不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

周囲を巻き込む『いい人』の戦術

2018-09-04 08:33:06 | 日記
夏休みが始まって間もない頃、義母の義姉、つまり夫の伯母から電話がかかってきました。

「Hちゃん(義母のこと)が今度入院するんだって」
「えっ、どうしてですか」
「心臓の具合が悪いんだって。
あなたには言わないでって口止めされてたんだけど、黙っていられないわ」

伯母の口ぶりには非難の色が混じっていました。
嫁に遠慮して、入院のことも打ち明けられない義妹に同情しているのでしょう。

義母が駆け落ちして東京に出てくる前にこの伯母は東京に出てきていて、
若い頃から協力し合って生きてきたので、2人はとても仲がいいのです。

口止めしたというのも、必ず伯母がしゃべると見越してのことでしょう。
本当は息子夫婦に言いたいけれど言えない、という気持ちを、伯母が見抜くと分かっているのです。
そのくらい2人はツーカーの仲なのです。

私はちょっとカチンと来ました。

あれだけ怒鳴れば気まずくなるのは当然ではありませんか。
自分で原因を作っておいて、事情を知らない伯母にはまるで私が薄情な人間のように印象付けて同情を買うなんて。

それでも入院となれば放っておけません。夫が電話して聞いたところによると、
以前から気になっていた不整脈の検査をしてペースメーカーを着ける手術だとのこと。

ちょうど土曜日ということで、夫が子供2人を連れて入院の手伝いをすることになりました。
私は仕事の関係で予定が入っていたので、電話でお見舞いを述べただけにとどめて、当日は夫に任せることにしました。

入院して数日後、義母から電話がかかってきました。
「今からあんたの所に、病院の人から電話がかかってくるけどね」
一方的にしゃべり始めた義母は、私が一言も言わないうちからケンカ腰でした。

「あんたが口の利き方を知らないっていうことは、病院の人にもよく言ってあるから。
電話がかかってきたら、『お世話になります』くらいは言うんだよ」

その程度の挨拶くらい、言われなくても私にもできます。
入院当日に駆けつけなかったことを恨んでいるのでしょうか。
私はまたカチンと来ましたが、義母が最初から興奮しているようだったので、
「わかりました」
と言って電話を切りました。

義母の言ったとおり、ほどなくして病院から電話がかかってきました。
「K病院ですけど、Hさんのご家族の方ですか」

その瞬間、私はたじろぎました。病院スタッフの語調が、隠しようもない敵意にあふれていたからです。
『あんたが口の利き方を知らないっていうことは、病院の人にもよく言ってあるから』。
さっきの義母の言葉が思い浮かびました。

「はい、お世話になっております」
私は緊張して丁寧に答えました。