他人はおギャーっと生まれてからは一度は死ぬのだ。
他人は一度しか死なない。
あれほど嫌っていた母がこんなになると愛おしくなる。
病院に面会に行く。
今入院している病院は1日20分間の面会が可能です。
20分間で母が起きていれば私が来たことは認識している。
私が娘だとわかっているのだ。
時には私の名前も言う。
他のことは頓珍漢でもいい。
私のことだけわかればいい。
あんなに嫌っていた母が愛おしくなるのだ。
面会に行っても極力涙は見せない。
会話は頓珍漢でも相槌を打つ。
やせ細った母に触れることは出来ない。
美味しいものを食べさせることも出来ない。
病院内は面会者は食べ物持ち込み禁止です。
面会にはタイマーを渡される。
病室に着いてから20分です。
あっという間の20分に私は何を話しましょうか?
桜が咲いた。
桜が散った。
筑波山が見えた。
日光連山が見えた。
いい天気だよ。
今日は曇っているよ。
親孝行もろくに出来ず、独身の頃に32年間一緒に居たことや、私が40歳から昨年特養に入れるまでの間一緒に住んだことぐらいしかないのだ。
今となっては嫌なことは帳消しです。
育ててくれてありがとう!
産んでくれてありがとう!
母には感謝の言葉しかありません。