GHQ焚書図書開封 第59回
GHQ焚書図書開封 第59回 アメリカ外交の自己欺瞞
出演:西尾幹二
平成22年8月18日 放送
■今回のご本
アメリカの実力
著者:棟尾松治(朝日新聞記者)
発行社:背年書房
発行年:昭和16年(1941年)
アメリカへの留学経験のある人による1930年代末ぐらいのアメリカを描いた本。
本の中で西尾先生が取り上げられた内容はドイツにおけるナチスとユダヤの関係について。ナチスがユダヤ人をどう見ていたかについての記録でもあり、それを見ているアメリカがそのナチスを嫌っているということの記録でもある。
ということは、西尾先生も、まぁそう簡単な話ではないとおっしゃているけど、ナチスがだいたいどんなもので、さらにそのナチスをアメリカ人たちがどうも嫌っていることを知っていながら、わざわざナチスと組むという選択を日本はしたということ。
個人的には、このあたりの日本の歴史、つまりなぜナチスと組むことになったのかについては、実のところそれほど明らかではないのではなかろうかという思いを持っている。
単なる防共協定と軍事同盟の間には非常に大きな差異があり、それ相応の理由がなければならないのだが、それについてのはっきりしたタイムライン、関係者の考え方、相手方の出方等々は過去に確かに出版物はあるが通説を作るまでには至っていないのでは?
その他、アメリカが自分の「シマ」みたいな南アメリカには他国の介入を許さないのに、太平洋方面、なかんずく中国への介入に自分にも権利があると言い出す、その勝手さぐあいも指摘されている。
折しもウクライナ問題が起っているので、なおさら、アメリカって何だろうなぁと思わずにはいられない。ロシアとウクライナは隣国というだけでなく、自他ともに認める兄弟の人々で、23年前までは国として分かれていたことすらない。それなのに、アメリカはロシアがウクライナに口を出すのは主権侵害だといい、自分はクーデーターを仕掛けても無問題、とは一体どういう理屈が立つんだろう?
要するに、自分が進出しようと決めたところは自分のものだという、ものすごくわかりやすい「欲」こそアメリカという集団の推進力なんでしょう。だから、それを妨害する者は押しなべて彼らの視点からみて悪者、悪魔、ということになる。ただし、彼らの取り組みを援助することになった途端、翌日から自由の国となる。しかし、その翌々日事情が変われば悪魔になる。ここに法はない。彼らの欲と都合があるだけ。
番組後半、西尾先生は、『米国の世界侵略』という本を紹介されている(第125回で詳述)が、まさしくこのタイトルが生々しかったのが1930年代だったとあらためて思う。
そこからすでに80年以上すぎているので、私たちはアメリカが世界の支配者になっていることが所与の前提になっている。しかし、1930年代においては、まだ各国の利害の調整として最終的に戦争に訴えるという行動様式が認められていた時代でもあり、なんでアメリカがそう出張ってくるんだ、という違和感を持った外交官、ジャーナリスト等々は存在した。その中でも日本は目の前のチャイナにアメリカが出張ってきたことによって非常な妨害を受けていたので、アメリカの侵略性について非常に敏感であり、それが故にこのようなテーマの本が執筆されていたのだろうと思う。
アメリカが日本に対して焚書もどきを行ったことは、日本人としては許せないが、世界支配戦略としてはいいところに目をつけていたものだと思う。なぜなら、おそらく日本こそアメリカの世界支配のための工作を間近で、もっともよく目撃し、そして最大の邪魔者としてターゲットにされた人々だったからだ。
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GHQ焚書図書開封6 日米開戦前夜 |
西尾幹二 | |
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