総タイトル:【「独行道」・・・流浪・孤独の境涯を渡った宮本武蔵・・・「宮本武蔵 剣と人―遺書『独行道』に秘められたその実像」を読んで】
放浪・流浪・客寓の境涯で、生涯独身を貫いた宮本武蔵。亡くなる1週間前に自省して記した「独行道」。後悔や失敗の多い人生を送った武蔵が、剣の道・武士道に生きる自らの理想をしたためた「独行道」。そして武蔵の兵法書である「五輪書」。
「宮本武蔵 剣と人―遺書『独行道』に秘められたその実像」(著者:渡辺誠氏、出版社:新人物往来社、出版日:2002/12/30)
本書を読みました。
老身の身となって欲心へのこだわりからも解放されて、悟りや諦めといった諦観の念を抱き、自らの孤独な生涯を顧みて書いた、禁欲精神に満ちた「独行道」。
自利・自助の人で、その自利・自助を極める、自分の道を修行して極める事で、自然とそれが利他に繋がるものと考えた武蔵。
29歳までに60余度の試合に勝利して来た事を30歳を越えて顧みて、戦いにおける相手に対する勝敗の原因が相手か自分かという様な「相対的」に考えるのでは無く、「絶対的」なものを剣の道に求め始めた武蔵。(因みに、私は唯一の創造主を絶対的存在と考えます。)
「非常識人」として創造的人生を送った武蔵。世の習いとして非常識人の武蔵には多くの敵が出来、それ故の失敗を重ねた事からの自省も籠めて、怨まず、妬まず、人のせいにせず自らを反省し、相手と比べず絶対的なもの・真理に善悪の判断の拠り所を求め、その様な自戒を籠めた武蔵。
「五輪書」の五巻を通して、兵法における様々な「拍子」を説き記した武蔵。リズム・調子・時である「拍子」は「機会」でもあり、兵法書の「五輪書」においての「拍子」とは、「勝ちに繋げる機会」。その様々な拍子の内の一つとして「背く拍子」が在り、相手の拍子に乗らずに却って相手に逆らい違える拍子を用いた武蔵。
本来は武士に有るべき正義の為の道徳的勇気、平静・冷静沈着・心の落ち着きとして表れる真の勇気、感情を安易に表さずに忍耐による鍛錬で克己心を培って得る本当の大きな勇気、それらを心掛けて孤高の精神を持った武蔵。
逆境の境涯の中、「渡を越し」て兵法から常に離れず、生涯剣の道を続け貫いた武蔵。
「独行道」二十一ヵ条
一、 世々の道をそむく事なし・・・天然自然の本性に背かず、渡世の基に違背せず、それぞれの道(職業)に励む事。
一、 身にたのしみをたくまず・・・放浪の修行者の諦観。
一、 よろずに依怙の心なし・・・創造的人生の為に、万事に対してこだわりを無くす。
一、 身をあさく思(おもひ)、世をふかく思う・・・自然への畏敬、宇宙・自然・世界の奥深い大きさに対する浅く小さな一人の人間
一、 一生の間、よくしん(欲心)思はず・・・諦観から思う、青壮年期の欲心の虚しさ。
一、 我事におゐて後悔をせず・・・順境時の慢心驕りの心に気を引き締め鎮め、逆境時にも同様にして後悔せぬ様に。
一、 善悪に他をねたむ心なし・・・無常・不遇の境涯に在っても他を妬まず。
一、 いづれの道にも、わかれをかなしまず・・・流浪・客寓の境涯故の覚悟。
一、 自他共にうらみかこつ心なし・・・非常識人の故に世に多く敵を作るとも、怨まず我が身を託つかず。
一、 れんぼ(恋慕)の道思ひよるこころなし・・・剣を妻とし修行に励む。真の武士。
一、 物毎にすき(数寄)このむ事なし・・・物に執着せず。
一、 私宅におゐてのぞむ心なし・・・「平居閉静にして、或は連歌、茶、書画、細工等にて日月を過了す」。
一、 身ひとつに美食をこのまず・・・武士の道としての粗食。剣の道は心身息一如の道。克己心。
一、 末々代物なる古き道具所持せず・・・道具を尊ばず、道具を活かす実利主義。
一、 わが身にいたり物いみする事なし・・・物に対する先入観を持たず、実利を求める。
一、 兵具は各別(格別)、よ(余)の道具たしなまず・・・剣の道の根本・兵具に対する深い造詣と、他の道具をたしなまない覚悟。
一、 道におゐては、死をいとはず思ふ・・・勝つ為の命がけの修行。兵法の道に殉ずる大信心が強さの根本。勝ちに繋げる機会である「拍子」。
一、 老身に財宝所領もちゆる心なし・・・財産に執着するは好ましからず、老身となり弟子のみ用いる。
一、 仏神は貴し、仏神をたのまず・・・兵法の道に影響を受ける禅、自然への畏敬、自利・自助の人。
一、 身を捨ても名利はすてず・・・捨て身の勝利、武士道における真の勇気を持つ孤高の精神。
一、 常に兵法の道をはなれず・・・逆境に在っても常に離れず続け「渡を越す」事で、独創的人生が開ける。
「五輪書」九箇条(「五輪書・地之巻」より)
第一に、よこしまになき事をおもふ所・・・邪心を持たぬこと。
第二に、道の鍛錬する所・・・頭では無く、身体で実践し自得すること。
第三に、諸芸にさはる所・・・兵法のみならず、広く諸芸に触れること。
第四に、諸職の道を知る事・・・様々な職業に目を向けて、視野を広くすること。
第五に、物毎の損得をわきまゆる事・・・物事の利益損失をよく分別すること。
第六に、諸事目利を仕覚ゆる事・・・物事の真実を見分ける鑑識力を培うこと。
第七に、目に見えぬ所をさとつてしる事・・・現象面に現われない本質的な部分を感得すること。
第八に、わづかなる事にも気を付くる事・・・物事の細部にも注意を払うこと。
第九に、役にたたぬ事をせざる事・・・役に立たない事に時間と労力を費やさぬこと。
剣客の忌む七念:「驚(おどろき)」、「懼れ(おそれ)」、「疑(うたがい)」、「惑(まどい)」、「緩(ゆるみ)」、「怒(いかり)」、「焦(あせり)」。
孔子「論語」より
吾れ十有五にして学に志す
三十にして立つ
四十にして惑わず
五十にして天命を知る
六十にして耳順う(したがう)
七十にして心の欲する所に従いて矩を踰えず(のりをこえず)
関連・参考文献(サイト)↓↓
・播磨武蔵研究会「宮本武蔵」
関連・参考動画↓↓
掲載動画より
「独行道」 作詩:杉山義法氏
山に誓い 海に祈る
熱き想い 胸を焦がす
嘲り笑う 人はあれど
ほかに道はなし
誰が知ろう 大地を走る
風の強さ 風の心を
なんぞ恐れん 歩き続ける
あゝ独行道
胸を張れ 眉を上げよう
闘いの日々
夢半ばに 傷つこうと
独り我は行かん
放浪・流浪・客寓の境涯で、生涯独身を貫いた宮本武蔵。亡くなる1週間前に自省して記した「独行道」。後悔や失敗の多い人生を送った武蔵が、剣の道・武士道に生きる自らの理想をしたためた「独行道」。そして武蔵の兵法書である「五輪書」。
「宮本武蔵 剣と人―遺書『独行道』に秘められたその実像」(著者:渡辺誠氏、出版社:新人物往来社、出版日:2002/12/30)
本書を読みました。
老身の身となって欲心へのこだわりからも解放されて、悟りや諦めといった諦観の念を抱き、自らの孤独な生涯を顧みて書いた、禁欲精神に満ちた「独行道」。
自利・自助の人で、その自利・自助を極める、自分の道を修行して極める事で、自然とそれが利他に繋がるものと考えた武蔵。
29歳までに60余度の試合に勝利して来た事を30歳を越えて顧みて、戦いにおける相手に対する勝敗の原因が相手か自分かという様な「相対的」に考えるのでは無く、「絶対的」なものを剣の道に求め始めた武蔵。(因みに、私は唯一の創造主を絶対的存在と考えます。)
「非常識人」として創造的人生を送った武蔵。世の習いとして非常識人の武蔵には多くの敵が出来、それ故の失敗を重ねた事からの自省も籠めて、怨まず、妬まず、人のせいにせず自らを反省し、相手と比べず絶対的なもの・真理に善悪の判断の拠り所を求め、その様な自戒を籠めた武蔵。
「五輪書」の五巻を通して、兵法における様々な「拍子」を説き記した武蔵。リズム・調子・時である「拍子」は「機会」でもあり、兵法書の「五輪書」においての「拍子」とは、「勝ちに繋げる機会」。その様々な拍子の内の一つとして「背く拍子」が在り、相手の拍子に乗らずに却って相手に逆らい違える拍子を用いた武蔵。
本来は武士に有るべき正義の為の道徳的勇気、平静・冷静沈着・心の落ち着きとして表れる真の勇気、感情を安易に表さずに忍耐による鍛錬で克己心を培って得る本当の大きな勇気、それらを心掛けて孤高の精神を持った武蔵。
逆境の境涯の中、「渡を越し」て兵法から常に離れず、生涯剣の道を続け貫いた武蔵。
「独行道」二十一ヵ条
一、 世々の道をそむく事なし・・・天然自然の本性に背かず、渡世の基に違背せず、それぞれの道(職業)に励む事。
一、 身にたのしみをたくまず・・・放浪の修行者の諦観。
一、 よろずに依怙の心なし・・・創造的人生の為に、万事に対してこだわりを無くす。
一、 身をあさく思(おもひ)、世をふかく思う・・・自然への畏敬、宇宙・自然・世界の奥深い大きさに対する浅く小さな一人の人間
一、 一生の間、よくしん(欲心)思はず・・・諦観から思う、青壮年期の欲心の虚しさ。
一、 我事におゐて後悔をせず・・・順境時の慢心驕りの心に気を引き締め鎮め、逆境時にも同様にして後悔せぬ様に。
一、 善悪に他をねたむ心なし・・・無常・不遇の境涯に在っても他を妬まず。
一、 いづれの道にも、わかれをかなしまず・・・流浪・客寓の境涯故の覚悟。
一、 自他共にうらみかこつ心なし・・・非常識人の故に世に多く敵を作るとも、怨まず我が身を託つかず。
一、 れんぼ(恋慕)の道思ひよるこころなし・・・剣を妻とし修行に励む。真の武士。
一、 物毎にすき(数寄)このむ事なし・・・物に執着せず。
一、 私宅におゐてのぞむ心なし・・・「平居閉静にして、或は連歌、茶、書画、細工等にて日月を過了す」。
一、 身ひとつに美食をこのまず・・・武士の道としての粗食。剣の道は心身息一如の道。克己心。
一、 末々代物なる古き道具所持せず・・・道具を尊ばず、道具を活かす実利主義。
一、 わが身にいたり物いみする事なし・・・物に対する先入観を持たず、実利を求める。
一、 兵具は各別(格別)、よ(余)の道具たしなまず・・・剣の道の根本・兵具に対する深い造詣と、他の道具をたしなまない覚悟。
一、 道におゐては、死をいとはず思ふ・・・勝つ為の命がけの修行。兵法の道に殉ずる大信心が強さの根本。勝ちに繋げる機会である「拍子」。
一、 老身に財宝所領もちゆる心なし・・・財産に執着するは好ましからず、老身となり弟子のみ用いる。
一、 仏神は貴し、仏神をたのまず・・・兵法の道に影響を受ける禅、自然への畏敬、自利・自助の人。
一、 身を捨ても名利はすてず・・・捨て身の勝利、武士道における真の勇気を持つ孤高の精神。
一、 常に兵法の道をはなれず・・・逆境に在っても常に離れず続け「渡を越す」事で、独創的人生が開ける。
「五輪書」九箇条(「五輪書・地之巻」より)
第一に、よこしまになき事をおもふ所・・・邪心を持たぬこと。
第二に、道の鍛錬する所・・・頭では無く、身体で実践し自得すること。
第三に、諸芸にさはる所・・・兵法のみならず、広く諸芸に触れること。
第四に、諸職の道を知る事・・・様々な職業に目を向けて、視野を広くすること。
第五に、物毎の損得をわきまゆる事・・・物事の利益損失をよく分別すること。
第六に、諸事目利を仕覚ゆる事・・・物事の真実を見分ける鑑識力を培うこと。
第七に、目に見えぬ所をさとつてしる事・・・現象面に現われない本質的な部分を感得すること。
第八に、わづかなる事にも気を付くる事・・・物事の細部にも注意を払うこと。
第九に、役にたたぬ事をせざる事・・・役に立たない事に時間と労力を費やさぬこと。
剣客の忌む七念:「驚(おどろき)」、「懼れ(おそれ)」、「疑(うたがい)」、「惑(まどい)」、「緩(ゆるみ)」、「怒(いかり)」、「焦(あせり)」。
孔子「論語」より
吾れ十有五にして学に志す
三十にして立つ
四十にして惑わず
五十にして天命を知る
六十にして耳順う(したがう)
七十にして心の欲する所に従いて矩を踰えず(のりをこえず)
関連・参考文献(サイト)↓↓
・播磨武蔵研究会「宮本武蔵」
宮本武蔵 剣と人―遺書『独行道』に秘められたその実像価格:¥ 2,592(税込)発売日:2002-12 |
関連・参考動画↓↓
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YouTube: 役所広司「独行道」
掲載動画より
「独行道」 作詩:杉山義法氏
山に誓い 海に祈る
熱き想い 胸を焦がす
嘲り笑う 人はあれど
ほかに道はなし
誰が知ろう 大地を走る
風の強さ 風の心を
なんぞ恐れん 歩き続ける
あゝ独行道
胸を張れ 眉を上げよう
闘いの日々
夢半ばに 傷つこうと
独り我は行かん
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