ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

6/30 奈良町にぎわいの家「森川杜園と柴田是真」

2018-07-03 | にぎわいの家・奈良関連
3年前に、奈良町にぎわいの家、開館の折に考えたことは、一つがシンボルとなるマークを作りたいということと、奈良町ときいて名前がすぐ出てくるような人をクローズアップしたいということでした。シンボルマークは、二十四節気オリジナルマークとして(デザイン・金田あおい(藍寧舎)、来館者の皆さんにとても好評です。(24種類のスタンプとオリジナルハガキ、是非、ご来館の折にどうぞ。)
さて、後者の奈良町ときいたら誰?と調べていた3年前、見つかりました!奈良町にぎわいの家の二軒隣に、奈良人形、一刀彫の名人、森川杜園が住んでいたのです。同じ奈良町に住んでいるのに、それまで私は杜園の名前も知らず…。改めて作品を調べてみると…これがとても良いのです。更にわかったことは、この杜園の生涯が小説として発表されていました。「芸三職 森川杜園」、大津昌昭 著 がそれです。大津先生は長年、教育者として活躍されていた方ですが、今から二十五年前に奈良県立美術館での杜園の大回顧展を見られ、そこから興味をもたれ、小説となったとのことですが、本当に大津先生の著作に出会えたのは、幸運でした。更に、読んでびっくり!この小説は、杜園が生涯を語る、語りのスタイルで書かれているのです。またその語りが内容も調子も良くて…。私は戯曲を書くので、こうした語りのスタイルが、こんなにうまく成立している本があるなんて!と、本当に驚きました。大津先生はまるで劇作家のようです…。この小説…語りを朗読劇にしたい!となり、開館一年目、市民参加による「杜園語り」を、私の構成、演出で20名の出演者と作りました。これが第一回。
第二回目は、杜園と出会った人をクローズアップして、10代の杜園に多大な影響を与えた、国学者の穂井田忠友(ほいだ・ただとも)についての大津先生の講演と、その出会いに絞った朗読劇。
昨年の三回目は、岡本彰夫先生による「奈良人形と杜園」についての講演。
そして、今年の四回目が「森川杜園と柴田是真」。絵師になろうとしていた10代の杜園に、一刀彫りをすすめたであろう、柴田是真との物語をお話と朗読での企画です。
柴田是真は、近代を代表する蒔絵師。ウィーン万博にも出品したその作品は、構図が大胆、華があって、緻密で…伝統的なものをふまえて、その上に新しいものをのせていく作風です。その是真と杜園の出会いを、朗読するのですが、なんと、今回、大津先生が是真となって朗読を披露して下さいました。
杜園は小町座の西村智恵、ナレーションは私という、3人での朗読です。西村さんの杜園は伸びやかで、先生の太い声とあいまって、良い朗読でした。
大津先生は、音楽の専門家でもあり、第一回目の企画の時、私の演出の様子を「ここはクレシェンド、デクレシェンド」など、音楽用語で伝えて下さいましたが、お声もよくて、声量のすごいことといったら、七十半ばとはとても思えません。また是真の豪快な感じがぴったりで。先生自身も、「まさかこんな機会があるなんて。」と言われていました。
また、今回、特別に、杜園の彫った作品を、金田充文さんが持参、披露して下さいました。手向山八幡宮の狛犬二対の模造で、裏には杜園が書いた字も記されています。美術館の目録にも掲載されているもので、こういった素晴らしいものが、何気に自宅にあるところに、つくづく奈良の凄さを感じます。
杜園については、昨年、その二軒隣のお宅から、能舞台の松の板絵が、春日大社に運ばれる時に、その板絵を拝見する機会もあり…。この松がまた素晴らしくて…。来年は5回目を迎える杜園企画。大津先生の本から、更に掘り下げて読みたいと思います。ただし、私が読むのは今回が最後ということで…。



 杜園の狛犬!