6月12日に「魔法使いになった話」という、肺癌末期の患者さんにモルヒネ+ステロイドの持続皮下注を行ったら、それまで苦痛に苦しんでおられた患者さんが一気に楽になって感謝されたと言う話をしました。
また、6月19日には「転んで肺がパンク」
という話をして、「肺が縮んでいるなぁ」と言っただけで入院させなかった整形外科医を責める様な事を言ってしまったのですが・・・・
その2つの話の後日談です。まず、肺がパンクしたほうの話です。整形外科の先生は、患者さんに「気胸だから、入院するか?」と、言われたのだそうです。しかし、その方に「入院しずらい事情」があるのをご存じでしたので、「自覚症状もないから、様子を見ようか」と、言われたのだそうです。その判断が正しいのかどうかは別にして、納得できました。翌日に当院に来院された時も呼吸困難感など自覚症状皆無でしたから、症状が出るまで様子を見ようかと言われたとしても・・・・無理ないかなぁと思いました。
呼吸困難感というのは、あくまでも自覚症状なので、その方の病状と結構乖離することが多いです。物理的には全く問題が無くても呼吸困難感は強かったり、逆に酸素と二酸化炭素の圧力が逆転するような重症の病態でも、平気で歩いて来院される患者さんもおられます。だから、まぁ、自覚症状をあてにしないほうが良いのかもしれませんが・・・
こちらの患者さんは、先日元気に退院され、笑顔で退院報告に立ち寄っていただきました。
さて、魔法使いになった話の後日談です。肺癌末期で呼吸困難感著明、喀血、血痰著明、咳が止まらないと聞いたので、塩酸モルヒネ、ステロイドの持続皮下注入を施行、効を奏して、患者さんには大いに感謝されたのですが・・・・
何故、これまで、他の医師達はこれをしなかったのだろうと思いますよね!!それで、情報を集めました。1年以上、医療から離れておられたようです。そこを無理を言って、以前の情報をいただきました。そして、驚愕の事実が判明しました。
何故、これまで、他の医師達はこれをしなかったのだろうと思いますよね!!それで、情報を集めました。1年以上、医療から離れておられたようです。そこを無理を言って、以前の情報をいただきました。そして、驚愕の事実が判明しました。
なんと、患者さんは肺癌末期では無かったようです。
何と何と、以前の病院での診断は、良性腫瘍。chronic expanding hematoma疑いだそうです。
昔は、呼吸器内科医だったこともあったような私ですが・・・・そんなの知らないです。
http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/004040332j.pdf
http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/004040332j.pdf
呼吸困難、血痰を伴う事もあるようです。肺癌末期と症状では見分け付かないですね。
それをわかっておられたので、良性腫瘍なので、麻薬の使用をされていなかったようです。良性腫瘍でも、呼吸困難が酷ければ、塩酸モルヒネの使用は間違ってはいませんけれど・・・
私は良性腫瘍という事を考えず、肺癌だとばかり思いこんで使ったのですから・・・・責められても仕方がないです。
医療の世界、難しいですねぇ。何が正解なのか・・・・
驚きの展開ですね。
chronic expanding hematoma
知りませんでした。勉強になりました。
その方は手術困難例か手術拒否なのでしょうか。
疑問に思うのですが、訪問看護師から肺癌末期の患者と聞かれたそうですが、訪問看護指示書はどこから出てるのでしょう?訪問看護指示書に肺癌末期と書いてあるから看護師もそう信じているのですよね?
癌末期なら医療保険で訪問看護が入れますが、そうでないなら介護保険になってしまいますよね。肺癌末期にしておいた方が患者にとっても医療提供側にとっても都合がよいわけですが…。おいくつの方か分かりませんが、余命が短いならそのままでいいかもしれませんが、肺癌末期として医療保険で訪問看護が入っているのに長生きされると保険上まずいのでは…と
ちょっとモヤモヤしてしまいました。
この患者さんは91歳で、80歳を超えてこの腫瘍が見つかり、体力的に手術不可能とされたそうです。その時は、その後10年もこの疾患に苦しめられるとは思っておられなかったのでしょうね。
訪問看護指示書には、肺腫瘍と書いてありまして、それを確かに末期状態でしたから、訪問看護師が「肺癌末期状態です」と私に伝えたようです。そして私もそれをすぐに信じたので、「それなら介護保険じゃなくて医療保険で連日入ってよ!」と、言ったりして・・・
患者さんは、既にお亡くなりになって、先日ご家族が「本人が大変感謝していました。」とご挨拶に来ていただきました。
もやもやしていただいてどうもすみません。すっきりしない結果ですよね。
2年以上受診されていなかった大病院にも資料をいただいたのですが、そこの診断は、左肺膿胸 でした。患者さん、半世紀以上前に、肺結核の既往もあるようです。
呼吸器症状、胸痛がひどくて(血痰、咳、呼吸困難、前胸部痛など)、訪問看護師が、ご家族に強く(強引に)勧めて、主治医をチェンジしたようです。それで、思わず強めの病名(肺癌末期)と言ったのでしょうねぇ
詳細なお返事ありがとうございました。
状況がよく分かりました。
肺腫瘍として介護保険だったのですね。肺癌末期と聞いたら「医療で毎日入ってよ」ってなりますよね。
やっかいな症例ですが、91歳まで生きられて最期は先生の手で在宅緩和ケアしてもらえて、結果的に良かったですね。
内科じゃない医師の指示では心もとなくて、訪問看護師も見るに見かねてcamper先生にヘルプを頼んだのですね。訪問看護師にとっても患者さんにとっても先生は救世主のような存在ですね✨
2年前の大病院の主治医に電話までして病状を聞き出すとは素晴らしいです。
もやもやがスッキリしました。
ありがとうございます😊
ハラハラしましたが、前在宅医師も、快く主治医を交代してくれましたし、大病院の前主治医も、印象に残る症例だったのでしょうねぇ、何の利益にもならないのに電話でも丁寧に対応してくれましたし、詳細な紹介状も送って来てくれました。明日、この2人に事後報告を書いて一件落着です。