ここ数か月、ロシアの話を書きながらしばしばドイツの話題を書いてるけど、今日もドイツネタ。私はあんまりドイツに興味はない方というか、どちらかというと苦手フィールドだったんだけど、最近いろいろと興味が持てるようになった。
やっぱりドイツというのは、西方ラテン世界ではないなと、遠いことを言いだしたくなる。しかし東方ギリシャでもないところが難しいんだろうな、と。いやほんとに。
というより、逆に西方ラテン世界というのは、コンスタンティヌスの寄進状に見られるようにとんでもなく胡散臭いところとも言えるわけで、そこを中心にものを見るというのは二重に馬鹿げた話じゃないかと、最近は真剣にそう思ってる。
そう言いたくなるのは私はフランス文学科卒で英語圏の生活も都合9年ぐらいあるので、何かこう、知らず知らずに欧州といった時の中心が著しく西に偏っていたようなのだ。自分でもだいぶしばらく気づいていなかった。若い時には、結構な「歴史の終わり」派だったとも思う。プロテスタント系の学校通ってたし、タブラ・ラーサ当然派で歴史の終わり派という、取り返しのつかないほどの近代人、というかその気になってた人だったとも言える。
しかし、だんだんと東へ東へ、そして黒海、カスピ海、モンゴルへ(まだチャイナまで到達できない)と興味の焦点が移動するにつれて、おかしいのはあんたらや、the West勢!と思うようになって、それと同時に、私はさらにおかしいやん、アジア人なのに、と思いだし今に至るというところ。とはいえドイツは難しい。ロシアというかスラブの人の方が私にはわかりやすいような感じはあるんですね、これが。なぜなんでしょうか。
Dr Udo Ulfkotte, journalist and author, on RT
それはそれとして、今日のドイツものは、ドイツのジャーナリストのおっちゃんが、僕は25年ぐらいジャーナリズムをやってるんだけど、その中では真実を伝えるというよりも、プロパガンダに加担してきました、という告白を行っている動画。ウド・ウルフコテ氏というフランクフルター・アルゲマイネ紙の元編集者の人らしい。
RTというロシアのインターネットテレビで長々とインタビューに応じたものを誰かが編集してアップした動画のようだ。
もちろん氏のきっかけはウクライナ問題で、自分を含めたドイツのジャーナリストが、本当のことを書くというより、とにかくロシアを悪く言う、人々がロシアに敵意を持つよう誘導するべく書いている、この状況に危機感を持ってらっしゃる。それはつまりドイツの大衆だけでなく欧州の一般人をも戦争に誘いこむようなことだ。
戦争というは偶発的に起ったりはしない。ジャーナリズム等がいろいろ書き連ねて敵意を煽って戦争になるんだ。だから、こんなことをしていてはいけないと僕は思って出て来た、みたいなことを語ってる。
ドイツはアメリカのコロニーで、そのジャーナリズムはアメリカの利益になるようなことを書き連ねている。それは偶然そうなってるんじゃなくて、いわゆる埋め込み取材というのもあるし、顎足付というか、招待されてだんだん仲間になっていって、彼らの利益のために書く人になっていくことが繰り返されている。
国内でも同じで、僕は何年か前に、ドイツBND(情報機関)が自分を訪ねてきて記事を書いてくれと置いていった資料を基に、リビアのカダフィーが秘密の毒ガス施設を作っているという、自分が調べたわけでもなんでもない記事を書いて、2日後にはそれが世界中に発信されたという経験もある。こんなのはジャーナリズムとは言わない、と。で、(こうやって暴露する態度を取ったからだと思うけど、)6回程家宅捜索をされた経験もあるけど、僕は子供もいないし、この姿勢を貫くとおっしゃる。
ある意味、なんの驚きもなく、まぁそうなんでしょうねと誰もが思っていたことを切々と語られてしまったという感じはある。
まぁでも報道ってそういう部分もあるでしょ・・・と大人の対応をしてみたくなるほど、なんでそんな青いことを言ってるんだ、でもあるんだけど、でも実際問題こういうことを言う人が皆無になった社会というのは、それはつまり情報が管理された社会なわけで、人々はその中で言葉も思考も失うということになる。自由だの民主主義だの言っているその言論はこうやってできてるんですよ、とその舞台裏を告発している、と。やっぱりこういう人が出てこないことには話にならんよなと思う。
■ ドイツとロシア、怪我の功名?
また、こういう方が出て来るのは、ロシアとドイツが敵対し戦争に誘導されていくというのは、やっぱりドイツ社会としては、見過ごせないほど重大な問題だというのもあるだろうと思う。
だって、まさしく「いつか来た道」だから。
ドイツは、70年近く前のナチス時代300万もの兵を仕立ててロシアに攻めて行った。そして、人々がそれに突っ込んでいったある種の背景には、ユダヤ人だけじゃなくて、スラブ人は劣等民族だから優秀なアーリア人、就中ドイツ人が指導すべきでどうしたこうしたというプロパガンダが繰り広げられていたことが知られている。それがつまり侵略行為に対する心理的な正当化として機能したわけですね。で、最後には結局トンデモナイ殺し合いに発展して自国を敗戦に導く結果となった、と。
だから、多少知識のある人&年取った人は、今回のようなあからさまなプロパガンダ状態でロシアを敵視するというのは、恐ろしいものを見せられているという気になるんじゃないでしょうか。
で、こういう人が出て来ることによって、動画の下のコメント欄ではドイツ人がドイツ語で、この狂った時代に勇気を持ってくれてありがとう! 俺らもあんたの後ろにいるからね、みたいなことを書きこんでいるんだけど、こういうのっていいなぁと思うわ。
思えば、春先からのキエフ政府のおバカな内戦をなんとかして止めようとしていたのはドイツだし、様々な個々のドイツ人が様々な場所で抗議集会をしたり、ロシア側に立って意見を述べているのもみた。で、こういうのを一般のロシア人は見ているんだろうし、大国ドイツが動いてくれることを頼もしくも思っていることだろうと想像する。いや、当局者同士ではいろいろ疑いもあっただろうし、きれいごとで行かない部分も絶対ある(と私は思ってる)。
でも、こうやって危機的な状況を前にすれば人の本性みたいなものも見えるわけで、その結果として、この2国はこうやって、過去のいろんないきさつを超えて、お互いの利害関係を超えて、いやそういうのがあるからこそ、尊敬しあえる関係になっていくのかもしれないなどとも思う。両方とも立派な集団なわけだしね。
オバマ率いるアメリカは、基本的にロシアとドイツの接近を阻止したかったんじゃないかと思うんだけど、一体何をしてるんでしょうね? クーデーター後の混乱によって亡くなったウクライナ人たちのためにも我々は平和な関係を築く義務があるのです、とか後のドイツとロシアの首脳が演説する日が来るかもよ。
■参考記事
冷戦をうまく使ったドイツ、冷戦にやられた日本
ドイツのコメディ番組「ウクライナ情報戦争」
ドイツ・ロシア再保障条約再び?
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