うちの師匠がとうとうオンライン教室業界に殴り込みかけることにした。
その話を聞いて巷にある動画を様々チェックしてみたら、どいつもこいつもアレなので悲しい気持ちになった。
これ見てこの通りにできると思ってキッチンで奮闘した結果惨敗したいたいけな視聴者をどうしてくれるんだろうか。
そもそも、お菓子は動画一回見て出来るってことじゃないと思う。正しいやり方を知って、何回も繰り返さないと。
しかも繰り返したところで間違えてたら意味ないので、そばで見てて「違うよ」って言ってくれる人がいないと。
というところを踏まえて、うちの師匠の戦略。ターゲットは小学生〜高校生くらいの子どもで、構成はいつもやってる教室のように、材料確認〜先生のデモ〜生徒の実習。
掲載はUdemyというサイトで、ここのいいところは広告宣伝をしてくれるところだそう。最初はプロに頼んで制作し、その後は自力で作って載せていく。
頼んだ映像作家さんは先生のお知り合いで、わたしはその方の奥様と「梅干し友達」。とても可愛いお子さんがいて、一時期ここの教室の生徒さんだった。当時アシスタント先生をやってたのが娘で、レッスン終わって帰宅したところを捕まえて「今日のゆーさんどうだった?」と聞くのが楽しみだった。「ザ・男の子だったよ。やっちゃダメってことはかたっぱしからやる。」素敵。
って話それたけどとにかくまずは絵を録って、その後アテレコするそうで、収録の日は手伝いに行った。集まったのは生徒役の子たち7人と、みなこさんと私。映像チームは3人で、スタジオのあちこちに太い三脚を立ててカメラや照明をセット。作るのは5種類、パートシュクレ、ジェノワーズ、パウンド、ガトーショコラ、シューアラクレーム。1種に1時間、バッファ30分で、9時から18時までの予定。
スタッフはみんな上着は白で統一しようというので、前日いつもお世話になってるユニクロで物色。襟付き七分袖のさらっとしたやつを2000円くらいで購入。そしたら先生とお揃いだったのでちょっとおかしい。先生のオレンジのカツラギ生地のエプロンがかっこいい。ナーバスになってる先生が「ピアスつけてたほうがいいかな、外したほうがいいかな」と高校生ちゃんに聞いてる。「つけたほうがいいです。」ズバッ。最近は迷うことがあると彼女らに投げかけてみるのが常の先生。「ジェノワーズとスポンジケーキだったらどっちの言い方がいいかな。」「デコ缶って言葉通じる?」ターゲット層が味方についてることの頼もしさったらない。
「こんにちは、松本美佐です。」イントロ部分は音と絵を同時に収録。子どもたちはサロンからガラス越しに師匠を見守る。うんうん、よしよし、とうなづきながら見てる子ども。参観日のお母さんみたい。
いつもレッスンをやってる作業台のスペースと、オーブン周りは撮影に使うので、計量はいつもキッズが試食に使ってる入り口すぐのテーブル。脇にサイドワゴンを置いても、油断するとものが溢れる。狭いからと思って最初はみなこさんと私だけがいたんだけど、せっかく来てる子どもたちにも手伝ってもらおうと徐々に呼ぶうちに結局全員がその場に集結。とにかく誰かや何かにぶつからずに動くのが大変すぎる。撮影のために材料を入れる素敵なガラスボウルを先生が買ってきたのだけど、数がギリギリで使い回すのに常に気が気じゃない感じ。自腹でもいいからもっと用意したかった。この冷や汗の出るような緊張感、6年前のレシピ本の撮影以来。
最初はカメラの調整などもあったので、パートシュクレが終わった時点で2時間経過してた。今晩帰れるのかな、と不安になる。型で抜いてオーブンに入れるところを録るはずが、私がいつもの調子で入れてしまって、後でもう一度そこだけ録り直すことに。高級シルパットも一枚だけなので、焼けたら外して洗ってクッキー抜いて並べて。心臓に悪い。
でもそんなふうにキリキリしてるのは大人だけで、子どもたちはみんな元気で楽しそう。今日が楽しみでしかたなかったんだって。お昼に先生が崎陽軒の焼売弁当を買ってくれて、みんな交代で食べた。一緒に食べた子たちに、最初にレッスンで作ったのは何?って聞いたら「お弁当」「焼売」「味噌づくり」。お菓子ちゃうやん。なんかあったら手伝おうと来てくれてたみさよさんが、「生徒役の子がみんなできる子だとリアリティないから、できない子も入れとこうってことで呼ばれたんだと思う、うちの子」っていうから、先生にそんな余裕微塵もないですよ、と笑った。実際、さゆりちゃんてばジェノワーズ担当だったんだけど、もう完璧に美しく作ってて、後で聞いたら「ジェノワーズ初めて作って楽しかった。」だって。怖いわまじで。そういうところが大人との違いだ。だって私だったら担当振られた時点で「えっ、あっ、それ作ったことないんですけど大丈夫ですか?」って言っちゃうもん。
そして一緒に食べた映像チームのお姉さんは、「お菓子作りって全然萌えない。」んですって。撮影してても、こんな面倒くさいことやるなんてすごいなー、と思ったと。そう、世の中お菓子星人ばっかりじゃないんだ。普段はこのサイズの撮影はスタッフ2名なんだけど今日は駆り出されて午前だけのお手伝いとか。土曜日も仕事が入ることはよくあるそうで、忙しそうだなあと思った。ありがとうございます。
「次、出番だよ。」と妹を呼びにくるまるちゃん。「まだ食べ終わってないから、替わってくれてもいいよ。あたしシュークリームやりたいし。絞り袋に入れるところが大好き。」とみるちゃん。「あんたシュークリーム作りたいからってゆっくり食べてるんじゃないでしょうね?」「違うよ、ほらいつもよりこんなに早く食べてるよ」「いつもどんなんか知らないし。あ、じゃあ次もあたしがやってその次もやろうかな。」「えーーーやだーーー。」結局食べかけを包み直してスタジオ入り。後でゆっくり召し上がれ。
カメラ位置の関係で、いつもは対面で見てる先生のデモを横並びで見てる子ども。いざ自分の番となると、粛々と作っていく。いつも通り、レシピを見るでもなく、何なら他のことに忙しい先生が貼り付いてなくても、あ、でもいつも別に貼り付いてはいないけど、さっき見た通りに作る。なんでしょうかこの安定感。多分、動画を見る人たちはこの子どもらの手元の美しさに驚くだろう。きちんと整理整頓された作業台や無駄のない動き。これがミサリングクオリティ。今日の子たちはこう言っちゃなんだけど精鋭メンバー、小さな頃から仕込まれてる生え抜きの子たち。彼女らがいるから、キッズレッスンで何が起きようとも平常心でいられる。大丈夫、この子たちも数年後にはああなるからってね。
最後のシューアラクレームが終了して時間は18時、予定を30分ほど押しての着地。試食の様子も撮るとのことでお茶を淹れる子どもたち。紅茶が濃すぎたと言っては笑い、ホットとアイスの数が分からなくなったと言っては笑う。試食の時は「お菓子習ってるっていうと、バレンタインの時にすごい期待されちゃうよね。何作った?」なんて話をしてた。うちの娘もシフォン4台焼いてカットして包んで大きな箱2つに入れて登校してたなあ。ラッピング手伝わされるの嫌いじゃなかったよ。そしてあっという間にあらかた食べ尽くされるお菓子の山。残りはジャンケン持ち帰り。「今年は周年祭やらなかったけど、今日は良かったねえ。」とニコニコしてるみなこさん。やっぱりこのスタジオには子どもが集まっておいしいもの作ったり食べたりしてるのが一番似合う。だからオンライン教室もいいけど、横浜まで来られる距離に住んでいるんなら、リアルで通うほうが断然いい。
後日先生が「フィルター」の話をしてた。例えば今の状況だと、ちょっと具合悪かったらお休みするというような常識を全ての人が持ってるとは限らないけど、うちに来てくれる人にはそういう心配がない。一番大きなふるいは価格設定だと思うけど(文明のマスターも同様なことを言ってた)、場の持っている磁力というか、先生の引き寄せというか、だから安心して対面での教室指導が出来ている。4、5月はお休みした人もいたけど理由はスタジオに来るのに電車に乗るのが不安だからというものだった。衛生管理も、別にいつも通りで何か特別なことを追加する必要なし。そもそも食べ物作るところだもんね。それにこれだけあれこれ規制だらけで先行きも不安ななか、月に一回とはいえずっといつもとおんなじ場所があることのありがたさったらない。お菓子教室まで取り上げられたら気が狂うわ。
ということで動画の編集第一稿が上がってくるのは来月半ば、アップは9月かな。まだまだ大変だと思うけど、先生がんばれ。
その話を聞いて巷にある動画を様々チェックしてみたら、どいつもこいつもアレなので悲しい気持ちになった。
これ見てこの通りにできると思ってキッチンで奮闘した結果惨敗したいたいけな視聴者をどうしてくれるんだろうか。
そもそも、お菓子は動画一回見て出来るってことじゃないと思う。正しいやり方を知って、何回も繰り返さないと。
しかも繰り返したところで間違えてたら意味ないので、そばで見てて「違うよ」って言ってくれる人がいないと。
というところを踏まえて、うちの師匠の戦略。ターゲットは小学生〜高校生くらいの子どもで、構成はいつもやってる教室のように、材料確認〜先生のデモ〜生徒の実習。
掲載はUdemyというサイトで、ここのいいところは広告宣伝をしてくれるところだそう。最初はプロに頼んで制作し、その後は自力で作って載せていく。
頼んだ映像作家さんは先生のお知り合いで、わたしはその方の奥様と「梅干し友達」。とても可愛いお子さんがいて、一時期ここの教室の生徒さんだった。当時アシスタント先生をやってたのが娘で、レッスン終わって帰宅したところを捕まえて「今日のゆーさんどうだった?」と聞くのが楽しみだった。「ザ・男の子だったよ。やっちゃダメってことはかたっぱしからやる。」素敵。
って話それたけどとにかくまずは絵を録って、その後アテレコするそうで、収録の日は手伝いに行った。集まったのは生徒役の子たち7人と、みなこさんと私。映像チームは3人で、スタジオのあちこちに太い三脚を立ててカメラや照明をセット。作るのは5種類、パートシュクレ、ジェノワーズ、パウンド、ガトーショコラ、シューアラクレーム。1種に1時間、バッファ30分で、9時から18時までの予定。
スタッフはみんな上着は白で統一しようというので、前日いつもお世話になってるユニクロで物色。襟付き七分袖のさらっとしたやつを2000円くらいで購入。そしたら先生とお揃いだったのでちょっとおかしい。先生のオレンジのカツラギ生地のエプロンがかっこいい。ナーバスになってる先生が「ピアスつけてたほうがいいかな、外したほうがいいかな」と高校生ちゃんに聞いてる。「つけたほうがいいです。」ズバッ。最近は迷うことがあると彼女らに投げかけてみるのが常の先生。「ジェノワーズとスポンジケーキだったらどっちの言い方がいいかな。」「デコ缶って言葉通じる?」ターゲット層が味方についてることの頼もしさったらない。
「こんにちは、松本美佐です。」イントロ部分は音と絵を同時に収録。子どもたちはサロンからガラス越しに師匠を見守る。うんうん、よしよし、とうなづきながら見てる子ども。参観日のお母さんみたい。
いつもレッスンをやってる作業台のスペースと、オーブン周りは撮影に使うので、計量はいつもキッズが試食に使ってる入り口すぐのテーブル。脇にサイドワゴンを置いても、油断するとものが溢れる。狭いからと思って最初はみなこさんと私だけがいたんだけど、せっかく来てる子どもたちにも手伝ってもらおうと徐々に呼ぶうちに結局全員がその場に集結。とにかく誰かや何かにぶつからずに動くのが大変すぎる。撮影のために材料を入れる素敵なガラスボウルを先生が買ってきたのだけど、数がギリギリで使い回すのに常に気が気じゃない感じ。自腹でもいいからもっと用意したかった。この冷や汗の出るような緊張感、6年前のレシピ本の撮影以来。
最初はカメラの調整などもあったので、パートシュクレが終わった時点で2時間経過してた。今晩帰れるのかな、と不安になる。型で抜いてオーブンに入れるところを録るはずが、私がいつもの調子で入れてしまって、後でもう一度そこだけ録り直すことに。高級シルパットも一枚だけなので、焼けたら外して洗ってクッキー抜いて並べて。心臓に悪い。
でもそんなふうにキリキリしてるのは大人だけで、子どもたちはみんな元気で楽しそう。今日が楽しみでしかたなかったんだって。お昼に先生が崎陽軒の焼売弁当を買ってくれて、みんな交代で食べた。一緒に食べた子たちに、最初にレッスンで作ったのは何?って聞いたら「お弁当」「焼売」「味噌づくり」。お菓子ちゃうやん。なんかあったら手伝おうと来てくれてたみさよさんが、「生徒役の子がみんなできる子だとリアリティないから、できない子も入れとこうってことで呼ばれたんだと思う、うちの子」っていうから、先生にそんな余裕微塵もないですよ、と笑った。実際、さゆりちゃんてばジェノワーズ担当だったんだけど、もう完璧に美しく作ってて、後で聞いたら「ジェノワーズ初めて作って楽しかった。」だって。怖いわまじで。そういうところが大人との違いだ。だって私だったら担当振られた時点で「えっ、あっ、それ作ったことないんですけど大丈夫ですか?」って言っちゃうもん。
そして一緒に食べた映像チームのお姉さんは、「お菓子作りって全然萌えない。」んですって。撮影してても、こんな面倒くさいことやるなんてすごいなー、と思ったと。そう、世の中お菓子星人ばっかりじゃないんだ。普段はこのサイズの撮影はスタッフ2名なんだけど今日は駆り出されて午前だけのお手伝いとか。土曜日も仕事が入ることはよくあるそうで、忙しそうだなあと思った。ありがとうございます。
「次、出番だよ。」と妹を呼びにくるまるちゃん。「まだ食べ終わってないから、替わってくれてもいいよ。あたしシュークリームやりたいし。絞り袋に入れるところが大好き。」とみるちゃん。「あんたシュークリーム作りたいからってゆっくり食べてるんじゃないでしょうね?」「違うよ、ほらいつもよりこんなに早く食べてるよ」「いつもどんなんか知らないし。あ、じゃあ次もあたしがやってその次もやろうかな。」「えーーーやだーーー。」結局食べかけを包み直してスタジオ入り。後でゆっくり召し上がれ。
カメラ位置の関係で、いつもは対面で見てる先生のデモを横並びで見てる子ども。いざ自分の番となると、粛々と作っていく。いつも通り、レシピを見るでもなく、何なら他のことに忙しい先生が貼り付いてなくても、あ、でもいつも別に貼り付いてはいないけど、さっき見た通りに作る。なんでしょうかこの安定感。多分、動画を見る人たちはこの子どもらの手元の美しさに驚くだろう。きちんと整理整頓された作業台や無駄のない動き。これがミサリングクオリティ。今日の子たちはこう言っちゃなんだけど精鋭メンバー、小さな頃から仕込まれてる生え抜きの子たち。彼女らがいるから、キッズレッスンで何が起きようとも平常心でいられる。大丈夫、この子たちも数年後にはああなるからってね。
最後のシューアラクレームが終了して時間は18時、予定を30分ほど押しての着地。試食の様子も撮るとのことでお茶を淹れる子どもたち。紅茶が濃すぎたと言っては笑い、ホットとアイスの数が分からなくなったと言っては笑う。試食の時は「お菓子習ってるっていうと、バレンタインの時にすごい期待されちゃうよね。何作った?」なんて話をしてた。うちの娘もシフォン4台焼いてカットして包んで大きな箱2つに入れて登校してたなあ。ラッピング手伝わされるの嫌いじゃなかったよ。そしてあっという間にあらかた食べ尽くされるお菓子の山。残りはジャンケン持ち帰り。「今年は周年祭やらなかったけど、今日は良かったねえ。」とニコニコしてるみなこさん。やっぱりこのスタジオには子どもが集まっておいしいもの作ったり食べたりしてるのが一番似合う。だからオンライン教室もいいけど、横浜まで来られる距離に住んでいるんなら、リアルで通うほうが断然いい。
後日先生が「フィルター」の話をしてた。例えば今の状況だと、ちょっと具合悪かったらお休みするというような常識を全ての人が持ってるとは限らないけど、うちに来てくれる人にはそういう心配がない。一番大きなふるいは価格設定だと思うけど(文明のマスターも同様なことを言ってた)、場の持っている磁力というか、先生の引き寄せというか、だから安心して対面での教室指導が出来ている。4、5月はお休みした人もいたけど理由はスタジオに来るのに電車に乗るのが不安だからというものだった。衛生管理も、別にいつも通りで何か特別なことを追加する必要なし。そもそも食べ物作るところだもんね。それにこれだけあれこれ規制だらけで先行きも不安ななか、月に一回とはいえずっといつもとおんなじ場所があることのありがたさったらない。お菓子教室まで取り上げられたら気が狂うわ。
ということで動画の編集第一稿が上がってくるのは来月半ば、アップは9月かな。まだまだ大変だと思うけど、先生がんばれ。
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