ロシアにとって9月30日は歴史に残る日となった。
ドネツク、ルガンスクの両人民共和国と、あらたに独立したヘルソンとザポロジエがロシア連邦入りをお願いして、ロシア連邦の大統領が承認し、諸々の国内手続きを済ませて編入となった。
IT IS DONE✅ 📄
— AZ 🛰🌏🌍🌎 (@AZmilitary1) September 30, 2022
Putin signed agreements on the accession of the DPR, LPR, as well as the Zaporozhye and Kherson regions to Russia
We are witnessing the biggest geopolitical defeat to the "West civilised society" political elites in the history in newer history... pic.twitter.com/F6Mj7G92S7
そして、この加盟手続きの後、プーチンが4州の代表者やロシア上院、下院、政府関係者を前に大きなスピーチを行った。
■ スピーチ
スピーチのスクリプトはここ。
Signing of treaties on accession of Donetsk and Lugansk people's republics and Zaporozhye and Kherson regions to Russia
4州の独立と編入は国連憲章第1条の人々の自決の原則に基づき正統なものであると述べた後、ノボロジアとは、ロシア史を紐解きピョートル・ルミャンツェフ、アレクサンドル・スヴォーロフ、フョードル・ ウシャコフが戦い、エカテリーナ 2 世とポチョムキンが新しい都市を建設し、私たちの祖父と曾祖父が、大祖国戦争の間中、最後まで戦った場所だ、と位置付けた。
その上で、2014年キエフで起きたクーデターに抵抗して立ち上がり命を落とした人々を私たちは忘れないと、戦いの中で死んでいったドンバスの英雄たちの名をあげながら悼み、黙とう。
4州の地域の何百万人もの住民の背後には、私たちの共通の運命と千年の歴史があり、人々はこの精神的なつながりを子から孫へと受け継いでいる。彼らは、大きな試練にさらされながらもロシアへの愛を伝えた。これは誰にも壊せないものであり、だからこそ、古い世代も、ソ連崩壊後に生まれた若い人も同じようにロシア編入に賛成票を投じた。
1991年にソ連邦が崩壊して独立となったが、その時のリーダー層は一般市民の意思を聞くこともなく行動しており、これにより多くの人が一夜にしてホームランドと切り離れ、偉大な国ロシアを壊してしまった。彼らはしかし自分が何をしているのか気が付いていなかったんだろう・・・と近い過去の話を紐解き、
90年代、ほぼコロニーのように扱われるに至ったがロシアは屈しなかった、
しかし、隙を伺って西側はロシアを壊そうと懸命になっている
そもそも西側はネオ・コロニアル体制の維持にやっきになっている
といった具合に、西側とはなんぞや問題にきて、ロシアは略奪対象として再度使われようとしているが、そんなことはさせないとも言い、彼らは1940年代の不況、1980年代を乗り越えるにあたっては他者を食い物にして乗り越えたという認識を示してる。
(そう思ってる人は多いでしょう。90年代以降の欧米の伸長とは結局のところソ連のリソースをゲットし、その場を民営化してコロニーとする旨味が源泉だと思う。この間、やたらに低金利、そして金を刷りまくったのも、投資をすればボロい儲けのあるところがたくさんあったから。中国への投資も同様。ものすごい勢いで金が動いた。その両国がターゲットにされる気はございませんと言っているのが現状)
その他いろいろ、興味深い認識が示されているので、時間のある日に1時間ぐらい割いて読んでみる価値は大有り。
■ 喜び
その後、モスクワの赤の広場前を大観衆が埋め、そこにプーチンと4州代表者が登場して大歓声となった。
Right now in Red Square #Moscow #Russia pic.twitter.com/oX1ng7nb8M
— stellasevas (@SgforgoodStella) September 30, 2022
これらの様子は、ドネツク等の場所でも人々が集まって動画を共有して感激を共にしていたようで、あっちこっちに動画があがっていた。
The reaction of Donetsk residents in the first minutes after signing the documents on joining 🇷🇺
— Maya (@MayaSashenka) September 30, 2022
The speech was streamed at the Saur Mogila - A historic moment in a historic place. pic.twitter.com/8TEJCJjjVn
1分34秒の手短なニュースサマリーはこちら。
Thousands of people across Russia celebrate historic reunification pic.twitter.com/wktf36KD9i
— RT (@RT_com) October 1, 2022
■ 新しいマップ
ということで新しいマップはこう。
加わった4州の面積は約10万平方キロメートル強だそう。ウクライナの総面積(約60万)の1/5という数字を見るのでそうなると、12万かも。
日本の本州(22万)の半分弱ですね。ちなみに日本の総面積は37.8万。
(ちなみに、この間ウクライナ軍の「歴史的勝利」とあおったハリコフ郊外の領土奪還の面積は2,000平方キロ、大阪府ぐらい)
見ればわかる通り、そして初日からそうであったように、軍事作戦の第一目標はヘルソン(KHERSON)だったんだろうと思うわけですよ。そうじゃないとクリミアを有機的に活用できない。水もなかったし。
その上で、その右隣のザポロジエはロシア連邦からのランドブリッジにとって是が非でも必要になる。
こうならないとドンバスを、さらには全体を守り切れないことを多くの人間がわかってるというところが、ロシア国民のすごいところだったなと思うし、それだけ歴戦の地でもあるということなんでしょう。
西側のウクライナ・ナチは、CIA/MI6あたりが書いたと思しき原稿に従って、アホみたにキエフに拘り、キエフは落とせません、落とせませんと騒いでいたが、それはつまり、ロシア/ソ連/ロシアが得意とする陽動作戦(military maneuver)にひっかかっておりましたということだと思う。キエフ近郊、オデッサ近郊をがたつかせる動きによって、騒がないではいられないようにして、騒がせていたとも言う。
■ 戦いは続く
で、9月に入ってからNATOウクライナ軍による数のまとまった攻撃が3回あったわけですが、それらはみんな今回の住民投票を崩すための賭けみたいなものだったのでしょう。一連の攻撃だけでウクライナ軍は9000人ぐらいの損害が出たという話し。そして、それでも懲りず、住民投票の間も間断なく砲撃を加えて、民間人に死傷者を出していた。
これは9月25日のドネツクの西側の様子なんだけど、青い丸がNATOウクライナからの砲撃。距離的に40キロから100キロぐらいの間で頻繁にロケット弾が飛ぶ。榴弾砲で撃ち合う第二次世界大戦かよ、みたいな局面が続いているのがドンバスの最後の200キロ✕250キロぐらいのところ。
これをどうするのか。クラマトルスク、スラビアンスクを落として終わりとはならないでしょう。だって、NATO諸国は続々と飛び道具と人を供給してくるんだから。
ということは、NATO諸国が終わりにすると言わない限り、残る選択肢は、200キロかそこらをバッファゾーンにしてその内側に守りの前線を作っておく、みたいな感じで進むんでしょうか。
ヘルソンとニコライエフの間も結構大きな撃ち合いが続いているけど、こちらはほぼ危なげなくロシア優位で防戦していると言っていいかと思う。しかしここも、あっちが止めないなら、前進して解決策を求めることになる。
これがたとえポーランド国境まで進んでも、NATO諸国が終わりにすると言わない限りは終わりにならない。あっちからの供給が可能だから。
先日ロシア連邦が追加で一部の動員をかけた時、逃げた人が結構な数いるというので西側メディアは大騒ぎをしていたが、ウクライナと違って一般人をカフェで拾って、通りで脅し付けて徴兵しているわけではない。
過去10年以内に退役した戦闘経験があり、近年も追加訓練を受けていた人たちの中から30万人を動員した模様。いわゆる予備役招集という言い方が適切な事態だろうと思う。こういう人たちが200万人ぐらいて、一般の徴兵となったら2500万が対象という構成だそうだ。ウクライナ並みに18歳から60歳までの男女とか言い出したら当たり前だがもっとずっといるけど。
これはアメリカ人のアナリスト、マーク・スレボダの記事にあった写真を拝借したもの。
アメリカじゃロシアの部分動員から逃れた人たちの大騒ぎしているけど、その後ろでは比較にならないほど多くの人が淡々と軍務に付いている。そして、マークがいうには、みんな忘れたのか、俺たちもイラクで予備役を招集しただろ、イラクとアフガニスタンに展開していた時にはその半数が実は予備役と州兵だったのを忘れたのか、と。(そう、アメってそんなに兵力に余力のある国じゃないんです、はい。)
マークの記事はここ。
Russia Calls Up its Reserves and the West Loses its Collective Sh*t
この中で、もう1つ重要な、知ってる人は知ってるけど知らない人は知らないことがあったのでご紹介。それは、ロシア軍の特別作戦の陣容は大きなものではなくて、ロシア兵15万、ドンバス民兵らの民兵組織4万から5万人だったので、ロシア軍はここまでで現在の兵力の10%ぐらいしか動かしてないとの指摘。
(年末までにロシア軍壊滅と言っていた人たちは何だったのだろう?)
どうしてこうなるのか。それは、本格的な戦争にするつもりなのかどうかをNATOに問うているからでしょう。するなら動員して、軍備持った警察みたいな行動(特別作戦)から本格的な戦争の展開にするという話し。今回の動員は1歩それに近づいた。NATOからのお返事はない。
ボリス・ジョンソン辞任&まだ何も始まってない by プーチン
一般的には、EUもNATOも我々は当事者じゃなくてウクライナを支援してます、という曖昧な態度に終始し、ロシア側は、ここにもあそこにも、これもあれもNATOの供与と人材やないかぁと指摘してるところ。
■ オマケ
拾ったマップ。
4が結構な問題だと思ってみたりもする。ドニプロにはオリガルヒの持ちものがいっぱいある。
本当の人々のリーダー、アレクサンドル・ザハルチェンコと言ってましたね。
名前を挙げられた方々の、重要で勇気のある決断を受けて今があるんだぜ、とグッときました。
こうした人の名を全て挙げていくのは無理だけど、
自分としてはザハルチェンコの名を言ってくれて良かった。
コンサートでもまたスピーチしてたけど、
「ようこそおかえりなさい」のフレーズ、良かった。
ザハルチェンコの名前を聞くと私は涙が出ちゃうので、今回もプーチンの話しで泣かされました。
こういう人々のリーダーが記憶されていくことが結局強い人々を作るんだと思います。
農地としての黒い土もどちらかといえばドンバス側優位。オリガルヒはいろいろ大変。
アメリカがつっこでる金はひょっとしてオリガルヒ周辺への賠償金なんじゃないかと楽しいことを考えたくなる。ヨーロッパの立つ瀬がない!!
特ににウクライナ西部だ。
その時にNATOとアメリカがどういう反応をするだろうか?自由と民主主義を言うだろうか?
あと、Wikipediaだと5/30の露軍による占領から先月後半の奪還にかけての記述が飛ばされてますね。どういう事なんでしょう。これって、単に露軍に逃げられただけでは?https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84