
やりましょうよ〜。
そういってT先生は
ムギュッとわたしの肘のあたりを掴んだ。
あ、懐かしいな、これ。
まだ駆け出しの営業ちゃんの頃
契約したばっかりのT先生が
勉強ちゃんとしてから半年後にオープンしたい
とおっしゃった時
刹那浮かんだのは般若のようなボスの顔で
いやいやいや、
一年で一番立ち上げに適しているのは
この夏休みですから
と説得し
(それは事実ではあるのだ、もちろん)
じゃあ、もしいっぱい来ちゃったら
手伝ってくださいね、とムギュッとされて
もちろん行きます、と請け負い
そして本当に大爆発した体験会
約束通りにわたしは駆けつけ
T先生はその夏の新人賞を取ったのだった。
そんな記憶が蘇り、ふと現実に戻ると
そこは関内のおしゃれなフォトバー
いつの間にかここの展示の常連となったT先生と一緒に
カウンターの中でオーナーもニコニコして
ぜひどうぞ、なんて言ってくださる。
そうか、これは、やってみるタイミングなのかな。
展示は2回目、とはいえ前回は師匠のマッキーに
データを送ったらそのままパネルにしてくれて
現地に搬入もしてくれたので
わたしは残業の合間に現地でそれに両面テープを貼って
与えられたスペースにペタペタしただけだった。
ものすごく仕事が立て込んでいる時期で
とにかく早くやらなきゃ、と
焦った結果一枚上下を間違えて
それが紅葉にお寺の屋根の写真だったので
逆さまでも面白いかも、とそのままにしようとして
「いや、ダメだろうっ」と隣で貼ってたタケゾー さんに
直してもらうという体たらく。
今回はパネルにするところからが自分ごと。
みなさんどうしているんですか?と
オーナーに聞いてみたら
「ハレパネが一番簡単です。」と。
そのまま写真データを持って
ビックカメラに行き
「ハレパネってありますか?」
係のおじさんが、そらきた、ド素人が、という感じで
なぜかウキウキと売り場に連れてってくれて
どのサイズ?何枚?じゃあこれとこれね。って
選んでくれた。
写真の焼きも面白そうな印画紙を選んで
係のおじさんに機械操作を任せて
1時間ほどフラフラして帰ってきたら出来ていた。
ハレパネっていうのはスチレンボードに
あらかじめ糊がついていて
剥離紙をちょっとずつ剥がしながら
写真をくっつけるとあっというまに
仕上がっちゃう便利もの。
余ったところはカッターでシャー。
(鋭角の切れる刃でね。)
ここまでを4月中ばには終えて
5月6日の搬入を待つ。
だって連休に思いっきり
遊ぶ予定を詰め込んだんだもの。
そして搬入日、ちょっと緊張しつつ現地入り。
初めましての皆さんに、中1部活初参加日のごとく挨拶。
お金をもらって写真撮っているような方と
並んでしまっていいんだろうか。
1枚目をペタッと壁に貼ったところで
「いいですねえ」とお声をかけてくださる。
優しいなあもう。
テーマは「心地いい場所」
一も二もなく選んだわたしの心地いい場所は
馴染みのカフェ「珈琲文明」さん。
ロケ地として貸し切るとうん万円かかっちゃうから
閉店少し前に誰もいなくなったのを見計らって
家族をモデルに撮る、を何日か繰り返した。
大好きなステンドグラス風ランプの写真に寄せて
A3 が1枚とA4が3枚の4枚組に仕上げた。
他の方の「心地いい場所」は
それぞれ個性的で素敵な写真ばかり。
装丁もサイズも様々で楽しい。
搬入が終わったら次は告知。
オーナーから効果的な告知のポイントが
メッセンジャーで届く。
自分が主となるイベントだと
ぜひきて欲しいと思う友達には
個別にメッセージを送るようにしている。
わたし内用語で「一本釣り」と言っている。
でも今回はあまりにも慌ただしくて
どなたにも送ることが出来なかった。
にも関わらず、初日の珈琲文明オーナーをはじめとして
連日沢山の友達が来てくださったのが本当にありがたい。
一緒に出展している方のお客様にも
自分の写真のことを説明したり
その他いろんなお話をしたり
お客様が空いている時は
出展している方やオーナーとも
ゆっくりお話が出来て
なんだか不思議な濃い日々だった。
SNSの「友達」が急増したりして。
少し前に師匠がよくやっていた、「撮影散歩」。
中華街、山手洋館、動物園など
ポイントを決めてゆるっとみんなで歩きながら撮影し
共有のアルバムにあげて楽しむ。
わたしにとっては撮るよりも
喋る食べるが楽しかった気もするけど
楽しげな友達をこっそり、または声かけて撮って
素敵な表情が切り取れた時の嬉しさを
また感じてみたいなあ、と思う。
それから、そもそも写真を始めるきっかけだった
「お菓子を美しく作って、美しく撮る」という
目的もたまには思い出さないとね。
楽しいチャンスを与えてくださったオーナー
ご一緒した素敵なフォトグラファーのみなさん、
いらしてくださったお客様
いつもお世話になってるお友達の皆さん
本当にありがとうございました。