京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
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過去形が今の問題につながるー「主流」NO、649を読んでー

2022-04-01 07:53:09 | 俳句
過去形が今の問題につながる
―「主流」NO、649を読んでー
金澤ひろあき
 疫病が大流行し、戦争が起こった。こう書くと中世の動乱のように思えるが、現代でそれが起こってしまった。
 ただし、中世には世界を滅亡させるほどの力を持つ武器はなかったが、現代にはそれが存在する。またグローバル化により、世界がつながり、遠くで起こった事件が、自分の命や生活に影響してしまう。
 「主流」NO、649の句の中で、
  眼に見えぬコロナが恐い戦時に似る    植田次男
 作者がこの句を作られた時は、まだロシアによるウクライナ侵略は起こっていないが、この恐ろしさが現実になってしまった。現実の不安と生存の危うさ。そういう切実なものを口語俳句は伝える。
  ところてん突き出すように兵は散った   暉峻康瑞
 この句を読んで、後に残された人々の悲しみが浮かび上がってきた。また今年この光景が再現されてしまった。過去形で書いたものが、今の問題につながっている。
  美は乱調にあり恋と革命と        田中陽
 亡くなった瀬戸内寂聴さんの追悼句だと思う。寂聴さんは九十九で亡くあられるまで語り続け、書き続けられた。根本に「平和」「自由」「真実」」への思いがある。
 もし生きておられたら、どう語られただろうか。
  ほほえみが残した「お大事に」心に貼る  鈴木喜夫
 暗い時代、こういうちょっとした優しさが救いになる。仏教では和顔施というそうだ。
  飛行雲疫病退治と書けないか       鈴木和枝 
  葉桜のような人と言われたい       大須賀芳宏
 願いや祈りが句になる時、その人自身や社会の姿が浮き彫りになる。
 鈴木さんの句は、ブルーインパルスが空に飛行雲で文字などを描く様子を見て、ふと口をついて出た言葉だと思う。
 大須賀さんの「葉桜のような」は、自身の姿を終わった後の葉桜に重ねようとしている。
 考えてみると、花の時期は短い。私達はその後の長い葉桜の時間を生きている。