あなたが「仕事がやりづらいな」と感じるとき、そこにはたいてい、誰かの「不機嫌」が潜んでいます。不機嫌は職場を停滞させます。不機嫌な人は、自らの欲求を通すために、ネガティブで否定的な態度をとるからです。

ただ、ひとくちに「不機嫌」と言ってもさまざまなタイプがあり、対処法もそれぞれに異なります。職場でよく見かける3タイプの不機嫌と対処法について、『職場にいる不機嫌な人たち』の著者である西多昌規氏が語ります。

職場でよく見かける「不機嫌な人」3タイプ

不機嫌な人はどこの職場にもいるものです。たとえば、イライラして今にもキレそうな人、嫌味ばかり言う人、やたらと物にあたりちらす人、「わからないからできない」とふてくされる人……。人数が多い職場の場合、不機嫌な人間のオンパレードというようなことさえあるかもしれません。「不機嫌な人がいないだけで、仕事がスムーズに進むのに……」。そう感じている人も少なくないでしょう。

たいていの人は、不機嫌な人がそばにいると、緊張し、ときに委縮してしまいます。そうなると言うべき意見も言いづらくなり、その結果、職場全体の士気まで下がりかねません。

ですから、不機嫌な人について理解し、その対処法を知っておくことは、気持ちよく仕事を進めるうえで、非常に重要なことと言えるのです。

職場でよく見かける不機嫌には、主に次の3タイプがあります。

タイプ 1. 無神経な人の不機嫌
タイプ 2. 上から目線な人の不機嫌
タイプ 3. 自分だけ得したい人の不機嫌

それぞれについてくわしく見て行きましょう。

「無神経な人の不機嫌」には…

タイプ1の「無神経な人の不機嫌」とは、具体例を挙げると、次のようなものです。

・怒鳴って威嚇する

・視線も合わせず、だんまりを決め込む

・舌打ちやため息、ボヤキが多い

・物にあたる

・自分にとっての正論を振りかざす……など

このような不機嫌を表す人は、他人に配慮・共感する能力──言うなれば社会性──が乏しいタイプです。ゆえに、一方的な感情を押し付けるコミュニケーションをしがちになります。自分の感情をストレートに表現する傾向があるので、怒鳴る、物にあたるといった激しい行動で不機嫌を表すこともあれば、相手の心にグサッとくるような言葉を平気で言うこともあります。周囲がどう思うかは二の次で、「空気を読む」ということをあまりしません。

彼らが職場である程度偉くなってしまうと、周囲がその人に合わせるようになるので、本人はますます態度や言葉に気を遣わなくなります。誰も注意する人がいなければ、「相手が自分に合わせるのが当たり前」とタカを括るようになり、輪をかけて傍若無人になることもあります。

本人たちは純粋に自分の感情に従っているだけなので、悪意はあまりありませんが、協調性がないために周囲からうっとうしがられ、職場では浮くことも多いようです。

このタイプの不機嫌な人に接する際は、「この人も、ちょっとは周りのことを考えてくれているだろう」「こちらの事情をわかってくれるだろう」という甘い期待を捨てる必要があります。共感能力の低い彼らに、こちらの思惑はまず通じないからです。

それを理解せずに、他の人の思惑を優先しようとすると、「自分中心で周りが動いている」という思いが強い彼らは、ますます不機嫌になります。こうした態度をエスカレートさせないためには、彼らが従わざるをえない目上の人にクギを刺してもらうか、当人を中心人物として立てながら物事を回すように配慮するとよいでしょう。

彼らは「この事態は、当然こうあるべき」という自分なりのイメージを持っていることも多く、ことがその通りに運ばない間は、ずっと不機嫌でい続けることがあります。この場合、彼らが何にこだわっているのかに気がつけば、不機嫌を軽くすることも可能です。

彼らがこだわるポイントに気づいたら、「そこにこだわるなんて、さすが!」と褒めると、率先してよい働きをしてくれることがあります。快適な職場環境を作るために、覚えておきたいテクニックです。

「上から目線の人の不機嫌」には、動揺しない

タイプ1の「無神経な人の不機嫌」が不機嫌らしい不機嫌として現れるのに対して、タイプ2の「上から目線の人の不機嫌」は一見すると不機嫌らしくない態度となって現れます。

具体的には、以下のような態度です。

・やたらと否定する、ダメ出しする

・嫌味や皮肉を言う

・陰口を言う

・自慢話が多い

・カタカナ語を多用する

・他人が褒められるとシラける……など

このタイプの不機嫌のベースにあるのは、「認められたいのに、認められない」という不満です。

心理学に、「優越の錯覚」という用語があります。これは、人は誰でも「自分は平均より優れている」と思い込む性質を指す用語です。このタイプの不機嫌を現す人は、「優越の錯覚」が特に強い人たちと言えます。

彼らは、「自分は平均よりは優れている」と思い込んでいます。しかし、単なる思い込みで、実績が伴っていないことが多いので、自分を脅かす「デキる人」「自分よりも成功している幸せそうな人」の登場を常に怖れています。

ですから、そうした人を目にすると、相手を平均かそれ以下に引きずり下ろすべく、否定したり嫌味を言ったり陰口を叩いたりするのです。

ナルシシズム(自己愛)が強すぎる彼らは、背伸びして自分を実力以上に見せようとする傾向も持ち合わせています。やたらと自慢話をしたり慣れないカタカナ語を多用するのは、そのためです。

自慢話やカタカナ語を繰り出しているとき、一見するとそうは見えなくても、彼らはデキる人への「嫉妬」や「羨望」で不機嫌になっています。彼らと話していると、なんとなく嫌な感じがするのは、そうしたネガティブな感情にさらされるためと言えるでしょう。

他人を貶めてでも上に立とうとする「上から目線の人の不機嫌」に対しては、「動じない」ように務めるのが基本姿勢です。

この手の人は、動揺を見せると、相手を貶める行動をエスカレートさせることがあります。自分を脅かす相手はこの機に徹底的に叩いておけ、とういうわけです。それだけ、彼らがデキる人に対して抱く「嫉妬」や「羨望」という感情は、扱いが難しいもの。この場合は「この人は、デキる自分のことがうらやましいんだな」とマインドチェンジして、相手の不機嫌を受け流すのが得策です。

もし、相手の自己愛を満たしてあげるフリができるのならば、おだてることで一時的に相手に花を持たせるというのも有効な手です。

「自分だけ得したい人の不機嫌」からは…

タイプ3の「自分だけ得したい人の不機嫌」は、損得勘定に敏感な人が、損をしそうになったときに発揮するものです。

例えば、

・反対意見を言われると冷たい態度を取る

・誘いを断られると、むくれる

・用事を断ると、偉い人の権威を持ちだして脅す

・成果を挙げられない人を「使えない」と切り捨てる

・自分の欠点を武器に居直る……など

心理学者であるフロイトが提唱した「快感原則と現実原則」という概念があります。「快感原則」は、遊びたい、楽をしたいという近視眼的な快感を求める心の動き。一方の「現実原則」は、長い目で見たときにどうしたほうが有利かを考えて、快楽に流されずに現実的な判断基準を行う心の働きです。

タイプ3の不機嫌を表す人たちは、「快感原則」に則って行動します。不機嫌な態度を取り続ければやがて職場で浮くことは少し考えれば誰にでもわかりそうなものですが、自分だけが得をしたいという誘惑に勝てません。ときには、職場では欠点と見なされがちな新人であることや未経験であることを武器にしてまでメリット(この場合は、主に面倒な仕事をやらずに済ませるという利益)を得ようとします。

自分さえ安泰ならば、他人や組織がどうなろうと知ったことではないのが彼ら。人望がまったくないのが特徴です。

このタイプの人と仕事をする際は、一時的にでも相手に「得をした」と思い込ませるような老獪な手腕が必要になります。あなたが差し出す仕事の成果、つきあいのよさ、あるいは、何が相手のデメリットになるかを教えてあげることなど。こうした「得」を示すだけで、相手の機嫌はずいぶんよくなります。

目先のことしか考えない彼らは、トラブルメーカーでもあるので、飛んでくる火の粉を被らないために、ときには毅然とした対応も必要になります。目上の人にマメに報告を上げていざとなったら味方になってもらう、他の仲間と団結するなどして、自分の身を守りましょう。

ここまで職場でよく見られる3つの不機嫌タイプを挙げてきましたが、何よりも肝心なのは、「自分自身が職場に停滞感をふりまく『不機嫌な人』になってはいないか」と意識することではないでしょうか。

物事が思った通りに進まず不機嫌になることは、誰にでもあります。そんなとき「自分は不機嫌になっている」と自覚することで、不機嫌を振りまく自分に歯止めをかけることができます。やがて落ち着けば、その原因や対処法に思いを巡らすことができるようにもなるでしょう。

快適な職場環境をつくるためには、まずはあなた自身が不機嫌から脱却すること。上機嫌でいようとする意志が、快適な職場環境を作りあげるのです。


なるほどねぇ。

…ところで、3つ全てに当てはまる場合はどうしたら??