今週は米FRBのパウエル議長の議会証言の話しを書こうと思っていた矢先、シリコンバレー銀行が倒産していた。
多くの銀行の倒産というのは何度も何度も噂にされて、資金繰りをなんとかしてそれでもダメだったーみたいに、債務超過が知られてしばらくして、こりゃあかんとなるものだが、ここの場合24時間で莫大な資金が引き出されてほとんど間髪入れず連邦預金保険公社管理下に置かれた模様。かなり異例のケースではなかろうか。
それはともかく、同行倒産の記事で、2008年のリーマンショック以来というのが枕詞のようについている感じがするけど、ああいう感じの破産騒ぎとタイプは違うと思う。2008年の時はクレジット・デフォルト・スワップとか保険が絡んでまさしくシステミックな波及効果を持っていた。今回のはこういう仕掛けではないとは思う。もちろん、何にどう波及するのかはこれからだが。
とはいえ、過去1年のFRBの急激な金利引き上げとそれと表裏になる債券価格下落がそろそろいろんなところで「効果」を生むのかしらと考えると、それはまた別の「システミック」なのかしらと思わないでもないけど、それはレトリックの問題であって実体の類似ではない。
FRBの政策金利はこんな感じで推移した。この1年がどれだけびっくりだったか見ただけでわかる。
しかもこれが終わってない。
結果的に、世界各国の日本人が参照するような国の政策金利には、日本を除いてみんな整数がついてる。えらいことですよ、ほんと。
■ パウエル証言
FRBのパウエル議長は、3月8日に米下院で方針の説明を行った。
Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
2時間以上の動画はこれ。
Fed Chair Jerome Powell delivers semiannual monetary report to Congress
とても簡単なまとめはこのへんの記事か。
情報BOX:パウエル米FRB議長の議会証言要旨
これを伝える多くの記事は、金利の上昇幅がどうなるのか、とターミナルレート(最終的な到達点)がどこになるのかといったところに焦点をあてていた。上の上げ方を見りゃまぁそれも無理のないところだけどそれ以上のものがあったと思う。
10年国債が4%近い金利を付けているんです、長期的に低金利が無限に続くことを前提にしないよう注意する必要があります、実際そうなりそうにないんですから、というのも、現状、聞き分けられない人たちが多数いる世の中にとっては重要な冷や水。
Now, we have the 10-year [Treasury yield] back close to 4%," said Powell. "And I think, we need to be careful not to assume that these secular low, longer term rates, will continue indefinitely because it doesn't look likely now."
また、気候変動にどう対処するかみたいな話しは、elected people(議員)の仕事であって、私たちの仕事ではない、各銀行がやってるのは知ってるけど、私たち(中央銀行)はそれに乗っていかないようにしている、みたいなやり取りなども、バカバカしいようで現状非常に重要な論点。
気候変動は地球的規模の問題だ→(どこかで誰かが方針決めて)→みんなで同じ対応をしましょう、という流れがここ二十年かそこら勝手にデフォルト化しているところがあるから。米連銀はそれこまで関与するのは我々の仕事ではないときっぱり応じている。
現在の債務の水準は持続可能か、という問いには、
可能だ(略)、だけど私たちは債務が経済よりも非常に速いスピードで伸びるという方向性にある、これが問題だ。これは長期的には当然、持続可能ではない(by definition in the long run unsustainable)
と答えている。
Sen. Lummis: Is your opinion that the level of debt we have is sustainable?
— Shaba🇨🇦🇦🇷🇺🇲⚽️ (@alfredosaba) March 8, 2023
Powell: Yes, but the problem is that we are in a path where the debt is growing substantially faster than the economy. And that is kind of by definition in the long run unsustainable".😬
Inflation⬆️ pic.twitter.com/RWahdGYRJR
これは言うまでもなく、永遠の借金は可能だとか、借金など問題ではないと言う人たちと対立する見解ですね。
前にも書いたけど、ディック・チェイニーは「赤字は問題ではない」と公言していたものだった。
アベノミクスの行方、「赤字は問題ではない」説、物量は大事
■ ユーロダラーとLIBOR
で、こういう成り行きだけでも、過去15年ぐらいの、超低金利でお金じゃぶじゃぶの時代は終わりなのだなという変化が見え、今後について考える土台の設定になっている。
だがしかし、これら金融界隈のかなりドラスチックな動きは昨今のインフレの問題だけに由来するものではないと思う。
ユーロダラーとそこに乗っかったLIBOR金利に引っ張られていた時代が、問題発覚から10年かかって本当にお終いになったということも重要でしょう。
ユーロダラーとは、アメリカ以外の国の銀行に滞留しているドル預金のことで、この額がアメリカ国が現実に管理してるドルよりずっーーと多いことが問題だ、と言われ続けて何十年という代物。
そこに、LIBOR金利という、アメリカでない、ロンドンで決まる、アメリカ、ヨーロッパ、日本の特定の銀行が決める金利が、様々なところで参照金利として使用されているという構造的な問題があり、その上、その金利の設定に不正が認められるというスキャンダルが発生し、以降10年ほど、関係各国がこの設定の廃止に向けて取り組んできた。
日本の金融庁が発行した各金融機関向けの通知が公表されている。「特定の銀行」に本邦のメガバンクが入ってることも書いてある。
LIBORの恒久的な公表停止に備えた対応について
多分、過去15年ぐらいとはこんな感じだったんじゃないのかな。
- 実体経済のドルよりずっと大きくなって誰も監督できてないユーロダラーが危機を引き起こし続けてきた、
- その過程でLIBORという参照金利が特定の銀行集団による操作を受けていた(LIBORスキャンダル)
- そのスキャンダルの暴露を契機に、別の仕組みが模索されていて実効に至ってる、
という流れの中で、 - それ自体にはまったく抗えないものの、粘り腰で自己利益を保全したいと考える集団が抵抗しまくっていた、
という感じ。
で、結果的に、LIBORレートはドル以外は2021年末に、ドルに関しては2023年6月に参照金利として機能しなくなる。
その代わりに米国ドルについては、米財務省によるSOFRという金利が参照金利となる。去年、このSOFR参照の取引がLIBORのそれよりも多くなったと言われていたので、徐々に切り替わって順調に廃止に向かっていたものと思われる。
ネット上で見つけたLIBORとSOFTの違いについての一覧。
なるほどと勉強になる。
■ 変化してる
そんな中、昨日はイランとサウジが外交関係を再開することに合意したというニュースがあった。中国が主導したというのを日経は気に病んでいるようだが、イランのレジーム・チェンジに奔走して、ISを倒すために懸命に働いたソレイマーニさんを米国大統領は暗殺したわけで、一体どうやって米国がこの地域で信頼に足る仲介者になれると思うのか。アホか。
イラン・サウジ外交再開 中国主導、米国抜き和解の衝撃
イランとサウジは、イエメンを巡って対立したことで大使を引き上げたところから切れているので、概ね7,8年ぶりの外交関係になるものと思う。
あわせて、イランはようやくSu-35購入することになった模様。守らないと話しにならないので、整備していくことでしょう。
イランがロシアとスホイ35戦闘機購入契約を締結
で、こういう動きが来ると、ペトロダラーの時代は終わりなのだという話しになって、今にもドルが崩れるみたいなことを言う人がいる。
だけど、これはそういう崩れ方をするものではないでしょう。一夜にして何かが変わるようなものではない。
上で見たように、まずもってユーロダラーの世界が縮小していく方向に行くんだろうと思うけど、それがどこにどう影響していくのか、誰かはっきりしたビジョン持っている人いるんだろうか? わかりません。
わかるのは、ロシアが堂々ルーブルで石油を売り、インドという大口顧客が大量にルーブルとルピーで取引をし、イランがいろんなことをしてここまで凌いだという実績によって、いわゆるペトロダラーという独占的地位は現実に崩れたということ。
それにより出てくる一つの大きな効果は、おそらく、借金など問題ではないとは言えなくなったようだ、ということではなかろうか。でもそれが顕在化していくにもまだまだ時間がかかる。
預金残高25万ドル以下の小口は保護されますが、顧客の多くはそれ以上の企業預金。その多くが現金引き出しに間に合わず、パァです。又、場所柄、スタートアップへの融資も多く、これらスタートアップの連鎖倒産は避けられないと思います。
企業、人口の流失が深刻なシリコンバレー、金融面でも崩壊の兆し。ゴールドラッシュの終焉。
リーマンとは違い、今回ハイテクに特化した銀行が破綻した意味は別物のように思います。
>ユーロダラーとは、アメリカ以外の国の銀行に滞留しているドル預金のことで、この額がアメリカ国が現実に管理してるドルよりずっーーと多いことが問題だ、と言われ続け
ちょっと待ってください、米国も他国に自分の国の通貨預けてたんですか?その癖してベネズエラとかロシアが自分達の軍事や経済で言いなりにならないとそれら諸国通貨の合衆国内預金分を没収してたってこと?
そうだとしたら米国の政財界が言う法と秩序とやらがどれだけ嘘っぱちで実体のない、守る価値がない物となるんでしょうね?