春寒き街はビュフェの絵のやうに黒く尖りて佇みゐたり
姉二人に挟まれ二歳の妹が大きなお日さま描いて春待つ
熱き息を白く吐きつつ求愛の舞を舞ひをり丹頂二羽が
ハグすればオキシトシンが出るのよと妻が横向き呟いてゐる
火葬待つ空見あげれば白き落つ君の遺灰か名残の雪か
3月号 永田淳選歌欄評 岩尾美加子
パソコンのつま先立てて膝に打つ電車のをみな爪に色なく 加藤宙
電車で目に留まった光景が描かれていて「つま先立てて」にその姿が顕ち上がる。就活の女子だろうか。仕事に追われている若い女性だろうか。「爪に色なく」は今懸命に生きている人の姿ととった。
*ありがとうございました。