川島 誠の「ロッカーズ」を読んだ。思った以上に面白くなんだか得した気分。
これを読む前には、やはり川島 誠の「800」を読んだ。これは、陸上競技の800mの選手の話。
川島さんは陸上をやっていたらしく選手の目で書かれていて独特の面白さ。
先日、古本屋に入ったとき、この「ロッカーズ」があったので、あの人の書いた本なら面白いかもと、買ってきた。でも、陸上の人が今度はロックンロールなんて面白いのかな、なんて、ちょっと不安はあった。
これは、ギターのリンが一人称で自分史を語るように話は進む。無名の少年がロックと出会い、アマチュアからプロへそしてCDデビュー、突然売れ始め頂点へと進んでいく話。
リンが戸惑い、ロックへと進んでいくに従い、僕もこの本から離れられなくなってきた。
通勤のバスや電車の中で、夢中で読み進む。その中でリンは僕らに、
「好きになるこということだ。ただプレイを好きになることだ。(中略)才能が重要なのではない」という。
電車に座ってよんでいた僕の体にはロックの血が少し流れ始めたような気がした。
頂点を極めたバンドは解散へと進んでいく。悩むリンの心が、電車を降りて歩く僕の中に残っている。なんだかその悩みは僕の悩みのようにモヤモヤと心の隅にいる。その瞬間僕はリンだった。どうしたらいいのか悩んでいる。
昔、オールナイトでヤクザ映画3本建てなんてよく見た。終わって外へ出ると見ていたみんな、なんだか、肩をいからせて歩いている。薄暗い路地の前を通る時そこから、ドスを持った男が飛び出してくるような気がした。
そんな時とおんなじ気分だった。
前から、おばさんが歩いてくる。
「ヘイ、ベイビー今夜一緒に寝るかい!」なんて叫びそうになった。