立憲民主党の枝野代表が自民党総裁選のTVジャックに対抗して「政権公約」を発信している。
経済政策では「貧困(世帯)を分厚い中間層へ復活させていく」としており、格差是正を生んだ「アベノミクス」の検証結果が報告された。
スタート地点を明確にした具体策を期待する。
農業政策では「規制緩和や競争力強化に偏重した農政を転換する」として、政府主導のコメの生産調整(減反)や農業者の戸別所得補償制度を復活させるという。
どちらの政策転換にも関わったことがあり言葉自体が懐かしい。
思い出すと、自民党政権で食糧管理法が廃止されてコメは市場取引に移行し、民主党政権でコメ、小麦などの主要作物は品目毎に生産費と市場価格との差額を算出し、農家単位で補給金を交付する政策に移行した。農政の大変革期だった。
集落単位で環境保全に取り組むと地域に補助金を交付するという目新しさもあった。ヨーロッパの「農家所得直接補償制度」が下敷きだった。
自民党が政権に復帰し、これらの政策がどのようなものになっているのかは分からない。民主党の農業政策は短命だった。
最近、農作業で農家に出掛けると、コメの消費量が減少し、価格も下がりそうだという声を聞く。立憲民主党はこうした現実に対応した政策として国が主導するコメの生産調整の復活を打ち出したのだろうけれど、手間も財源も掛かる。制度設計に留意して欲しい。
日本の農政は麦や原料糖等の関税差益を財源にして国内農業を保護する政策を基本にしていたが、WTOの過剰な補助政策に対するルールづくりが進み、日本では上記のような大きな政策転換が行われた経過がある。
農業政策は複雑で一般的に馴染みが無いが国の安全保障の柱である。長いこと基本にしていた関税差額を国内農業の保護に使うという手法はつまるところ消費者負担であり、金持ちも貧乏人も負担は同じという不公平が生じる。
民主党には公平性が担保される「納税者負担」による直接的な農業支援(直接所得補償)の必要性を分かりやすく説明して支持を得なければならない。
TVジャックしている自民党員、党友向けの総裁選挙は「これまで何が問題で私はこうしたい」という文脈は無い。
問題点の総括が無くて急にこれから出来るはずがない。当選の可能性の低い候補はその場限りで何とでも言える。
自民党の巧みな幻惑術にはまってはならない。
野党はこれまでの政策の総括と対処方針によって漠然とした「政権交代して大丈夫かな」という国民の不安を取り除いて欲しいものだ。