建交労長崎県本部

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トラック運転手・雇用問題は業界問題~建交労のトラック政策⑰

2017年07月15日 09時42分58秒 | トラック政策

(1)業界団体が予測する就労状況

①少子高齢化の影響

全日本トラック協会発行の「平成21年度版・トラック輸送の現状と課題」では以下のとおり指摘しています。

「『日本の将来推計人口』によると、17年の65歳以上人口比率は20.1%で、5人に1人が65歳以上だが、62年にはこれが39.6%となり、67年には40.5%となって5人に2人が65歳以上となる。逆に、15歳~64歳の生産年齢人口比率は平成17年の65.8%から62年には51.8%、67年には51.1%へと減少すると予測されている。」

「全日本トラック協会が毎年まとめている賃金実態調査によると、中・小型トラック運転者の年齢構成比は、平成5年に37.8%だった20歳代以下の比率が10年に28.4%、15年に20.6%と年々減少を続け、21年には12.7%へと減少している。」

一方、全日本トラック協会が平成21年9月に行った「大型免許保有人口の将来予測」によると、「労働力として期待できる60歳未満の大型免許保有者数は、20年の316.7万人から15年後の35年には約30%少ない222.6万人に、さらに22年後の42年には約44%減の177.2万人に減少すると予測されている」として、「このまま若者のトラックドライバー離れが進めば、産業の盛衰にも関わりかねない大きな問題になると懸念されている」として、危機感を隠していません。

②就労条件の悪さ、免許制度、将来展望がネックに

若年層のトラックドライバーの減少は、少子高齢化もさることながら、大きな要因として、トラック運送業における就労条件の悪さが一層の拍車をかけていることがあげられます。さらに年より免許制度が変更され、18歳から取得できる普通免許では、事実上営業用トラックの運転ができなくなり、事業者が高卒新卒者の採用ができにくくなったこともあげられます。

またトラック産業では一旦トラック運転者として採用されれば、他の職種への転換、キャリアアップやキャリアパスは極めて限定されており、若年新卒者が自身の将来設計を立てづらいこともネックとなっています。

 

(2)雇用問題と全産業水準の条件確立は一体の課題

予測されるトラック運送業界の深刻な労働力不足に対して、全日本トラック協会は2007年12月「トラック業界・協会の将来ビジョン」報告書を発表し、「働きがいのある職場、魅力ある職業像を形成する」として「キャリアアップができ、キャリアパスが描ける業界へ」「トラック運送業の給与水準を全産業平均水準へ(10%の格差の解消)」を目標に上げています。

「再生可能なトラック運送事業の持続的発展」という課題は、トラック運転労働者の処遇改善と切り離せない課題であることが明らかです。

しかし一方で、トラックドライバー不足を解消する手段として外国人労働者を活用することが検討されています。「輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の検討報告書」(平成20年9.月国土交通省自動車交通局貨物課)では、「(5)外国人労働力の活用【視点】外国国籍者は就労可能な職種が限定されているため、現状では不可能であり、職域拡大については、他の業種も含め、包括的に政府レベルでの検討が必要であると考えられる。」「【対応策】○トラック事業者団体及び行政で行うことが望まれる主な対策・外国人労働力の活用に向けた課題の検討(現行の入国管理制度や教育・研修、労務管理上の課題など)を行うことが望ましい。」としています。

外国人労働者を排斥するものではありませんが、公共の施設である道路を使っての事業であることから、安全の確保という点からも、長年我が国に居住し、道交法はもちろん、我が国の道路事情を十分理解し、コミュニケーションもとれることが前提であるべきです。また、外国人労働者であることを理由として、不当に安い賃金や低い労働条件で働かせるべきではなく、国内労働者との均等待遇を確保することが前提となります。

 

(3)安全・安心なトラック運送と雇用形態

トラック重大事故の続発・多発という問題は、運転者の長時間・過労運転との関連が指摘され続けています。

トラック運転者の長時間・過労運転は、その雇用形態とも関わっています。近年ひろがっている偽装請負・完全償却制は「売上高」と強く連動していることから、「一定水準の収入」を確保するために、いきおい長時間・過労運転の温床となっています。

また「契約社員」などの非正規雇用労働者の場合、その多くが労働者としての権利が担保されておらず、また賃金水準も低く抑えられていることから、長時間労働を余儀なくされています。



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