『婦 系 図(おんなけいず)』 新橋演舞場 08.6.26観劇
昨日、またまたチケットを譲って戴き、新派120年記念 「婦系図」を鑑賞させて戴きました。新劇はよく観にいっていたんですが、新派は全くと言ってもいいほど初めての鑑賞でした。映画では、新派の俳優が出演している作品は多く観てはいましたが舞台での演技を観た感動は格別なものでした!!
それも今回は演舞場の一階席での鑑賞で、舞台それより花道でより近く俳優の演技を観られたのが嬉しい限りです・・・・。
ドラマ撮影現場での細切れの演技ではなく、花道に現れ舞台へ、また舞台から幕に消えるまでの空間での俳優の演技の緊張感が何とも言えない感銘を与えてくれ新鮮でした。
やはり三階天井桟敷派にしても、歌舞伎、新派観劇は一階席で観るのがベストなのかなと思ってしまいした・・・。
この新派舞台鑑賞を勧めてくれ、切っ掛けをくれた方々感謝します。
さて、今新派公演は松竹公演なのでしょうか、ちょっと異色の組み合わせで、水谷八重子さん中心の新派俳優と片岡 仁左衛門さんの歌舞伎派の新旧派混合の公演でした。
この面白い組み合わせが、私の新派公演鑑賞となったのもいい経験だったようです。
先に観た、歌舞伎 義経千本桜「すし屋」の”いがみの権太(ごんた)”が悪党から善人に改心するが如く、今回の片岡 仁左衛門さん演じる早瀬主税も幼年のスリ仲間から酒井先生に助けられ、ドイツ語の先生として善人になり恩師酒井先生を逆に恩を返し助ける話は、旧派・歌舞伎から新派へ受け継がれたテーマなのかなと思ってしまいました。
この中で片岡仁左衛門演じる主税はちょとスリ仲間時代の名残りかチンピラぽい科白言い回しが隠されている演技が特徴のようです。最初その科白が言い回しが気になっていたのですが、その主税の過去の素性がわかると何とも言えない人間の業を感じます・・・・。
また先の歌舞伎座の「身替座禅(みがわりざぜん)」山蔭右京役で同じ仁左衛門さんが出ていて、昼は新橋演舞場で新派役者、夜は歌舞伎座で歌舞伎役者と出演していることに人気役者の忙しさに脱帽です。
舞台は四季が感じられ、梅の樹、桜の樹 晩秋の樹などがありました。
特に早瀬主税が静岡に帰る時、窓から見える満開の桜を見ながら主税が去った後、妙子が「散らなければ・・・」という科白は印象的でした。
また、あの有名な湯島天神境内の場面「切れるの、別れるのってそんなことはね、芸者の時にいうことよ。今の私には、死ねといって下さい」とお蔦が言うところは味わいあっていいものでした・・・。
また更に、この舞台で”婦系図”とはの答えに、古い因習により女性差別が女性を悲劇に追い込んでいたことがよくわかりました。お蔦は芸者あがりで当時一般的に低くみられ男の出世のため別れさせられ、また学者の娘も日常の素性と家系図を調べ上げられ難癖をつけられ咎められるしまつ・・・。
つまり、 婦(おんな)= 家 系図(女は子を生み、遺伝子も伝わるから)で正当な家柄なら嫁入りでき”婦人”になれると解釈できた次第です。この難解な題名の読み方に大きな意味を持っていたことをこの舞台から私論ですが得た事が一番の収穫だったかもしれません。
この舞台の後、私の家は魚屋と農家の市井出であったことにホッとしています。
もしこの社会がダメというなら、”系図買い”に今からでも走り回らなくてはいけませんが・・・・。
そう思うと、現代社会は平等なんだといたく感心さえしてしまうのは私だけでしょうかー。
この新派観劇の機会をつくって戴いた方々に大感謝させて戴きます。
ありがとうございました!
新派120年記念 『婦 系 図(おんなけいず)』 六幕十場
お蔦 波乃 久里子
小芳 水谷 八重子
妙子 紅 貴代
酒井 俊蔵 安井 昌二
早瀬 主税 片岡 仁左衛門
泉 鏡花/作
大場 正昭/演出
新派120年記念 六月新派公演 「婦 系 図」 松 竹 HP