序盤4名の逃げは62km地点で越えた3級のパッソ・デル・ブラッコの下りで吸収され、峠で遅れていたスプリンターたちも合流して集団は1つになりました。99.2km地点に設定された中間スプリント地点の手前でヨーロッパチャンピオンのクリストフ・ラポルト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)が落車する事故が発生、彼はレースを続行する事ができたようですが、今年のヴィスマは本当に厄年なのかもしれません。
残り77.2kmで集団からバンジャマン・トマ(コフィディス)がアタックし、アンドレア・ピエトロボン(チーム ポルティ・コメタ)、ミカエル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・イージーポスト)、エンツォ・パレーニ(グルパマ・FDJ)と一緒に逃げグループを形成し、4人は1分前後のタイム差で逃げ続けました。
このステージは最後の登りからゴールまで距離があり、スプリンターのステージだと予想していたのですが、スプリンターでゴールを狙うチームがプロトンをコントロールしながら逃げを追うも、1分前後の差がなかなか縮まりませんでした。
途中、現地中継画面に逃げているヴァルグレンの出力が330Wと表示されていましたが、この逃げが結構強烈なのだと分かりました。今回のジロで積極的な動きを見せているEFエデュケーション・イージーポストはUCIランキングが11位という中堅チームです。今年かは日本人の留目夕陽選手が加入しています。ただ、若手を育成しても資金力のあるチームに引き抜かれてしまうので、グランツールの総合優勝を狙えるようなチームではありませんが、使用するバイクがcannondaleなので、個人的に応援しているチームなのです。
このステージでも逃げに乗り高出力で走っているヴァルグレンに声援を送り、逃げの4人が22秒差で残り1kmのフラム・ルージュを通過するという最後までハラハラドキドキの展開でしたが、最後のスプリントでトラック選手でもある28歳のバンジャマン・トマに敗れての2位ゴール。イヤー悔しい1車身差!!付きイチだったピエトロボンの仕掛けに、追走を始めたヴァルグレンでしたが、結果的にはトマの発射台のようになってしまいました。
cannondaleのCAADシーリスで勝ちまくっていたマリオ・チッポリーニの故郷ルッカの街にゴールするステージでcannondaleのSupersix EVOに乗るヴァルグレンの活躍には感動さえ覚えました。ミカエル・ヴァルグレンはデンマーク出身の32歳。若い頃はU23のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ連覇するような選手でしたが、2021年にEFへ移籍した年の世界選手権3位を最後にケガに泣き、結果が出せずにいたのですが、EFは契約を切ることなくデベロップチームでじっくりと復帰を待っていた選手なのです。
それにしても、今年のジロでは自転車のトラック選手の躍動には目を見張るものがあります。前日、ゴール前のカーポ・メーレの丘でアタックを見せたフィリッポ・ガンナ、スプリントでステージ優勝を飾ったジョナサン・ミランはイタリア代表のトラック選手、今日のバンジャマン・トマはフランス代表のトラック競技選手で、現ヨーロッパ王者なのです。そんな選手に食い下がったのですからヴァルグレンの健闘を称えたいと思います。
TV解説の辻啓氏が言っていなのですが、ポガチャルの前日のフラムルージュからゴール迄1kmの平均速度が74.9km/hだったというのです。下り基調だったとはいえ、驚きの速度です。このステージでも最後の登りを超えてからゴールまでは60km/h前後で推移していました。ここまでスピード重視になるとトラック競技の経験が生きてくるのかもしれません。
3位は逃げ残ったピエトロボン、集団スプリントでトップ通過はミランで5位、マリア・ローザはポガチャルで変わらずでした。予想外の逃げが決まったステージを終え、明日の第6ステージは未舗装路ストラーデ・ビアンケが登場する丘陵ステージになります。勿論、今年のストラーデ・ビアンケを圧勝したポガチャルが最有力ですが、展開によっては今日のような逃げが決まるかもしれません。
ちなみに、大会2日目にしてマリア・ローザを着る事になったポガチャルですが、バイクはジロバージョンが用意されていたのに、ビブショーツは間に合わなかったようで、マリア・ローザ獲得の翌日は紫色のパンツ。4日目は普段の黒のパンツ姿でしたが、5日目にしてようやくビブショーツもマリア・ローザカラーのものになっていました。チームはこんなに早くポガチャルがマリア・ローザを着ることを予測していなかったのか、単なる準備の遅れなのかが気になります。