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< インド旅行記 >
これから、インド旅行の記録をこのプログに載せてゆく事にした。
10年前ほど前に書いたものだから現在の考えとはズレもあるのだが、基本的には当時のままで載せてゆきたい。
このプログでのカテゴリーは「インド旅行記」とした。
春と秋に旅行しているので、各タイトルは「春の旅(№)」、「秋の旅(№)」とする。
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インドへ
インドへ行こうと思った。神の化身といわれるサイババを一度見ておきたかった。
インドだけでなく他の国の人からも高く評価されているという。イエスのような人物だとも言われているらしい。
そういう人の生きる時代に生まれあわせたのは、非常に幸運な事だとも聞く。
もし本当なら、行ってみる価値は十分にある。本物かどうか、行って見てみればわかるかもしれない。とにかく行ってみようと思って準備を始めた。
インドについての知識は皆無に近い。ガイドブックを拾い読みしたが、あまりよくわからない。日本とはだいぶん事情が違うらしい。
英語が話せれば何とかなるらしいが、あいにく英語とは縁がない。しかし、ガイドブックが田舎の本屋さんに売っているくらいだから、行けば何とかなるに違いない。万事にいい加減になってしまっている私は、それ以上考えるのはやめて、とにかく行ってみる事にした。
出発
2月1日。正午に離陸予定のエア・インディアは遅れた。
成田のロビーで待つ間、ガイドブックを開いては閉じ、開いては閉じ、落着かない。今晩デリーで泊まるホテルさえ決めてないのだが、デリーに到着するのが真夜中ではどうなる事やら見当も付かない。先が思いやられ、心細くなってきた。
夕陽が寒空に沈んで暗くなった頃、飛行機はやっと成田を飛び立った。本当にインド行くのだと、実感する瞬間である。
飛行機は日本列島を南下し、しばらくしてから機首を西に向けた。
気が張っているせいで眠る事はできそうもない。窓の外を見ると、南の空に明るい星が見えている。たぶんカノープスだと思う。
飛行機はずっと左手にカノープスを見ながら東アジアの陸の上を飛んで、いつの間にかベンガル湾に出て、すぐにインドの上空に入った。インドは案外近いと思った。
インデラ・ガンジー空港はオレンジ色のもやに煙っていた。
空港の入国ロビーは、通風ダクトがむき出しになっていたり、ダクトに巻いてある断熱材がはげかけていたり、私の気持ちを引き締めるのには充分な雰囲気であった。
入国して、まず両替をすると、50RS札を100枚ステップルで留めたものを渡された。200ドルを一度に両替したためだろう。財布に入りきる厚さではない。
しかし札束を持つと少しリッチな気分になった。
あとで使ってみると50RS札は、千円札以上に使いでがあった。日本円に換算すると200円以下だから、日本人にとってインドは旅行しやすい国なのである。
機内で知り合った人達と最初の晩だけは行動を共にさせてもらうことにして、タクシーでホテルに向かう。
道には信号機もほとんどなく、明るい照明もあまりなくて、ほこりっぽい風が暗い商店街の横断幕をぱたぱたはためかせて吹いていた。とにかく、ここはインド、頭の中を切り替えなければ、とまた思った。
デリー
翌朝のデリーは、濃い霧に覆われていた。翌日の新聞の一面に霧の写真が大きく載っていたから、濃い霧は割と珍しいのかもしれない。朝の気温は、思いのほか涼しい。薄手の上着をはおってちょうど良いくらいである。
朝起きて、さて、何をしなければならないかと考える。もちろん、今までに考えていなかったわけではないのだが、はっきり決まっている事は何もないのである。「このまま何もしないで、デリーでゴロゴロしてそのまま日本に帰ってしまう事だってできる。」そう思う事で気を楽にさせていたのだが、実際にはそうもいかない。
選択肢はふたつある。ひとつは北インドの観光名所を回りながらだんだん南下して、サイババのいるバンガロールにたどり着くルート。もうひとつはデリーから直接バンガロールに直行するルート。
もちろんインド行きの航空券を手配する時は前者のルートを考えていた。しかし、デリーに着いてみるとやはり不安が大きく膨らんでくる。
そして結局、とりあえずサイババの所に行って、それから先の事はまた後で考えようという事にした。
バンガロールへ行くための航空券を買いにインディアン・エアラインに行く事にする。
タクシーの運転手に旅行代理店に連れて行かれ、少しもめたが、別に悪い代理店ではなかったらしく翌日の航空券が手に入った。ただし、手書きである。
インドの初日とあって、必要以上に力が入っているのが自分でも分かる。
日焼けしていない東洋人は目立ってしまうのだろうか。慣れない英語に四苦八苦し、ボールペンを欲しがる町の若者を振り切っていると、なんでこんな所にわざわざ来てしまったのだろうという思いが沸き上がって来た。
それで、オートリクシャをつかまえて、逃げ込むように国立博物館に入った。首都の国立博物館だけあって立派である。展示品は、ヒンドゥー教や仏教の像が主体だが、宝石の展示室などもある。その宝石の展示室はまさに金庫そのものの作りであった。
展示品の中に仏舎利があった。とてもきれいに展示してあったのは、仏教徒の気持ちに配慮しての事だろうか。
近頃信心深くなっている私は、仏舎利を前にして手を合わせないわけにはいかなかった。イワシの頭も信心から、まして仏陀の骨である。