『舞姫』現代語訳 第十班 金澤 ひろあき
【要旨】
少女の境遇と太田の援助
(現代語訳)
少女はとびぬけて美しい。ミルクのように白い色の顔はへやのともしびに映って、ほのかに赤みをさしている。手足がかぼそく上品なのは、貧しい家の女性には見えない。老婆が部屋を出ていった後に、少女は少しなまりがある言葉でこう言った。「許してください。あなたをここまでつれてきた無礼を。あなたはきっとよい人だと思います。私を決してお憎みにはならないでしょう。明日にせまっているのは、父親の葬式。頼みに思っていたシャウムベルヒ。あなたは彼のことをごぞんじではないでしょう。シャウムベルヒは(私が所属している)ビクトリア座の支配人です。シャウムベルヒの専属となってから、もう2年にもなったので、きっと私達親子を助けてくれると思っていたのに、人の苦しみにつけこんで、身勝手な要求(愛人になれというようなこと)をするとは。わたしを救ってください。(葬式の)金はわずかな給料をさいてお返しします。まして私が食べるものを食べなくても(きっとお返しします。)。それがだめなら、母の言葉に。」
少女は涙ぐんで身を震わせた。その見上げた目には、人にノーと言わせない媚態(びたい)(セクシーさ)がある。この目のはたらきは、自ら知っていてするのであろうか、または自ら知らずに無意識にやっているのであろうか。
私のポケットには2、3マルクの銀貨があったけれど、それでは足りるはずもないので、私は時計をはずして机の上に置いた。
「これで一時の急場をしのぎなさい。質屋の使いが、モンビシュウ街3番地に太田はどこだとたずねて来た時に、その代金を払うだろうから。 」
少女は驚き感動したようすを見せて、私が別れのために差し出した手に唇をあてたが、はらはらと落ちる涙を私の手の甲に注いだ。
(ポイント)
1、少女のピンチ ①父の死 ②葬儀の金がない。③シャウムベルヒにつけこまれる。
2、太田の援助 無償のもの
弱者を救うという気持ち・あわれみ=決して「恋愛」感情ではない.
太田の時計 東京帝国大学をトップで卒業した者に与えられる銀時計だったと思われる。太田のエリート人生の象徴である。もしそうであれば、太田は自分のエリート人生の象徴を、今出会ったばかりの少女に渡したことになる。以前ほどエリート人生に執着が無い心情になっていると言える。
【要旨】
少女の境遇と太田の援助
(現代語訳)
少女はとびぬけて美しい。ミルクのように白い色の顔はへやのともしびに映って、ほのかに赤みをさしている。手足がかぼそく上品なのは、貧しい家の女性には見えない。老婆が部屋を出ていった後に、少女は少しなまりがある言葉でこう言った。「許してください。あなたをここまでつれてきた無礼を。あなたはきっとよい人だと思います。私を決してお憎みにはならないでしょう。明日にせまっているのは、父親の葬式。頼みに思っていたシャウムベルヒ。あなたは彼のことをごぞんじではないでしょう。シャウムベルヒは(私が所属している)ビクトリア座の支配人です。シャウムベルヒの専属となってから、もう2年にもなったので、きっと私達親子を助けてくれると思っていたのに、人の苦しみにつけこんで、身勝手な要求(愛人になれというようなこと)をするとは。わたしを救ってください。(葬式の)金はわずかな給料をさいてお返しします。まして私が食べるものを食べなくても(きっとお返しします。)。それがだめなら、母の言葉に。」
少女は涙ぐんで身を震わせた。その見上げた目には、人にノーと言わせない媚態(びたい)(セクシーさ)がある。この目のはたらきは、自ら知っていてするのであろうか、または自ら知らずに無意識にやっているのであろうか。
私のポケットには2、3マルクの銀貨があったけれど、それでは足りるはずもないので、私は時計をはずして机の上に置いた。
「これで一時の急場をしのぎなさい。質屋の使いが、モンビシュウ街3番地に太田はどこだとたずねて来た時に、その代金を払うだろうから。 」
少女は驚き感動したようすを見せて、私が別れのために差し出した手に唇をあてたが、はらはらと落ちる涙を私の手の甲に注いだ。
(ポイント)
1、少女のピンチ ①父の死 ②葬儀の金がない。③シャウムベルヒにつけこまれる。
2、太田の援助 無償のもの
弱者を救うという気持ち・あわれみ=決して「恋愛」感情ではない.
太田の時計 東京帝国大学をトップで卒業した者に与えられる銀時計だったと思われる。太田のエリート人生の象徴である。もしそうであれば、太田は自分のエリート人生の象徴を、今出会ったばかりの少女に渡したことになる。以前ほどエリート人生に執着が無い心情になっていると言える。