療法を開始、病状が落ち着いたので、本日夕方に退院されて自宅療養が始まりました。

酸素を吸う事は在宅医療でも可能です。在宅酸素療法と言いますが、多くの場合は酸素濃縮装置を使います。液体酸素を使う事もありますが、私は未だ一件しか経験したことがありません。例外的です。

そしていずれの場合にも、外出などの場合には酸素ボンベを使用します。
携帯型の酸素濃縮装置や携帯型の液体酸素装置を使う事もありますが、それも例外的な事です。
この患者さんは、自宅では酸素濃縮装置、外出時には酸素ボンベという一般的な装置を使用することになりました。

呼吸不全を訴えて入院する前の5月中旬とは違う自分になってしまっている訳です。退院前に入院中の主治医から「今年の夏を超すのは難しい」と言われたそうです。今日のあなたが、明日もある保証は無いよと言われたわけです。
相当に動揺されていました。

人は皆、今日と同じ明日が来るものと何の疑問も無く思っています。それが崩れるから、貴方ガンですよ。と言われると、皆さん全員「俺が私がガン?ガーン」と判で押したような漫画チックな衝撃を受けるのです。かくいう私も、そう言われたら、同じような反応を示すだろうと想像します。

今日現在、彼女は酸素さえ少量(1.5L/min)吸えば通常の生活が可能です。「私は元気です。」と、彼女は強調します。確かに元気なのですよ。日常生活、酸素さえ吸っていたら、何の問題も無いです。ですが、明日は分からないのです。だから、自動車の運転も止められました。日常生活に色々と制限が掛かって来ています。最大の制限は時間的スパンです。何しろ、この夏は越せない可能性が高いと言われたのですから。

しかし、医者の言う予後は、当たらないことも多いです。貴方が予後を宣告せざるを得ない立場の医者だったらと考えてみてください

その立場になって、この患者さん、今後2か月から6か月くらいで最期を迎えられそうだなと予想したとします(相当に大雑把ですが、そんなものです)。貴方は、患者さん、患者さん家族にどう伝えますか?正直に2か月から6か月くらいかなぁ。よくわからないけれど と、伝えるのか、 短ければ二か月と言う事もあります。と伝えるのか、4か月プラスマイナス2か月程度だと推定されますと伝えるのか。いずれも嘘は言っていないけれど、言われた側の印象は大いに違いますよね。

そして、短ければ2か月と言われて2か月で亡くなった場合と、4か月プラスマイナス2か月と言われて2か月で亡くなった時のご家族の印象はどうでしょうか?
医者が予後を短めにいうだろうなぁとは想像できませんか?

まあ、そんな事もあって、医者の言う予後、ご本人は気にしない方が良いです。医者は、後で責められないような事しか言わないと思ってください。

私98歳の胃癌患者さんを紹介され、予後3か月以内ですから と言う言葉を信じて、半年後にスキーの長期旅行に行く予定があるにもかかわらず、引き受けてしまったことがあります。その患者さん、それから5年、103歳まで生きられました。末期胃癌だった筈なのに、癌、いつの間にか消えてました。亡くなったのは、癌が原因ではなくて、老衰でした。不思議な事もあるのです。
私、誤診では無かったのかと前医のカルテを確かめに行きました。胃カメラの所見では確かに進行胃癌がありました。それが何故か100歳の時に撮ったCTでは消えていました。

とは言え、医師が予後何か月程度と言うのは、同じがんの同時期の方がどれくらい生きられたかという統計に基づいているので、多くの場合は、予想に近い形に病態も変化していきます。・・・しかし予想外の事も少数ですが確かにあるのです。ですから、予想外の事を信じるしかないがん末期と診断された患者さんは、予想外の事が起こり得る事を願ってください。

ただ、何度も言いますが、人は必ず死にます。早いか遅いかだけの違いです。でもその違い、大きいのですよね。40代で死に直面するのは辛いと思います。私、69歳ですが、この夏超えるのは難しいですよと言われたら超動揺するに決まってます。私、この歳でも尚、今日と同じ明日が来ると何の疑問も無く思っていますから。

今日と同じ明日が来るだろうと思える日がいつまで続くのか・・・・
いつか死ぬのに、いつか死ぬことが実感できていない私です。
想像力が欠如しているのか、その方向への想像力が働かないことが生物としての本能なのか・・・・これまで皆さんよりも多分圧倒的多くの「死」に遭遇してきた私なのですが・・・・自分自身の「死」は想像できないのでございます。