Watch Israel!:ネタニヤフ首相汚職・起訴勧告、余り違わぬ労働党後継候補、左派・リベラルの和平を望む独自性、白人アシュケナジ至上主義による有色スファラディ差別、右翼のカメラに見る監視社会
イスラエル警察は2月13日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する長期捜査の結果、2件の汚職疑惑をめぐり同首相を起訴するよう勧告すると発表した。アメリカやオーストラリアからの賄賂や、報道関係者との秘密契約の締結を企図し偏向報道を依頼した容疑であるという。尚、正式起訴に踏み切るかどうかは数週間から数か月かかる見通しであるという。
しかし残念な事に、パレスチナ自治政府のヨルダン川西岸地区や東エルサレムへの違法な行為、違法占領、植民地の拡大、パレスチナ人達への人権侵害、テロ行為(暗殺、暴力、脅迫、破壊活動等)等は、国際的には違法であろうとも、イスラエル国内においては合法の為か、全く問われる事が無い。
1996年から1999年までの第一次政権で3年余り、2009年から現在までの第二次・第三次政権でもうすぐ9年となり、併せて約12年間政権を執ってきたネタニヤフ首相が、起訴される方向に近付いていると共に、国内での大規模な首都テルアビブ市民による辞任要求・弾劾デモも併せて、辞任に追い込まれようとしている。そして、その後継者として取り上げられているのが、昨年7月に党首に就任された労働党のアビ・ガベイ氏であり、世論調査でも大きく支持を得ている事が判明している。
ガベイ氏の先祖は、元々は、モロッコのカサブランカに住んでいたが、両親がモロッコから現イスラエルの在るパレスチナに移住して来た。ユダヤ人の両親の下、8人兄弟の7番目として、エルサレムの近くに生まれた。北アフリカのモロッコ出身である為、おそらく血統的ユダヤ人、本物のユダヤ人であるものと思われる。2015年から2016年、ネタニヤフ連立政権の下で環境保護大臣を務められたが、ネタニヤフ首相が極右・イスラエル我が家のアヴィグドール・リーベルマン党首の意向を受け、著名なモーシェ・ヤアロン国防相を失脚させ、政権が右寄りへ傾きシフトする事を懸念し、その事に抗議して、大臣を辞任して政権を去られた。また、ネタニヤフ氏とリーベルマン氏との間には、次期首相としての密約が交わされていた。そしてその後、労働党に入党された。
社会民主主義の労働党は中道左派であり、無党派層から大きな支持を得る。現在の右翼の政権とは異なり、パレスチナとの二国家間での解決による共存・融和・和平を望んでいる。しかし労働党は、中道ハトヌアと共に連立を組む野党第一党のシオニスト連合であり、その名前の通り、シオニズムによって現イスラエルの存在を認めるだけでは無く、パレスチナ自治政府の領域内に作られた入植地からの撤退を考えてはいない。120議席を有するイスラエルのクネセト(立法府)の内、与党第一党でネタニヤフ首相が党首であるリクードは30議席を保有し、それに対してシオニスト連合は24議席を保有する。またそのシオニスト連合の内、労働党は19議席を保有する。また現在、連立政権を組む与党が66議席、、野党が54議席となっており、議席数は拮抗している。
パレスチナとの和平協定締結を成功させる事が出来ると信じているガベイ氏は、次の様に述べる。
「協定締結にたどり着けるかわからないが、我々は再び力を尽くさなければならない。これ以上無視するわけにはいかない。」
「ベンヤミン・ネタニヤフ氏は、外交協定締結など無理だと思っているし、その気もない。この2年半、彼は『2つの国家』という言葉を口にしていない。」
「しかし、私には1つわかることがある。そのために努力するのが我々の義務である。」
しかしガベイ氏は、自らが首相に就任した後は、和平協定にヨルダン川西岸のユダヤ人入植者撤退を盛り込まないとし、譲歩できない入植地「定住居留区」について、
「私はこれらの地域で、ユダヤ人の数はできるだけ少ない方がいいと考えている。これは明白な問題であり、それを悪化させる道理はない。」
「我々は創造的な解決法を見つけることができる。パレスチナ人の多くが求めているのは、信頼に値し、交渉することが可能で、決断を下すことのできる人間だ。」
またガベイ氏は、イスラエル議会内のアラブ系派閥を連立内閣から排除しない意向と、ユダヤ人の歴史的遺産を軽視する左派を非難する事を述べた。
一方、パレスチナ自治政府のハナン・アシュラウィ氏は、
「労働党がリクード党に反対するのではなく、競うことで、自らの道を見失っているのではないか(、と懸念を表明)。」
「労働党は、今、リクード党とは異なるもの、ではなく、同一線上にいる(と述べられ、)これでは、希望が持てない。」
また、イスラエルのリベラル派の日刊新聞ハーレツ(Haaretz)は論評し、
「労働党の党員は、左派団体のメンバーのように、自党の基本的価値観への忠誠心を示すリーダーを持つべきだ。」
「労働党は自らの地位を一新するために危険を冒し、比較的名の知られていない候補者に賭けた。しかし、実は無意識のうちに自らの世界観がすり替えられていたと知ったら、彼らは嘆くことだろう。」
イスラエルの現在の主な政党を、以下に記す。(参照:ウィキペディア「イスラエルの政党」)
◆ マーヴァク:0 ― 左翼(極左?)。共産主義。新左翼組織「マツペン」(=反シオニズム。イスラエル国家そのものを否定。イスラエル共産党から分離した新左翼。)から分裂。毛沢東主義。
◆ マーヴァク:0 ― 左翼(極左?)。共産主義。トロツキスト。正式名「社会主義者闘争運動」。毛沢東主義「マーヴァク」とは無関係。
◆ ジョイント・リスト(アラブ系政党):13
・バラド:3 ― 親パレスチナ・反シオニズムアラブ系イスラエル人政党。
・タール:2 ― アラブ復興運動。アラブ系イスラエル人政党。
・ハダシュ:5 ― 左翼(極左)。社会主義(共産主義)。正式名「平和平等民主戦線」。パレスチナ難民の帰還を主張。アラブ系議員が多いが、ユダヤ系議員もいる。イスラエル国家そのものは否定していないレベルの反シオニズム。
○イスラエル共産党:3 ― 略称「マキ」。マルクス・レーニン主義。イスラエル建国を肯定しつつ領土拡大には反対するレベルの反シオニズム。ハダシュの一翼を担うが、ハダシュの全議員というわけではない。ユダヤ人がつくった政党であるが、イスラエル国籍を持つユダヤ人、アラブ人ともに党員になることができる。
・その他無所属?:3
◆ ダアム:0 ― 左翼。1995年にイスラエル共産党から分離した新左翼。
◆ メレツ:5 ― 左翼。社会民主主義。世俗。環境保護主義。ユダヤ人政党の最左派。ヨルダン川西岸からの撤退とパレスチナとの平和共存を掲げる。前身は「マパム」。
◆ アレ・ヤロク:0 ― 左翼?。大麻合法化、環境主義などを掲げる。
◆ シヌイ:0 ― 中道(中道右派?)。メレツから分離。政教分離を訴える。自由主義インターナショナルのメンバー。
◆ イェシュ・アティッド:11 ― 中道。世俗。党名は「未来がある」の意。
◆ シオニスト連合:24
・労働党:19 ― 中道左派。社会民主主義。シオニスト。建国の父ベン=グリオンが所属した「マパイ」の流れ。オスロ合意を締結したラビンが所属した。
・ハトヌア:5 ― 中道。カディマに所属するツィッピー・リヴニ氏が立ち上げた党。
◆ カディマ:0 ― 中道。シオニズム。イスラエル・パレスチナの共存を掲げる。但し、建設された分離壁を国境とする案を唱えている。
◆ クラヌ:10 ― 中道。リクードを離党したモーシェ・カハロン氏が立ち上げた党。「みんなの党」。
◆ リクード:30 ― 中道右派。ナショナリスト。非武装のパレスチナ国家建国を限定的に認める(かつてはパレスチナ国家そのものに反対)。ユダヤ人にとって重要な場所(ホメッシュなど)の併合を目指す。
◆ シャス:7 ― スファラディム・ユダヤ教超正統派。主な支持基盤はミズラヒム貧困層など。貧しい子供たちに無料で給食・補講を行う学校「エル・ハ=マーヤン」を設置。但し、パレスチナにはあまり寛容的ではない。
◆ ユダヤ・トーラー連合:6 ― アシュケナジム・ユダヤ教超正統派。アシュケナジーの超正統派ユダヤ教徒を代弁する党。シオニズムやパレスチナ問題とは距離を置く。
◆ ユダヤ人の家:8 ― 極右。正統派。入植者右派。元は「国家統一党」の構成党のひとつ。イスラエルとパレスチナの「2国家共存」という和平交渉の枠組みの撤廃を主張
◆ 強いイスラエル:0 ― 極右。国家統一党から離脱。
◆ 我が家イスラエル:6 ― 極右。シオニスト。ナショナリスト。ロシア系ユダヤ人(アシュケナジム)が多く所属。「住民・土地交換論」を提唱。かつてパレスチナとの領土的譲歩に断固反対していた。
◆ エレツ・イスラエル・シェラヌ:0 ― 極右。「我がイスラエルの地」という意味。
(上記以外にも議席を持たない政党は多数。政党名に続く数字は議席数(2017/08/18現在、合計120))。
上記以外にも、極右政党は、対イランへの強硬姿勢を示している。
比較的、親パレスチナの政党であっても一長一短が有る様に思え、細かい所までは解らず、非常に大まかではあるが、上に寄るに従って左翼・親パレスチナ・反シオニズム・アラブ系・リベラルの傾向であり、下に行くに従って、中道、そして右翼・ユダヤ教、極右となる様に、順に並べて記載したつもりである。完全な理解の下では無い為に、並び順は必ずしもこの通りでは無い事は、悪しからず。
イスラエルでは、アフリカからの亡命、難民申請者が増加し、首都テルアビブでは難民の強制送還を要求する右翼系のデモが行われている。イスラエルの右翼のデモ隊は、厳しい移民政策を要求し、現在の右翼政権は、その右翼系市民の要望に応える様にして、移民の強制移住、追放の計画を発表した。
テルアビブ市民によるネタニヤフ首相の辞任要求・弾劾デモでは、右翼系の市民が、デモ参加者に向けてカメラを向ける。イスラエルは世界でも有数の「超監視社会」であり、言論も大きく制限されている。右翼は、リベラル・左翼系に対し、脅迫を行う。しかし日本では逆に、マスコミをはじめとしたリベラル・左翼系が、同じ様に保守系に向けてカメラを向けている。
血統的に本当のユダヤ人、スファラディであるにも関わらず、黒人である等の有色人種である事の故に、差別や追放、二級・三級市民扱いの苦しみを味わわれている方々だけでは無く、「白人」のフェイク・ユダヤ人(Fake Jews)、アシュケナジーの中にも、近年、自殺者が増える等の様々な問題が出て来ている。民主主義の国を装い、その実、アパルトヘイト(人種隔離政策)、レイシズム(人種差別)、監視社会、テロへの恐怖感の植え付け、右翼政権による憎悪のスパイラル(悪循環)等で、「良心」の有る方々が感受性が強いが為に、却って精神的な病に陥っているのだろうか?。鈍感な方々は、大概の場合、ふてぶてしくも、平気でいる事が出来るものである。
私は基本的には保守の考えでは有る。また、日本において俗に言われている所での右寄りの考えである。例えば、日本の憲法改正、憲法九条改正に賛成であり、首相・閣僚の靖国公式参拝に賛成、天皇の男系男子の継承の永続化に賛成、南京大虐殺や従軍慰安婦の強制等の捏造された歴史を正しく修正する事に賛成である。また、フェミニズムやジェンダーフリー、LGBTQには反対である。しかし、私は何事も是々非々で捉える為に、パレスチナ問題に関しては、100%パレスチナ側に立ち、不道徳・非人道的・傲慢で数々の犯罪を犯し続ける現イスラエルを100%否定している。そして、却って現イスラエルに関しては、左翼・リベラル系の方が大方正しい様に見える。確かに日本においても、左翼・リベラル系の方々は、社会的弱者、貧困層に目を向けた、人間的には優しく良心の有る方々が多い。右翼とか左翼と言った言葉に拘束されずに、固定観念に囚われず、周囲やお偉方、マスコミの評定に影響されずに、一つひとつの事柄を見ていく必要が有る。そういう事から、私はやはり、「無党派・無所属・独身」で、今後も独り孤独に発信していきたい。
本ブログ過去の関連記事
・2017/11/30付:「イスラエルとユダヤ社会の動揺・分裂・混乱、そしてユダヤ教徒の生き残り策?」
・2018/03/02付:「パレスチナとの和平を望むイスラエルのリベラル・左翼とタルムードを放せない超正統派、偽善の人権団体『ADL』と右翼政権の同性愛承認:Jews for Peace & Hypocrisy of "ADL"」
参考文献
・2017/12/03付・NewSphere:「ネタニヤフ首相の後任候補、労働党のガベイ党首 パレスチナ和平に意欲」
・2018/02/14付・AFP BB NEWS:「イスラエル警察、ネタニヤフ首相の起訴勧告 2件の汚職疑惑で」
・2018/02/14付・日本経済新聞:「イスラエル首相、起訴勧告で求心力低下 極右台頭、中東に火種」
・ウィキペディア:「イスラエルの政党」
関連動画
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