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NATOのウクライナ戦争、隠せない苦境 & ネオコンでは解けないウクライナ

2022-12-25 16:39:25 | WW1&2
今週はごたごたといろんなことがあった。

ゼレンスキーがUSAに行って議会で演説して、並み居る魔女みたいなばあちゃんたちと友情を温めてた。一部で、ほとんどハリーポッターの世界かよと笑われてもいたけど。

 


そんな中、日本では珍しい記事が出た。

 

リンクはここ。出所はJBPress。

本格攻勢に出始めたロシア軍と崩壊寸前のウクライナ軍
矢野 義昭


twitterでも書いたけど、だいたいアメリカで政府+主流メディアの強固な結合体が流す論調に逆らってる人たちが書いていることと同じ趣旨といっていいかと思う。結局、本職の軍人が見たら冷静に見るところウクライナ軍は単独の軍として戦いを続行できるような状態を維持しておらず、NATO軍兵士が入っているけど、それでも盛り返してなどおりませんというのは事実でしかないのだと思う。

しかし、別にそれらのオールタナティブまたはマイノリティー、あるいは反逆者たちが言っていることやロシア軍の発表だけを集めて論考されているのではなくて、本文を見ればわかる通り、NYTなどの主流派が書いた記事の中で書かれているものもたくさん含まれている。


■ 大攻勢の懸念

どうして軍人さんたちが何かハラハラしているのかというと、状況として、ロシア軍がもしここで大きな攻勢を取ったらNATOウクライナは耐えられそうにないので、軍事的な完全敗北みたいなモメントが来るんじゃないか、という懸念があるからかな、と思う。

通常毎日ロシアのメディアが提供しているのはドンバスの状況で、こんなマップ。ピンクの濃いエリアが2月までのいわゆるドンバス支配の地域で、薄いピンクがそこからの特殊作戦で支配下となり、9月末にロシア入りを選択した地域。その中の一部(薄いグレー)がNATOウクライナが塹壕掘って住民の迷惑顧みず要塞化していたあたりなので、まだ粘ってるところ。




だがしかし、軍事作戦の可能性は他にもあり得る。例えば、私がペイントのクレヨンで書き加えた粗末なものですが、矢印の方向への動きがあり得る。

物資はロシアから西へ西へとがんがん送られたし、今も動いてる。予備役を招集したし、逆にウクライナは人数が減ったので、現状ロシアが数的優位性も持ってる。



やらないかもしれない。でもやられたらNATOウクライナにできることは限界がありすぎる。

そして、外野が何を言おうとロシア軍が淡々と実行してきたウクライナの「脱軍事化」 がここで重大な意味を持つ。既に、中ぐらいの国の陸軍1つを徹底的に壊した。

(2021年にあと一歩で戦争勃発みたいな感じのムードになった時、米のマクレガー大佐(退役)が、ロシアのような軍事大国の玄関口で戦争をしかけようとするのは狂気の沙汰だと怒っていたが、まさにそれが現実になった恰好。)


昔、ドイツのみならず、ほとんどの欧州諸国が大なり小なり兵を出して、「よーしロシアはもらったぜ」とばかりに攻めた時のロシアからの反攻作戦では、レニングラードからスターリングラードまでの長大な線を動かして、西に押し返した。よくこんな作戦が出来たものだと何度考えても驚く他ない。



その中のウクライナ相当部分の作戦がここ。

1944年4月17日、赤軍、ドニエプル・カルパチア攻勢完遂


で、2022年においては、北の方、ベラルーシ戦線は平和的にベラルーシの首脳とロシアの首脳が話し合って(何年もやってきたことの成果ではあるわけだけど)、経済、文化の協力のみならず、軍事的協力体制もがっちり組みあがった。

News conference following Russian-Belarusian talks

外交的な表現ではそういうのが適切だろうけど、軍事的にはロシア・ベラルーシの一体化と呼ぶ方が適切だろうと思う。すぐにイスカンデル他のミサイルとS-400がベラルーシに配備される。

Belarus deploys S-400, Iskander missile systems — Lukashenko


これはNATOウクライナへのプレッシャーでもあるけど、欧州諸国へのプレッシャーにもなる。各国首都に余裕で届く強力なミサイルがロシア本土よりも西に動いたことになるから。(カリーニングラードにもあるけど、場が広がった)

ポーランド、ルーマニアにミサイルを置いてロシアを狙う、うしし、とか言ってた人たちは逆に目の前にミサイルが、それも自分たちが持ってるより優れたものを置かれた事態をどう考えているんでしょうかね。


■ 経済側面

軍事的には、引き続きNATOはこの先何をしだすんだろう、という懸念が最も大きな懸念だが、上述のように優位なロシアが場をコントロールしてる。

経済的には、春先にプーチンが言った通り、西側全体による経済的電撃戦は失敗し、その後も成功に転じたという話しもない。

経済電撃戦は失敗した by プーチン & ウクライナG7などに6兆円要請


もちろん、ロシア経済は、この電撃戦で大きな西側企業が大挙して引き上げ、輸入が途絶えといったことが起こったために相応の混乱が生じ、また、軍事紛争中だからそこへのリソースの割り当てが大きくなってバランスが悪くなったりといったことはあっただろうと思われる。

だけど、GDPの本年度の推計は、当初多くの人が予想(期待)したような、2割、3割の落ち込みではなく、数パーセント(2~3%)程度に留まる模様。また、これまで黒字続きだった財政は赤字に転落するものの、それも2%程度どまりらしい。2年続けて2%で3年目に1%以下という設計で赤字のマネージを考えているらしい。

(12月20日のプーチンのジャーナリストへの回答)

まぁ、最初から30%は国債発行を予定して予算組む人たちが何か言えるような話しじゃないね(笑)

つまり、経済戦線でも、ロシアが西側に屈服しなければならない状況にはない。だがしかし、それでも西側のロシア攻撃は終わらない。


■ ネオコンだけじゃない

なにしろ、つい12月5日には、例のプライス・キャップなる意味不明な、しかしながら西側のお金持ち各国が団結して騒いで決意を込めた措置が導入され、これに対するロシアの報復措置はまだ発表になっていない。これは明日か明後日発表されると予想されている。

また、日本付近では、こんな話しが出てきた。

国内損保、ロシア全域で船舶保険停止 LNG輸入に影響か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB23D7O0T21C22A2000000/

これは私が春先に予想した通りと言っていいかと思う。

このへんで書いた通り、

私としては、この再保険の話は重要だなと思ったりする。どうして西側がかける制裁が貿易を制限していくことになるのかというと、金融屋が金を貸さない、信用状発行しない、といったところもネックだけど、船舶を運行させないことによる部分も大きいんじゃないかと思う。

どうして船舶が動かないのか。それは保険屋が保険を引き受けてくれないからというのも一因だろうと思ってた。そして、保険屋もコンテナも物流業界のノウハウも圧倒的にヨーロッパ北西部が強い。そして揉めたらその北西部の仲介裁判所とか商業裁判所とかに判断を仰いで金の清算に至る。

過激派(文筆)の行方 & ユーラシアへ、アジアへ
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/1874be76736957cc1eb85691476586b8

ロシアはこうなることを予想していたからこそ、5月にユーラシアでの貿易環境を整える必要性を語り出し、その中で再保険という語が出てきたのだろうと思う。

Putin suggests creating Eurasian Export Center, trading houses
https://tass.com/economy/1456491

この状態をどうするのかについても今後また何か進展があるでしょう。


で、保険の話しを見て、twitter上ではアメリカが日本を不利な立場に追い込んでいる~みたいな感想を持った人が散見できたけど、こういう貿易もの、海洋法にからむもの一式というのは、アメリカが覇権を持つ前から存在しているもの。アメリカは途中でイギリスを出し抜いたり、かぶさってくる法律の網を振りほどいたりしていたことがある代物。

だから、再保証業界の判断というのはアメリカというより、ヨーロッパ、とくにイギリスの中の特定の人々の判断なんじゃなかろうか、など思ってみたりする。

そして、実のところ日本はこの仕組みの中の大きなプレーヤーなのだろうと思う。まぁいろんなところで極東の代理店みたいなものとして振舞ってきた。そして、この仕組みの中で上昇していくことを「俺たちもここまで来た」みたいに考えてきたのが日本人の戦後で、実際それはかなり達成しているんだろうとも思う。問題はそれがどれぐらい将来にわたって確からしいのか、というところ。

この話はもう少し掘り下げて何か書きたいと思っているけど、いずれにしても、巷にふらふら溢れている、ネオコンが悪い、ヌーランド他のへんな一式が狂人だからウクライナ紛争が起こり、こんなことになっている式の論はあたってない。

もっとずっと深い。そしてそれをロシアのリーダー層は十二分に理解している。だからこそ、さらに、狂った対応が生まれるんだろうとも思う。


■ オマケ

そういうことを考えてくると、現状優れたフォーカスを持っているのは、パブリック・ステート(表の国家)でないところ(ディープ・ステート)がどうもホントに大きな力を持っているのだな、という追っかけ方をしてきた人たちということになるんだろうと思う。

世界を苦しめる妄想誘発史観&正統DS問題



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4 コメント

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Unknown (にゃんこ)
2022-12-25 21:11:00
私も矢野氏のこの記事読んで、こんな記事が出るようになった事に驚きました。
それ以前には東郷茂徳のお孫さんの東郷和彦氏と東京工大教授(名前忘れた)の対談を読み、何かが変わってきたのかなと思いました。

メディアの情報が酷過ぎて、気分が悪い日々です。

でも大きな転換期に出くわしたこと、しかもリアルに映像で見ることが出来る。これを見ることが出来ることを凄い事だと思うようにしています。
いつも深い内容、ありがとうございます。
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思考が大日本帝国な西側大本営 (ローレライ)
2022-12-26 11:03:34
思考の大日本帝国化が止まらない,西側陣営大本営は欠陥ワクチン配給からウクライナ戦争まで集団自決志向である。
返信する
思いつきで行動している… (Rolling Stone)
2022-12-29 15:01:22
TAKUMI様、こんにちは。

もうご覧になったかと存じますが、ウクライナがとんでもないことを言い出しましたね。

>ウクライナ外務省は声明で、国連加盟国に対し、ロシアの安保理常任理事国としての地位剥奪と、国連全体からの排除を要請。1991年の旧ソ連崩壊以来、ロシアが「国連安保理の旧ソ連の席を不法に占拠」していると主張した。
ttps://www.afpbb.com/articles/-/3445030

ロシアの軍事行動、あるいは民間人に対する「虐待」を理由に常任理事国としての地位はく奪、ひいては国連からの追放を言い出したら、イラクやアフガン、シリアなどで軍事行動を展開(イラクについては大量化学兵器など結局見つかっていない!)してきたアメリカをはじめ、the Westにも盛大にブーメランだということは、ウクライナも承知の上なのでしょうか?

今年3月、アメリカの協力を仰ぐ際に、ゼレンスキーが真珠湾攻撃を引き合いに出したときも思いましたが、自国の「味方」にしたいはずの国々に刃を向けるなど、ウクライナ政府関係者らの思考回路、歴史認識を疑います。

それ以前に、ソ連崩壊後、ロシアが常任理事国の地位を引き継いだわけですが、それが不法占拠だというなら、この30年間ウクライナは一体何をしてきたのでしょうか。
結局、「北方領土は日本領」との国会決議をしたときもそうですが、大した考えもなしに行き当たりばったりで動いているという印象しか受けません。

日本の一部メディアは、「北方領土奪還のためにウクライナとの協力が不可欠だ」とピント外れの主張をしましたが、本当に日本が今のゼレンスキー政権と手を組んだら、逆に海の底深く引きずり込まれそうです。
返信する
痴呆バレリーナの舞い (石井)
2022-12-30 21:27:18
ミハルコフの「ベサゴンTV」では、ロシアの常識のある保守派の考えがよく分かります。ロシア1、24テレビ放映の他、現在youtubeでも視聴できます。
この前の放送で非常に感動的な話を語っていたので紹介させて下さい。
小生が前回書き込みしたメルケルの言葉、ドイツ語でbefriedenのミハルコフによる解釈。
「『ロシアをおとなしくさせる』とは何を意味するのか。それは大祖国戦争の結果を見直す試みであり、ソ連邦を卑しめることであり、2700万の犠牲を忘れることだ。」

このメルケルはじめ集団的西側は、ロシアを物理的に消し去ることを宣言したようなものですが、これに対しミハルコフは映画監督らしく文化面に着目しています。「ロシア文化、ロシア芸術、ロシア文学、ロシア絵画、ロシア音楽が存在しないとすれば、それは生ける屍だ。ロシア文化というのは、枯れゆく肉体を蘇らせる命の水のようなものだからだ。」その具体例としてある老婆の映像を示しています。
(最新のベサゴンTVの3030sから)
彼女は60年代ニューヨークの舞台で主役級で踊ったスペイン出身のバレリーナで、このビデオは2019年90才余、施設で亡くなる直前の撮影です。数年間アルツハイマーを患い体の動きもぎこちなく見えます。ところが「白鳥の湖」を聞いた瞬間、体が反応し音楽に合わせ踊ってみせています。その優美な動きは常人のそれではないと思いました。僕は何度見ても涙が出て来ます。通常の判断が出来ない人、しかも外国人の肉体の奥底にすら染み込む力を持つものがロシア文化にはあるように感じました。欧米日文化に同様なものがあるでしょうか。上辺、表面ではなく深部、本質を大事にするのはロシア的だと思います。

PS: 100年前の12月30日、ソ連邦が結成されました。ということで、この前の日曜日の晩、ロシア1で特別番組が放映されました。「赤いプロジェクト」
(スモートリム.ルのvideo/2536346)
今のロシアから見たソ連というのがよく分かる作りになっています。功罪両面、冷静に語られていますが、番組後半フルシチョフ以降の失政、党エリートと一般の格差、腐敗、社会の病、「改革」の失敗、対米外交の誤り、経済崩壊についてかなり批判的です。「ジノビエフクラブ」のメンバーによる脚本です。

PS2: 年の瀬に思うこと。新年は今年以上に多くの場面で因果応報がハッキリ見えることを願っています。ブログ主様、皆様、佳いお年をお迎え下さい。
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