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アメリカの運気の流れ

2009-01-12 02:13:17 | 易 de コラム
戦後日本の建国と密接な関係があり、また世界の変革の際には行動を共にする運命共同体の国、アメリカ。
先日の日本に引き続き、今回はアメリカの10年単位の運気(大運)をみてみようと思います。

オバマ次期大統領への期待が叫ばれる中、アメリカ経済は急下降。時を同じくして世界に不況の嵐を巻き起こしました。
日本にしても難を逃れて喜んでいたのも束の間、火の粉は避けられず。世界的な経済不況の煽りを受けて苦難の真っ只中です。

今のアメリカはかつての大国としての威信を失いつつありますが、それでもまだ世界に与える影響力は大きい。
1776年7月4日にフィラデルフィアで建国がなされて、2009年で233年目を迎えます。
北米大陸の広さのあまり、アメリカが“世界そのもの”とさえ思ってしまう人もいるとかナントカ…(笑)
多くの移民を受け入れてきた歴史によって、今では多人種国家となっています。

そんな寛大さと尊大さを併せもった国・アメリカについて、易の大運を考えてみました。
まずは、わかりやすいように一覧を出しておきます。


◎アメリカ合衆国の大運表(ここ100年)

1909~1918年  山天大畜[三]
1919~1928年  火沢ケイ[二]
1929~1938年  山地剥[初]
1939~1948年  水沢節[初]
1949~1958年  風山漸[二]
1959~1968年  沢雷随[三]
1969~1978年  震為雷[四]
1979~1988年  巽為風[五]
1989~1998年  風地観[四]
1999~2008年  水雷屯[三]
2009~2018年  雷沢帰妹[二]
2019~2028年  山風蠱[初]

建国日時:1776年7月5日07時15分(JST)/フィラデルフィア(75W08, 39N53)
(現地時間では、4日の17時15分/木曜日)
旧暦日時: 丙申年5月20日酉刻
四柱干支: 丙申年甲午月己丑日癸酉時


人にせよ国にせよ、命式を出せば様々な分野に相当する卦が出てきますが、簡単にまとめると次のようになります。

アメリカの本質的な要素は沢雷随[二]で、それに肉付けする形で地水師[五]の対外性を持ち、地雷復[二]の社会性(国で言うなら「世界性」か)があり、国の基礎的潜在性として雷地豫[三]をもち、国としての向かう先(落とし所)は風雷益[四]となっています。

沢雷随[二]では、自国の経験値(乗り切ってきた過去の困難など)を資本に、相手(国)と対峙する傾向が出てくる爻です。しかし、それぞれ立場や事情が異なるので、手を差し伸べたり実地的に教えようとしてもうまくいかない事の方が多いかもしれません。押し付け外交では相手国に嫌われますしね。

日本については書いてなかったのでここで書いておきます。
本質的な要素は天沢履[上]で、それに肉付けする形で雷山小過[初]の対外性を持ち、地風升[三]の社会性(国で言うなら「世界性」か)があり、国の基礎的潜在性として雷水解[二]をもち、国としての向かう先(落とし所)は地風升[初]となっています。

共に、本卦に対する裏卦(錯卦)や綜卦(賓主法)で鏡像の働きを読むことができますが、ここでは省きます。

アメリカの場合、表看板となる卦爻が地雷復[二]。
象意は「正しい道に戻る。よき人(国)と共にあればよい」とあり、まさに“自由と平等の国アメリカ”という期待や憧れを移民たちに抱かせるに足る象意です。様々な文化や価値観がデパート内の店舗のように混在している国なので食傷しやすいですが、色んな需要に応じられるという点ではバラエティがあっていいと思います。

また、応爻(二爻の場合は五爻)との関係では、他国が国としての行為で何らかの過ちを犯した場合、それを潔く認めさせて反省や善の方向性に帰させることも大切な仕事です。力のある超大国だからこそ可能なことですが、そうした姿勢がアメリカの未来を形成していく動力になるでしょう。

一方、日本の場合では表看板は地風升[三]で、戦後の焼け野原から開拓精神で伸し上がってきたパワーがあります。
しかし、外交能力が雷山小過[初]で非常に心もとない。この卦は小事はよいけれど大事は向かないし、何より初爻変では鶏が空を飛ぼうとするように身の程もわきまえずに進んで破滅しかねない、という意味合いがあります。

地風升の勢いで世界の先進国として名を馳せるまでに昇ってきた日本ですが、過分の欲を抱いて更なる高みを目指すことは危険を伴います。国としての潜在的能力は高いですが、調子に乗ってやり過ぎるのは禁物ということでしょう。

しかし、行く末および後進国(人で言えば自分の子供に相当する)との関係は地風升[初]と望ましいので、こうした面でのウケは良いと思います。人道支援や経済援助、また技術支援の面では日本は有益な働きができるようですし。


さて、話が脱線してしまいました。アメリカの大運の読解に戻りますね。

表を見ると、現在のアメリカは1999年から続いた水雷屯[三]の期間と2009年以降10年間の雷沢帰妹[二]の境目に差し掛かっています。

水雷屯の卦辞は「屯は大いに通じるが、貞正を保つことが条件。軽はずみな行動はダメ。人材(諸国)を適材適所に配置するとよい。」というものです。
屯は易の初めの段階で、物事の草創期に当たります。何かを始める時の不安や緊張、ストレスなども象徴しています。震の勢いで突き進もうとしますが、進む先は坎(険難)という苦悩を示す卦です。

象伝は「天下に秩序を布石する」という内容ですが、それによって周囲や世の中(国のレベルでは世界)を正しく治められるかどうかは判断のしどころだと思います。

六三は「獲物を追って案内人もなく林の奥深くに迷い込んでしまう。深追いすれば恥をかくの象。」で、自分勝手な判断で迷走してしまう様相を表しています。

アメリカの対イラク戦争、度重なる経済不況の波、銃の乱射事件などの悲壮な事件の多発などと、かなりの混迷を極めた時期であったと思います。大国アメリカに対する世界の評価もガタ落ちし、大統領やアメリカ政府に対する酷評も内外から浴びせられるほどでした。

そして、大運の変わり目(境界線)にある今、次第に次の雷沢帰妹[二]の波が迫ってきています。
帰妹とは嫁ぐの意味です。

雷沢帰妹は、その一つ前の風山漸に説かれる「順序正しさ」とは逆に、「不順なもの」「イレギュラー」を象徴します。風山漸は山:艮(男)が風:巽(女)にプロポーズする形ですが、雷沢帰妹は沢:兌(女)が雷:震(男)に言い寄る形です。

現代社会で言うと、恋愛結婚やお見合い結婚のようなある程度の年月を経るコースではなく、いわゆる「できちゃった婚」とか「玉の輿」に相当する意味合いの卦です。もっとも、順序が逆だったり面倒なプロセスを省いて一っ飛びに目的に向かうことは、今のスピード社会では特別に珍しいことではありませんが。

余談ですが、時間ばかり掛かる「お役所仕事」が風山漸で、ムダを省いて競争化・効率化を目指した「民間事業」が雷沢帰妹、というようなイメージも僕の中にはあります。どちらが良いとか悪いとかではなくて、それぞれに長短があります。

帰妹の卦辞は今書いてきたようなことで、「征けば凶。いいことはない」。
要するに、不貞の交わりや不正行為、情欲に溺れることへの警鐘が説かれています。
ただ、彖伝には「男と女の陰陽の交わりがなければ跡継ぎは生まれないのだから…」とカバーしている一面もあってネガティブな面ばかりを見ているわけではありません。要は見方・考え方の問題ということのようです。

ついで象伝で「長い目で物事を見る必要がある。不純・不正で始まったことは終わりを全うできない」と云っています。

今のアメリカは現状の苦境を何とかしようともがいている状態でしょうから、ともすれば実益に即効性のありそうな政策や方針に傾きやすくなっています。しかし易の視点からすると、そうした短絡的な政策に安易に走ることは後で不貞のそしりを被る結果となる恐れがあるので良いことではありません。

爻辞は「眇め(視力の弱い人)がよく見ようとしてもできないように、自重しつつ己の真実を貫くが良い。」というものです。身を引いて貞節を守るべきだとされています。

伊達政宗のような眼帯をした人をイメージしたら間違いなのかもしれませが、――例えば片目を瞑って物の平行や直線を見ようととする状況を思い浮かべれば、その時々に合った臨機応変な“見方”さえできれば、この爻の意義や可能性も広がるんじゃないかと思います。

これを今後のアメリカに当てはめて考えると、現状の苦難を乗り越えていくためには、まず国を立て直すためにその姿勢や見方を変えなくてはなりません。

そして、今までの傲慢とも取れる態度や考え方を改め、「幽人(隠遁の賢者)の貞」宜しく、事あるごとに表舞台にしゃしゃり出るのは止めて、国内から新たに生まれてくる可能性を大事にすることが求められるのではないでしょうか。

奇しくも、大統領が期待のオバマ氏に代わることですし、そうした転換をしていくにはちょうど良い時期にあると思います。

この卦爻辞を見ると、アメリカが世界のトップの座を降りて、急速に台頭してきている中国のような国に明け渡すシナリオになっているような気がしてなりません。

その場合、やはり権威に固執して他から引き摺り下ろされるよりは、自ら身を引いてサポート役に回ることを選択するほうが自国の評価を落とさずに済むのではないかと思います。それどころか、地雷復[二]にあるような良い面が示されて逆に印象が良くなる可能性さえあるんじゃないかという気もするのです。

もともと力のある国だけに、ここに来て世界の「縁の下の力持ち」になることは卑屈を誘うかもしれませんが、そうした役割を今後の10年を掛けて学び果たすというのもオツではないかと思います。

これまでの驕りを含んだ歴史を思えば、クールダウンして冷静さを取り戻す時期があってもいいじゃないでしょうか。大運によれば、更に先では山風蠱[初]となっていて刺激的な局面を迎えることが予測されるので、なおさらしばらく国としての自己修養に努めるというのも悪くないことだろうと思います。


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