無人の野菜スタンドの囲いの板に、貼り紙がありました。
「最近、売れた野菜の数と箱の中のお金が合わないことが増えています。
お間違えのないように、よく金額を確かめてお入れください」
やっぱりここでも・・・と、暗い気持ちになりました。
野菜スタンドの売り方はどこでも同じようなものだと思います。
簡単な棚の上に、野菜を並べて売っているのです。
野菜は農家が自家用に作っておられるもので、余る分をそこで売っているのです。
棚の隅に鍵のかかった小さな箱があって、そこに買った額の小銭を投入する仕組みです。
野菜は、一束や一袋になっていて、だいたい100円から300円の値段がついています。
品数が多い時には、500円~800円と買うこともあるでしょう。
それにしても、間違う額ではありません。
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野菜スタンドを覗いてみようと思うのは、無人だからではありません。
採りたての新鮮な野菜が売られているからです。どれほど新鮮かは、じっさいに使ってみるとわかります。
採りたて野菜には、いのちがやどっています。その手触り、舌触り、刻んで、煮て、焼いて、炒めて
食べて、飲み込んだ後まで、満足があるのです。
だから、春になって、野菜スタンドが開くと行ってみようと思うのです。
労働しなかったのに、種蒔きもしなかったのに、100円で美味しいものが手に入るのです。
その100円をごまかす人がいる・・・!
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貼り紙は、せっかくの野菜を台無しにしています。
盗んでいった人は、100円を盗んだのではないですね。
そこで楽しく買う人の心に影を落とさせ、ごちそうを手に入れたのに暗い気持ちにさせます。
まして、やっと収穫して、きれいに洗って、束に作って、売る人たちの善意を引き落とすのです。
盗む人は100円を盗んでいるだけではないのです。
神と人の愛の結晶である宝物を盗んでいる、と思うのですが。
「盗んではならない」
(旧約聖書・出エジプト記20章15節)
