重要なのは「速度域」と「重量」の関係です。2つの要素はエアロロードと軽量バイクの優劣を明確にしてくれるはずです。速度域の違いで、エアロロードは有利にもなるし、不利にも変わる。では、どのような条件であれば「エアロロードが有利」なのか。エアロロードが速く走れる条件を突き詰めていったのがcannondaleでした。
グラフのタテ軸はパワー、ヨコ軸は斜度を示しています。パワーは一定の300Wです。棒グラフの色は抵抗を表しています。勾配が増すにつれて、グリーンの空気抵抗(Drag)は減り、ブルーの位置エネルギー(PE)が増しています。この実験条件は、体重75kgのライダーが一定出力(300W)で走っている場合を想定しています。
平たん路であれば、速度が増すにしたがって、空気抵抗がしめる割合は増加する傾向でしたが、登り区間になると話はまったく違ってきます。勾配が増すにしたがって位置エネルギー(PE)の割合が増していくのです。斜度が10%近くになると、今度は位置エネルギーが支配的になっていくことが分かります。勾配が増せば速度が落ち、空気抵抗は減少していくからです。登りが続くようなヒルクライムであれば「軽さは正義」はデータからも疑いようのない事実なのです。
勾配の影響、平たん路における抵抗や速度差の違いがわかってくると、次の疑問が湧いてきます。「勾配が何%までであれば、エアロロードが速いのか」という疑問です。cannondaleはSYSTEMSIXとSupersix EVO(第3世代)を比較して実験を行っています。条件としては、タイヤやホイールなどありとあらゆる機材を統一し、唯一の違いをフレームだけに絞ります。重量はSUPER SIX EVOが1kg軽い想定で、エアロダイナミクスはもちろんSYSTEMSIXが有利です。
先ほど登場した「300W一定」「体重75kg」のライダーの場合で考えてみましょう。パワーウェイトレシオは4.0W/kg。4.0W/kgのライダーの条件であれば、「6.0%まで」の勾配はSYSTEMSIXのほうが速く走れることになるようです。しかし、勾配が6%よりキツくなると、Supersix EVOのほうが速く走れるというデータです。パワーウェイトレシオは4.0W/kgにおいて、勾配とタイム短縮時間の関係を表したのが次のグラフです。
タテ軸は短縮する時間を表しています。プラスであればタイムは短縮し、マイナスであればタイムは遅くなることになります。勾配が6%であれば0で示されているとおり、エアロロードのSYSTEMSIXと軽量バイクのSupersix EVOの間には差が生まれません。パワーウェイトレシオが高くなれば、より大きな勾配が0ポイントとなります。逆にパワーウェイトレシオが低い場合は、勾配の影響を受けやすくなるということです。