極楽寺にある事務所を夕方帰ろうと出たら、妻にばったり会った。妻の務めるところはすぐ近くにある。偶然に帰るところだったらしい。
「鎌倉まで歩きだけれど、いい?」
妻は口で言いながら歩き出している。
「いいよ、行こうか」
返事をして、歩き出すと、妻はもう、5~6m先を歩いている。慌てて僕も歩き出す。
妻は小さい。そんなに慌てなくても、僕がしっかり歩けば大丈夫。そんなことを思いながら、歩き出した。
タッタ、タッタ、タッタ、速い!妻は速い! 僕も 少しスピードアップ!
ゆるい上り坂だ。あまり焦って歩かなくても、すぐに追い越してしまうだろう。
周りは5時過ぎると、今頃は、どんどん暗らくなってくる。
江ノ電の極楽寺の駅前を通る。
小さな駅、朝早いとまだ駅員は来てない。電車は走っているのに。
夕方、もうすぐ駅員さんは帰ってしまうのだろう。あとは無人駅になる。電車は12時ごろまで走っているのだけれど。
駅の前にある小さな駅の土地。可愛い広場とでも言うのか。そこには桜の古木がある。随分昔には枯れかけた木なのだが、なんとか持ちこたえた。去年は満開の桜が綺麗だった。
タッタ、タッタ、タッタ、前を見ると、妻の姿は10mぐらい先だ。あんまり離れてはいけない。一緒に帰っているのだから。少し、走って近くまで、追いついた。
僕も体力がついた。走ってもなんでもない。
坂道を登りきると、極楽寺坂。ここからは急な下り坂になる。坂の下まで結構距離がある。下りは大丈夫、余裕で妻についていけるはずだ。
冬は、暮れ始めるとどんどん暗くなってくる。ここは深い切通しだ。昼間でも陽のあたらない、鬱蒼としたところ。
左右の崖は岩の地肌が見えるところもあるが、緑で覆われている。一部はよう壁とネットが。昔、崩れたことがあった。そのときからだったかな。
途中の左にはお地蔵さんの祠が。その向かい側にはお墓がある。夜は一人で通るのは少し怖いところだ。
しかも、お地蔵さんの祠の上の方には、お堂があって、信者の方々が供養したのだろう、お経が書いてある旗がたくさん建っている。
昔はそこに火の見櫓が立っていた。友人と夜中に通った時、その友人には霊が見えるらしい。
「おーい、何やっているんだよ、危ないから降りて来なよ」と叫んでいた。火の見櫓の梯子を白い着物を着た人が登っている、と言っていた。僕には梯子には人影は見えなかった。
今は一人ではない。妻と一緒だ。怖くはない。そう思って前を見る。
タッタ、タッタ、タッタ、妻はどんどん先へ行く。
また、10mぐらい先に行ってしまっている。もう少し離れたら、一人で歩いているのと同じだ。
僕はまた走った。まだ体力は大丈夫だ。
そのまま、真直ぐに進むと海岸沿いの道にでた。
坂の下海岸。由比ガ浜に繋がっている遠浅の海岸である。
波が静かだった。天気が良ければ、空がもう少し明るいのだろう。今日の曇り空では濃いグレー、暮れる寸前。
小さな喫茶店が営業している。中に2~3人のお客さんが入っていた。この人たちはこんな時間に何をしているのだろう。まだ、夕方だ。会社の帰りにしては早すぎる。この辺には良くわからない人たちがいる。
その先のマンションのところを左折して、裏道へと入る。
そのマンションのところには以前「大海老」というレストランがあった。閉店してから20年だろうか30年になるのだろうか、よく覚えていないほど昔だ。
その向かいには、ドイツ料理のお店がある。ここも随分昔からやっている店である。昔ここでソーセージの定食を食べた。今度はジャガイモと肉を煮た定食が食べたい。ここの鹿の肉が美味しいと言っていた友人がいた。そんなものを食べてみると良いかな。
タッタ、タッタ、タッタ、妻はスピードを落とすことはない。
いけない、前を見ると、妻は20mぐらい先を歩いている。キョロキョロしながら歩いていてはいけない。
また、走った。少し、足に疲れを感じた。
続きは後日。
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「鎌倉まで歩きだけれど、いい?」
妻は口で言いながら歩き出している。
「いいよ、行こうか」
返事をして、歩き出すと、妻はもう、5~6m先を歩いている。慌てて僕も歩き出す。
妻は小さい。そんなに慌てなくても、僕がしっかり歩けば大丈夫。そんなことを思いながら、歩き出した。
タッタ、タッタ、タッタ、速い!妻は速い! 僕も 少しスピードアップ!
ゆるい上り坂だ。あまり焦って歩かなくても、すぐに追い越してしまうだろう。
周りは5時過ぎると、今頃は、どんどん暗らくなってくる。
江ノ電の極楽寺の駅前を通る。
小さな駅、朝早いとまだ駅員は来てない。電車は走っているのに。
夕方、もうすぐ駅員さんは帰ってしまうのだろう。あとは無人駅になる。電車は12時ごろまで走っているのだけれど。
駅の前にある小さな駅の土地。可愛い広場とでも言うのか。そこには桜の古木がある。随分昔には枯れかけた木なのだが、なんとか持ちこたえた。去年は満開の桜が綺麗だった。
タッタ、タッタ、タッタ、前を見ると、妻の姿は10mぐらい先だ。あんまり離れてはいけない。一緒に帰っているのだから。少し、走って近くまで、追いついた。
僕も体力がついた。走ってもなんでもない。
坂道を登りきると、極楽寺坂。ここからは急な下り坂になる。坂の下まで結構距離がある。下りは大丈夫、余裕で妻についていけるはずだ。
冬は、暮れ始めるとどんどん暗くなってくる。ここは深い切通しだ。昼間でも陽のあたらない、鬱蒼としたところ。
左右の崖は岩の地肌が見えるところもあるが、緑で覆われている。一部はよう壁とネットが。昔、崩れたことがあった。そのときからだったかな。
途中の左にはお地蔵さんの祠が。その向かい側にはお墓がある。夜は一人で通るのは少し怖いところだ。
しかも、お地蔵さんの祠の上の方には、お堂があって、信者の方々が供養したのだろう、お経が書いてある旗がたくさん建っている。
昔はそこに火の見櫓が立っていた。友人と夜中に通った時、その友人には霊が見えるらしい。
「おーい、何やっているんだよ、危ないから降りて来なよ」と叫んでいた。火の見櫓の梯子を白い着物を着た人が登っている、と言っていた。僕には梯子には人影は見えなかった。
今は一人ではない。妻と一緒だ。怖くはない。そう思って前を見る。
タッタ、タッタ、タッタ、妻はどんどん先へ行く。
また、10mぐらい先に行ってしまっている。もう少し離れたら、一人で歩いているのと同じだ。
僕はまた走った。まだ体力は大丈夫だ。
そのまま、真直ぐに進むと海岸沿いの道にでた。
坂の下海岸。由比ガ浜に繋がっている遠浅の海岸である。
波が静かだった。天気が良ければ、空がもう少し明るいのだろう。今日の曇り空では濃いグレー、暮れる寸前。
小さな喫茶店が営業している。中に2~3人のお客さんが入っていた。この人たちはこんな時間に何をしているのだろう。まだ、夕方だ。会社の帰りにしては早すぎる。この辺には良くわからない人たちがいる。
その先のマンションのところを左折して、裏道へと入る。
そのマンションのところには以前「大海老」というレストランがあった。閉店してから20年だろうか30年になるのだろうか、よく覚えていないほど昔だ。
その向かいには、ドイツ料理のお店がある。ここも随分昔からやっている店である。昔ここでソーセージの定食を食べた。今度はジャガイモと肉を煮た定食が食べたい。ここの鹿の肉が美味しいと言っていた友人がいた。そんなものを食べてみると良いかな。
タッタ、タッタ、タッタ、妻はスピードを落とすことはない。
いけない、前を見ると、妻は20mぐらい先を歩いている。キョロキョロしながら歩いていてはいけない。
また、走った。少し、足に疲れを感じた。
続きは後日。
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