まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

ローズマリー苦し

2019-06-11 23:52:15 | 日記
車を停めてドアを開くと
雨の中に立ち込める
青々としたローズマリーの香りに
むせ返った。
ぐったりしたカラダを
運転席から引きずり出す。
なんて長い日曜日だったんだろう。

母から、私と娘にゆっくり会いたいと
連絡が来たのは先月の終わりで
そこから二週間後に設定できたのは
週末遊んでばかりの私と
もっと遊んでばかりの娘にしたら
上出来だったと思う。

娘が小中学生の頃は、毎週日曜日に
合唱団の練習帰りに実家で
おいしいお昼とおやつたんまり
もらって喋るのが常だった。
比べるとこの現状、不義理なものだ。

お昼作ってそちらへ行く、と言われたとき
目的がすぐに推測できた。
一週間前だったか、急に
届け物するから今夜行くとメールが来て
猛ダッシュで帰宅したのだが間に合わず
玄関とリビングとキッチンの惨状を
目撃されてしまった。

家事をさぼっていることを母は特に責めなかったが
これはまずい、なんとかせねば、
と顔に書いてあった。

来訪日が決まってから、私は
時間を見つけては片付けと清掃に励んだ。
励みながらつくづく、
片付ける能力が乏しいと思い知った。

きれいになると気持ちいいでしょ、と
おっしゃる方はきっと
日々継続的に片付けをしていて
きれいになるまでの苦労が
気持ちよさより少ない方なんだろう。

必要に迫られ今まで目をつぶってきたところへ
対応しなきゃならない私の場合
片付いた時には疲労困憊。
ストレスで眉間に皺が深々と。
気持ちいいっていうより、天に召されそうな消耗具合。
家族もなんとなく話しかけるのに気を使ってる。

そして当日、案の定母の鞄には
「適度に使い込んでもうあと一回使ったら捨てる用の雑巾」が何枚も入ってた。
剪定ばさみはあるかというので
ずっと前に生け花を習ってたときの
錆びた花鋏を掘り出してきた。
母はそれで玄関前の雑木林と化した
ローズマリーを盛大に刈りはじめた。

後ろで私はそれを大きなゴミ袋に
詰めていく。
若い芽は少し持って帰るというので
それは小さい袋に取り分ける。
雨が降りだしたので、あとは私が後日やるからといっても止めない。
植え込みの雑草を抜き、傘立てからもう使用に耐えない傘を取り出し、玄関ポーチやドアを拭きあげる。

ずっと動きながら、悪いわね、自己満足なの、と母が言う。
そしてほんとは私がそこに一緒にいるのは本意じゃないと言う。
あなたは疲れてるから、休ませてあげたいんだけど、と。
なんて返事していいかわからず、ちょっと泣きたくなる。

本降りになってきたので、車で実家まで送り届け、そのまま靴を脱ぐこともなく家に戻った。
大声でわぁわぁ歌いながら走って来たら、なんだか具合悪くなってきた。

少し前、母は血圧がなぜか急上昇し
慌てて病院へかけこんだそうだ。
友達が何人か、おんなじような状況で
即入院、身動きもとれずになっていて

今回は大事に至らなかったが
「明日が必ずあるとは限らない
やりたいことはやって、
会いたいひとには会っておかないと」
との思いが強く棲み着いた。
結果この日合わせて四日間出ずっぱり
たぶん翌日はベッドから起き上がるのが
大変だったに違いない。

玄関が荒れていると良い気が入ってこないのだと母は言う。
確かに、すっきり片付いた玄関には
素敵な気がさらりと流れ込んでくれそうに思う。
でも私はそこに、服の裾を濡らしながら
がさがさと働く母の残像を見つけて
息が苦しいようだった。
どんだけ怠け者なんだか。

そこいくと娘なんかお気楽で
談笑してるだけで「かわいいわね」なんていわれて
「おおー。孫って最強。」とか有頂天。
目ぇ醒ませ。。。

母がほんとにやりたかったのは
玄関の清掃じゃなくて
私や娘と一緒の時間を過ごして
これまで言いたくても言わないできたことを吐き出して
まともな暮らしをしなさいよと態度で伝えることだったんだろう。
それが私にとってこんなに痛いのは
これまで母に甘え倒してたことを
まざまざ思い知らされるからだけど
こんなもんじゃ全然足りなくて
粛々と受け止めなきゃならない。

アタマでは理解したから、あとは
このぐったりしたカラダとココロを
説得していこう。

そのまえに

ちょっと寝かせて。