今年のツール・ド・フランスの山岳賞(マイヨ・アポア・ルージュ)はcannondaleのSupersix EVOに乗るリチャル・カラパスでした。ジロ・デ・イタリアでもニールソン・パウレスやゲオルグ・シュタインハウザーなどが健闘を見せたEFエデュケーション・イージーポストですが、怪物ポガチャルの前に空しく散ってしまいました。
ツール・ド・フランスも4強の戦いと言われ、この4強が山岳で火花を散らせば、山岳賞は彼ら4人の内の誰かになるだろうと思っていました。前半はヨナス・アブラハムセンが懸命に走りマイヨ・アポアを着ていたものの、中央山塊に入った第11ステージであっといまにポガチャルに奪われてしまいます。その後も繰り下げでしばらく着用していたもののピレネーに入るとポガチャルとヴィンゲゴーの戦いとなり、山岳賞はポガチャル、繰り下げでヴィンゲゴーがマイヨ・アポアを着ることになってしまっていたのです。
第13ステージでログリッジがツールを去り、4強が3強になってはいたものの、このトップ3の強さは別格でした。そんな中、3週目のアルプスに入ると第17ステージを逃げてカラパスが勝利。EFのエースとして期待され昨年イネオスから移籍してきたものの、昨年は落車で初日にリタイヤしていたのです。今年も総合争いからは早々に脱落してしまったカラパスとチームにとって、このステージ優勝は大きな勝利でした。
東京5輪の金メダリストのカラパスはゴールドに塗られたスペシャルなSupersix EVOに乗っています。EFエデュケーション・イージーポストはポガチャルのUAEやヴィンゲゴーのヴィスマ、ログリッジのレッドブルのような資金力が豊富なチームではありませんが、若手の育成には定評があり、今年のジロでも若手のシュタインハウザーがステージ勝利を挙げています。そんなEFがイネオスから金メダリストのカラパスを獲得したのは相当の覚悟があってのことでしょう。それは第4世代のSupersix EVO LAB71に相当の自信があってのことだと思っています。
前身のcannondale時代にはピーター・サガンを育て、ツール・ド・フランスでマイヨ・ヴェールを3年連続で獲得するも、メインスポンサーだったガーミンの撤退に伴い、サガンがティンコフ・サクソへ移籍して以来、ツールではステージ勝利すら遠のいてしまっていたのです。
ジロではステージ勝利はありましたが、ツールは未勝利のまま迎えた2024年のEFはちょっと違っていました。第4世代のSupersix EVOの正式発表は昨年の春でした。その年第4世代のSupersix EVOの正式投入でゴールドに塗られたスペシャルバイクを与えられたものの初日でリタイヤしてしまったカラパスが、今年はアルプスで躍動し始めます。
平坦ステージではCANYON AEROAD CFRが躍動し、フィリップセンがステージ3勝を挙げていたのですが、Supersix EVOは逃げ集団で時折見かける程度でした。それが、厳しいアルプスに入った途端にカラパスが躍動を始めたのです。
第17ステージは集団が逃げを容認しての勝利でしたが、今年数少ない大逃げの容認を見逃さなかったカラパスは流石金メダリストです。レース後「開幕からずっと勝利を狙っていた。ステージ終盤のコースは監督と共に予習しており、一生忘れられない勝利となった。アメリカ大陸を代表する最高の走りができた」と喜びを語っていました。
ただ、この時点ではステージ勝利で山岳賞はポガチャルでした。ジロ・デ・イタリアでは総合優勝と共に山岳賞も取ってしまったポガチャルから山岳賞ジャージーを奪い取ることは容易なことではないのですから。
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