帰り際に私を呼び止めた同僚の重要な話とは、なんとパート仲間の陰口でした。
「私は何の気なしに言っただけなのに、悪口って取られるとは思わなかったわ。
これがヒラタさんとかだったら、『何よヨシちゃん、悪口?』って冗談ぽく言ってきて、
私も『何言ってんのよ悪口なんかじゃないわよ』って返して、笑って終わりよ。
なのにカドタさんときたら『何それ悪口?』って、こうだもの」
「はあ」
私には大差ないように思えますが……。
ヨシカワさんに直接言わないでハシグチさんに言ったのが気にくわないようです。
でもそれはヨシカワさんがカドタさんに直接言わなかったからです。
カドタさんが悪いというよりは、陰で噂したヨシカワさんか、告げ口したハシグチさんに原因があると思うのですが。
「カドタさんって、前の職場も男性の上司とケンカして辞めたって言ってたし、言葉がきついのよね」
「そうなんですか」
「あ、聞いてない?よくしゃべってるのに」
「ほぼ仕事の話しかしませんよ」
私はあほらしくなってきました。こんな遅い時刻に一家の主婦をそんな話のためにわざわざ引き留めるとは。
「とにかく私、カドタさんってどうしてもダメなんだわ。女の人をこんなに嫌うことって、私はめったにないんだけど」
さっきうっかりもらってしまったチョコパンで胸やけがしてきました。
『いい人』の親切を受け取ったら、次に差し出されるモノも受け取らなければならなくなると、
いやというほど身に染みていたはずなのに……。
私は図らずもまた『いい人』の術中にはまっていたというわけです。
ここで調子を合わせるとあとでどんな形でカドタさんの耳に入るかわからないので、私は黙って聞いていました。
私はカドタさんに何の恨みもないのです。
もちろん反論もしませんでした。ヨシカワさんを怒らせたところで何の得にもなりません。
「ところでNさんって派遣会社はどこ?」
早く終わらないかな、と思っていると、話の方向が変わって私はホッとしました。
「**です」
「あら、私と同じ!」
ヨシカワさんはパッと顔を輝かせました。
「ほら、私、サキサカさんと同時に入ったじゃないですか」
サキサカさんは同じ派遣会社で、2週間ほど前に辞めた人です。
ヨシカワさんは別の派遣先でサキサカさんと親しかったそうで、ヨシカワさんをこの職場に誘ったのもサキサカさんでした。
私とサキサカさんが同時に入ったことは、ヨシカワさんも知っているはずなのですが。
「やっぱり、派遣会社ごとの派閥もあるからね……」
意味ありげに言葉を切って、ヨシカワさんは私の顔をちらりと見ました。
「私は何の気なしに言っただけなのに、悪口って取られるとは思わなかったわ。
これがヒラタさんとかだったら、『何よヨシちゃん、悪口?』って冗談ぽく言ってきて、
私も『何言ってんのよ悪口なんかじゃないわよ』って返して、笑って終わりよ。
なのにカドタさんときたら『何それ悪口?』って、こうだもの」
「はあ」
私には大差ないように思えますが……。
ヨシカワさんに直接言わないでハシグチさんに言ったのが気にくわないようです。
でもそれはヨシカワさんがカドタさんに直接言わなかったからです。
カドタさんが悪いというよりは、陰で噂したヨシカワさんか、告げ口したハシグチさんに原因があると思うのですが。
「カドタさんって、前の職場も男性の上司とケンカして辞めたって言ってたし、言葉がきついのよね」
「そうなんですか」
「あ、聞いてない?よくしゃべってるのに」
「ほぼ仕事の話しかしませんよ」
私はあほらしくなってきました。こんな遅い時刻に一家の主婦をそんな話のためにわざわざ引き留めるとは。
「とにかく私、カドタさんってどうしてもダメなんだわ。女の人をこんなに嫌うことって、私はめったにないんだけど」
さっきうっかりもらってしまったチョコパンで胸やけがしてきました。
『いい人』の親切を受け取ったら、次に差し出されるモノも受け取らなければならなくなると、
いやというほど身に染みていたはずなのに……。
私は図らずもまた『いい人』の術中にはまっていたというわけです。
ここで調子を合わせるとあとでどんな形でカドタさんの耳に入るかわからないので、私は黙って聞いていました。
私はカドタさんに何の恨みもないのです。
もちろん反論もしませんでした。ヨシカワさんを怒らせたところで何の得にもなりません。
「ところでNさんって派遣会社はどこ?」
早く終わらないかな、と思っていると、話の方向が変わって私はホッとしました。
「**です」
「あら、私と同じ!」
ヨシカワさんはパッと顔を輝かせました。
「ほら、私、サキサカさんと同時に入ったじゃないですか」
サキサカさんは同じ派遣会社で、2週間ほど前に辞めた人です。
ヨシカワさんは別の派遣先でサキサカさんと親しかったそうで、ヨシカワさんをこの職場に誘ったのもサキサカさんでした。
私とサキサカさんが同時に入ったことは、ヨシカワさんも知っているはずなのですが。
「やっぱり、派遣会社ごとの派閥もあるからね……」
意味ありげに言葉を切って、ヨシカワさんは私の顔をちらりと見ました。