「あまのがわ」NO、270読後感
金澤ひろあき
拝復 桜の季節です。京都は桜が多く、私は疎水ぞいの桜並木を楽しんでいます。
のどかです。同じ地球上でコロナが猛威を奮い、ウクライナで戦争が続いていることが信じられないぐらいに。
先日も「戦せぬ国の桜を見においで」という句が口をついて出て来ました。病も争いもない平和が訪れ、芸術を楽しめる世界を実現したいですね。
「あまのがわ」NO、270、ありがとうございます。いつもすみません。こんな世の中ですので、ほっとする句に目が行きます。
アリガトウと小声で呟く ありがとうと目元で笑う 副枝保子
こういう心の交流があるのです。さりげないけれど、言葉に現れてこない心の中の声のやりとりの深さ。それが人を救ったりするのです。
見送られて見送る 冬の暖かさ 中島すみれ
心の交流と「冬の暖かさ」の気づき。こんな暖かさが、ほっとします。こういう心に気づいたら、争いなどなくなるのでは。
冬葱に話しかけつつ土を寄せ ふじ本美代子
「がんばれよ」でしょうか、「ありがとう」でしょうか。共に生きているという感じがします。
我もまた変異したい 池田洋子
本当にまた「別のもの」に変身して、活力がほしくなる時があります。今の時代が、まさしくそうなのかもしれません。コロナ以後、「変異」は悪いニュアンスで使われていますが、それを逆転させている表現に注目しました。
被災地の酒一升 息子が帰る正月 一丸孝
もう10年 手の暖かさと君のイビキ 桑野真知子
大切な存在が、ほのぼのとします。大切な存在があるから、生きていることが実感できるのだとも言えます。
下萌えの大地踏みしめ仕事に行く 猪俣友子
土とともに生きているという実感が伝わります。そして春の訪れの喜びも。
サヨナラ 無骨な徳利に供える小菊 裏文子
なんだか死を悼んでいるかのようです。お酒を愛する人だったのでしょうか。そういえば、湯布院映画祭を始めた方が亡くなったという記事を読みました。その方のことかな。
大切な存在が浮かび上がってくるのです。
どんぐりを両手に抱いてリスは合掌 岡田桂子
満足そうなリスのポーズ。生きている喜びが映し出されていますね。生きる喜びが満たされる世界を切望します。